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科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

日本人における禁煙年数とがん罹患リスク

日本のコホート研究のプール解析

日本人における禁煙年数とがん罹患リスク

禁煙は、喫煙に関連した疾病リスクを下げるために重要な役割を果たすことが、現在まで多くの研究で報告されてきました。長年禁煙を続けた人は、生涯非喫煙者(人生で一度もたばこを吸ったことがない人)と全死亡や循環器疾患死亡リスクの差がほとんどないことも知られています。がんについても、禁煙は肺がんや膵がん、頭頚部がん、胃がん、大腸がん、子宮頸がんや膀胱がん罹患リスク漸減と関連していることが欧米では報告されています。一方アジアでは現在までコホート研究による禁煙の影響を示した研究は少なく、禁煙年数の違いによるがんリスクの変化は検証できていません。

禁煙年数の違いによるがん罹患リスクの変化を決定する1つのアプローチは、より大規模なコホート研究で検出力を高め、喫煙関連がんを評価指標としてその関連を調べることです。そこで、今回、日本の8つのコホート研究から約32万人のデータをあわせたプール解析により、禁煙年数と全部位のがんをあわせたがん全体(全がん)、喫煙に関連したがんを併せた喫煙関連がん全体(頭頚部、食道、胃、膵、肺、子宮頸部、腎盂・尿管・膀胱、肝をあわせたもの)および喫煙に関連した個別の主要部位がん(食道、胃、膵、肺、腎盂・尿管・膀胱、肝)罹患との関連を検討し、その結果を国際専門誌にて発表しました(Cancer Epidemiology 2017年 51 巻98–108ページ)。

このプール解析に参加したのは、JPHC-IとJPHC-IIから成る多目的コホート研究、JACCスタディ、宮城県コホート研究、大崎国保コホート研究、三府県コホート宮城研究、三府県コホート愛知研究、高山スタディの計8コホート研究です。まず、それぞれのコホートにおいて、調査開始時の喫煙習慣についてのアンケート調査の結果を用いて、ベースライン時喫煙状況(吸ったことがない、吸っていたがやめた、現在吸っている)に基づき、やめた人の場合はベースライン時の禁煙年数を算出し、生涯非喫煙者、現在喫煙者、過去喫煙者を含め、男性は7グループ、女性は4グループに区切りました。また、喫煙量については、パックイヤー(PY; 一日のたばこの箱数×年数)を算出し、男性についてパックイヤーが1-19PYの場合と20PY以上とで層別化して解析しました。喫煙関連がんは、本研究班のエビデンス評価において、がんとの関連が「確実である」と判定された部位を用いました。

 

禁煙年数が長いほどがん罹患リスクは生涯非喫煙者に近づく

平均13年間の追跡調査中に、36,085人(321,501人中)が何らかのがんになりました。男性では、禁煙年数が21年以上のグループで、その後の全がんおよび喫煙関連がんの罹患リスクが生涯非喫煙者と同じレベルになることが分かりました(図1)。一方、部位別がん罹患リスクでは、過去喫煙者が生涯非喫煙者と同レベルのがん罹患リスクになるまでかかる禁煙年数は異なることが分かりました(膵がん:0-5年、食道がん、腎盂・尿管・膀胱がん:6-10年、肺がん:11-15年、胃がん:21年以上)。喫煙パックイヤー別に解析したところ、19PY以内の過去喫煙者は、禁煙年数が16年以上だった場合、その後の喫煙関連がん罹患リスクが生涯非喫煙者と同レベルになりました。

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女性では、禁煙年数が11年以上のグループで、その後の全がんおよび喫煙関連がん罹患リスクが生涯非喫煙者と同レベルになることが分かりました(図2)。男性と同様、部位別がん罹患リスクでは、過去喫煙者が生涯非喫煙者と同レベルのがん罹患リスクになるまでに必要な禁煙年数は異なることが分かりました(胃がん:0-11年、肺がん:11年以上)。  

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この研究について

今回の研究では、国内のコホート研究を統合することによって、アジアで最も大規模な、約32万人を対象とした解析ができました。今回の研究結果から、がん罹患リスクは禁煙開始後より低下の兆しを見せ、禁煙年数が長ければ長いほどがん罹患リスクはたばこを吸ったことがない人と同じレベルに近づくことが分かりました。また、禁煙の影響は生涯喫煙量が少ない人ほど早く現れやすいことも判明しました。がんリスクが生涯非喫煙者と同レベルになるために必要な年数が、がんの部位によって異なることは、国際がん研究機関の報告と一致しています。また、女性は男性よりも喫煙関連がんリスクにおける禁煙の効果が約10年程度早く現れることが分かりました。これは、本研究対象の女性のうち82%が軽度喫煙者であったためと考えられます。本研究結果から、日本人におけるがん予防のための禁煙介入を支持する科学的根拠が得られたといえます。

 

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