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科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

喫煙と膀胱がんリスク

日本の疫学研究に基づく関連性の評価

日本の研究結果から、日本人のがん予防を考える

「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」研究班では、主要なリスク要因について、がん全般、および肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんなどのリスクとの関連を調べた国内の疫学研究を系統的に収集し、個々の研究についての関連の強さの確認と科学的根拠としての信頼性の総合評価を行っています。

関連の強さについては、「強い」「中程度」「弱い」「なし」の4段階で個々の研究を評価し、 科学的根拠としての信頼性については、研究班のメンバーによる総合的な判断によって「確実」「ほぼ確実」「可能性がある」「不十分」の4段階で評価するシステムとしました。その際、動物実験や作用機序に関する評価についても考慮しました。さらに、関連が「確実」あるいは「ほぼ確実」と判定された場合には、メタアナリシスの手法を用いた定量評価を行い、その影響の大きさについての指標を推定することにしました。

その研究の一環として、このたび、喫煙と膀胱がんについての評価の結果を専門誌に報告しました(Jpn J Clin Oncol 2016年46巻273-83頁)。 

 

 

喫煙と膀胱がんリスクの関連に関する研究の経緯

膀胱がんは男性に多い悪性疾患で、男性の罹患率は女性の罹患率の約3.5倍です。日本では、罹患数・死亡数ともに増加傾向ですが、年齢調整罹患・死亡率は近年横ばいです。欧米の研究を中心としたメタアナリシスでは、喫煙が膀胱がんの危険因子であることが示されていますが、日本人を対象としたメタアナリシスは行われていません。欧米に比べると、日本人の膀胱がん罹患率は1/3-1/4程度であり、欧米人と日本人では、喫煙が膀胱がんに与える影響も異なる可能性があります。 

 

 

喫煙によって膀胱がんのリスクが確実に高くなる 

今回の研究では、2015年1月までに報告された、日本人を対象にした喫煙と膀胱がんに関する疫学研究結果を系統的に収集し、各研究を総合してメタアナリシスを行いました。まず初めに、研究対象となった3件のコホート研究(表1)と8件の症例対照研究(表2)の結果をまとめ、評価しました。すべてのコホート研究、症例対照研究で、一貫して統計学的に有意なリスク上昇があり、いずれの研究も喫煙と膀胱がんの中程度〜強い関係を示していました。

  1. Hirayama T. Life-style and mortality. A large-scale census-based cohort study in Japan. Basel, Switzerland: Karger 1990.
  2. Sakauchi F, Mori M, Washio M, et al. Dietary habits and risk of urothelial cancer incidence in the JACC Study. J Epidemiol 2005;15(Supplement_II): S190–S5.
  3. Kurahashi N, Inoue M, Iwasaki M, Sasazuki S, Tsugane S. Coffee, green tea, and caffeine consumption and subsequent risk of bladder cancer in relation to smoking status: a prospective study in Japan. Cancer Sci 2009;100:284–91.

 

  1. Ohno Y, Aoki K, Obata K, Morrison AS. Case-control study of urinary bladder cancer in metropolitan Nagoya. Natl Cancer Inst Monogr 1985;69:229–34.
  2. Nishio Y, Miyakawa M, Yoshida O. Occupation and tobacco as risk factors in urinary bladder cancer. Hinyokika Kiyo 1989;35:2041–8 (in Japanese).
  3. Tachiki H, Maruta H, Sano M. Epidemiological study on occurrence of bladder tumor in Muroran area. Shiritsu Muroran Sogobyoin Ishi 1991;16:60–5 (in Japanese).
  4. Nakata S, Sato J, Ohtake N, Imai K, Yamanaka H. Epidemiological study of risk factors for bladder cancer. Hinyokika Kiyo 1995;41:969–77 (in Japanese).
  5. Murata M, Takayama K, Choi B, Pak A. A nested case-control study on alcohol drinking, tobacco smoking, and cancer. Cancer Detect Prev 1996;20:557–65.
  6. Wada S, Yoshimura R, Masuda C, et al. Are tobacco use and urine pH indicated as risk factors for bladder carcinoma? Int J Urol 2001;8:106–9.
  7. Wakai K, Hirose K, Takezaki T, et al. Foods and beverages in relation to urothelial cancer: case–control study in Japan. Int J Urol 2004;11:11–9.
  8. Nobata S, Kiuchi S, Watanabe M. Association between urological cancers and cigarette smoking in those who get a complete medical checkup. Nippon Jinhinyokisikkan Yoboigaku Kenkyukaishi 2013;21:73–5 (in Japanese).

 

各研究を総合して、喫煙の膀胱がんに対する相対リスクを推計するメタアナリシスを行ったところ(図1)、統合相対リスクは2.14、95%信頼区間1.87-2.44と、有意な膀胱がんリスク上昇を認めました。相対リスクは、欧米人のものよりもやや小さいものでしたが、喫煙と膀胱がんの強い関係を示しているという点で一致していました。

図1:喫煙と膀胱がんに関する研究のメタアナリシス

生物学的機序については、たばこ煙に含まれる発がん物質またはその代謝物が腎と尿を通して体外に排泄される過程で、膀胱の上皮細胞に遺伝子変異を引き起こすことが示されています。

 

結論

今回のレビュー結果および生物学的機序を総合的に検討した上で、日本人において喫煙による膀胱がんリスク上昇についての科学的根拠は確実であるという結論になりました。 

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