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科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

コーヒー飲用と大腸がんリスク

日本の疫学研究に基づく関連性の評価

日本の研究結果から、日本人のがん予防を考える

「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」研究班では、主要なリスク要因について、がん全般、および肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんなどのリスクとの関連を調べた国内の疫学研究を系統的に収集し、個々の研究についての関連の強さの確認と科学的根拠としての信頼性の総合評価を行っています。

関連の強さについては、「強い」「中程度」「弱い」「なし」の4段階で個々の研究を評価し、 科学的根拠としての信頼性については、研究班のメンバーによる総合的な判断によって「確実」「ほぼ確実」「可能性がある」「不十分」の4段階で評価するシステムとしました。その際、動物実験や作用機序に関する評価についても考慮しました。さらに、関連が「確実」あるいは「ほぼ確実」と判定された場合には、メタアナリシスの手法を用いた定量評価を行い、その影響の大きさについての指標を推定することにしました。  

 

その研究の一環として、このたび、コーヒー飲用と大腸がんについての評価の結果を専門誌に報告しました(Jpn J Clin Oncol 電子先行出版)。

 

コーヒーと大腸がんリスクの関連に関する研究の経緯

大腸がんは世界的にも多くみられるがんですが、日本では1960年以降に著しい罹患率増加がみられています。高齢化など年齢構成の変化の影響を取り除いた年齢調整死亡率は、大腸がんは男性で第3位、女性では第2位に位置します(2014年)。大腸がんのリスクを上げる要因としては肥満や飲酒などが、下げる要因としては運動に分類されており、食事要因では食物繊維とカルシウムがリスクを下げるとされています。近年、コーヒー飲用ががんに予防的に関連することが多くの前向き研究で示され、コーヒーのがん予防効果が注目されています。コーヒーが大腸がんのリスクを下げるメカニズムとしては炎症、インスリン抵抗性、インスリン分泌過多といった大腸発がんに関連した病態への予防的な作用が考えられています。しかしながらコーヒー飲用と大腸がんの研究を総括したメタアナリシスの結果は一致していません。過去のメタアナリシスの対象となった研究は主に欧米で行われていますが、日本人は欧米人ほど肥満しておらず、上記の想定されているメカニズムへのコーヒーの影響や、ひいては大腸がんとの関連は欧米人とは異なるかかもしれません。

今回の研究では、2015年8月までに報告された日本人を対象にしたコーヒー飲用と大腸がんに関する疫学研究結果を系統的に収集し、各研究を総合してメタアナリシスを行いました。まず初めに、研究対象となった5つのコホート研究(表1)と9の症例対照研究(表2)の結果をまとめ、評価しました。

 

 

 

 

コーヒー飲用と大腸がんに強い予防的な関連を認めたのはコホート研究では1件、症例対照研究では3件ありました。一方、1件のコホート研究では統計学的に有意なリスク上昇を認めるなど、特にコホート研究では報告によって結果がばらついてました。

そこで、各研究を総合して摂取量最低群に対する最多群の相対リスクを推計するメタアナリシスを行いました(図1, 図2)。  

 

図 1. コーヒー飲用(摂取量最低群vs摂取量最多群)と大腸がんリスクに関するコホート研究

 

図 2. コーヒー飲用(摂取量最低群vs摂取量最多群)と大腸がんリスクに関する症例対照研究

 

その結果、コホート研究では有意なリスクの上昇または低下はみられませんでしたが (図1)、症例対照研究ではコーヒーの頻回摂取による大腸がんリスクはOR=0.78、95%信頼区間0.65−0.95と、有意なリスク低下がみられました(図2)。ただし、症例対照研究の結果は思い出しバイアスや選択バイアスの影響を受けるなどの理由により、注意深く解釈する必要があります。

この結果は、主に欧米で行われた研究をまとめた最近の系統的レビューやメタアナリシスの報告と一致しており、信頼性の高いコホート研究を対象としたメタアナリシスの多くは有意なリスクの低下は認めていません。

 

結論

今回のレビュー結果および生物学的機序を総合的に検討した上で、日本人においてコーヒー飲用と大腸がんの関連を決定づける科学的根拠は不十分という結論になりました。

 

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