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科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

野菜と大腸がんのリスク

日本の疫学研究に基づく関連性の評価

日本の研究結果から、日本人のがん予防を考える

「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」研究班では、主要なリスク要因について、がん全般、および肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんなどのリスクとの関連を調べた国内の疫学研究を系統的に収集し、個々の研究についての関連の強さの確認と科学的根拠としての信頼性の総合評価を行っています。

関連の強さについては、「強い」「中程度」「弱い」「なし」の4段階で個々の研究を評価し、 科学的根拠としての信頼性については、研究班のメンバーによる総合的な判断によって「確実」「ほぼ確実」「可能性がある」「不十分」の4段階で評価するシステムとしました。その際、動物実験や作用機序に関する評価についても考慮しました。さらに、関連が「確実」あるいは「ほぼ確実」と判定された場合には、メタアナリシスの手法を用いた定量評価を行い、その影響の大きさについての指標を推定することにしました。

 

その研究の一環として、このたび、野菜と大腸がんについての評価の結果を専門誌に報告しました(Jpn J Clin Oncol 2015年45巻973-979頁)。

 

野菜と大腸がんリスクの関係に関する研究の経緯

大腸がんは世界的にも多くみられるがんですが、日本では1960年以降に著しい罹患率増加がみられています。高齢化など年齢構成の変化の影響を取り除いた年齢調整死亡率は、大腸がんは男性で第3位、女性では第2位に位置します(2014年)。大腸がんの発生には、食事や栄養が重要な役割を果たすと考えられており、その中でも大腸がんの発生に予防的作用を持つと考えられている食物繊維や葉酸、抗酸化ビタミンを多く含む野菜に注目が集まっています。1997年の世界がん研究基金と米国がん研究機構(WCRF/AICR)による報告書では、主に症例対照研究に基づいて野菜摂取が大腸がんリスクを低下させるのは「確実」とされていましたが、2007年の報告書では、1997年以降のコホート研究の結果も加わり、リスクを低下させる「可能性がある」に評価が修正されました。その後発表された5つのコホート研究を含むメタアナリシスでは、野菜摂取は大腸がんリスクを低下させることが示されましたが、この関連は欧米からの研究結果に限り観察されました。アジアからの研究結果が少ないことに加え、一般的に摂取される野菜の種類はアジア各国でも異なるため、その関連については一致した結論が得られていません。

今回の研究では、2014年12月までに報告された日本人を対象にした野菜と大腸がんに関する疫学研究結果を系統的に収集しました。研究対象となった6つのコホート研究(表1)と11の症例対照研究(表2)の結果をまとめ、評価しました。

 

コホート研究では、野菜の摂取と大腸がんとの間に関連を認めていないものがほとんどでしたが、症例対照研究では、いくつかの研究で弱から強程度の関連がみられました。そこで、各研究を総合して摂取量最低群に対する最多群の相対リスクを推計するメタアナリシスを行ったところ、コホート研究では有意なリスクの上昇または低下はみられませんでしたが、症例対照研究では、野菜摂取による大腸がんリスクがOR=0.75、95%信頼区間0.59−0.96となり、有意なリスク低下がみられました。ただし、症例対照研究の結果は思い出しバイアスや選択バイアスの影響を受けるなどの理由により、注意深く解釈する必要があります。

この結果は、欧米で行われた研究をまとめた最近の系統的レビューやメタアナリシスにおける、野菜による大腸がんリスク低下の報告とは一致しませんでした。しかしながら、中国で行われた最新の大規模コホート研究では有意な関連はみられず、今回の結果とも一致します。その理由のひとつに、日本を含むアジア諸国での平均的な野菜の摂取量が欧米よりも多いため、より多く食べているグループの予防効果がみられないのではないかということが考えられます。その他にも、食物繊維や葉酸、抗酸化ビタミンを多く含む野菜の摂取量の違いや、調理方法、加工方法の違いなどが考えられます。

結論 今回のレビュー結果および生物学的機序を総合的に検討した上で、日本人において野菜と大腸がんの関連を決定づける科学的根拠は不十分という結論になりました。

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