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科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

肥満指数(BMI)と膵がんリスク

日本のコホート研究のプール解析

肥満指数(BMI)と膵がんリスク

 

 膵がんは日本のがんによる死亡の第4位を占めており、年間3万人以上が亡くなる予後不良な疾患です。膵がんは初期には無症状のことが多く、早期発見の方法が確立されていないため、多くの場合進行した状態で診断されます。したがって、膵がんの発症リスクを知ることは、膵がんの予防につながる可能性があり重要です。
 国際的な評価では、肥満は膵がんの確実なリスク要因であり、若い頃(20歳の頃)の肥満もほぼ確実なリスク要因であるとされています。ただ、これらの評価は主に欧米人を対象とした研究に基づいたもので、肥満の人が比較的少なく、食生活や生活習慣、遺伝的背景が異なるアジア人にも当てはまるかは、アジア人の集団を対象とした大規模な研究は少ないため、明らかでないのが現状でした。
 そこで、今回、日本の9つの大規模コホート研究から34万人以上を統合したプール解析を行い、日本人における肥満指数(BMI)と膵がんとの関連を検討し、その研究成果を専門誌において発表しました(J Epidemiol. 2017年web先行公開)。

 このプール解析に参加したのは、JPHC-IとJPHC-IIからなる多目的コホート研究、JACC研究、宮城県コホート研究、大崎国民健康保険コホート研究、3府県宮城コホート研究、3府県愛知コホート研究、高山コホート研究、3府県大阪コホート研究の9研究です。ベースライン(調査開始時)BMI、20歳時BMI、BMI変化量(ベースラインBMIから20歳時BMIを引いたもの)について膵がんとの関連を男女それぞれで評価しました。
 膵がんリスクに影響を与えうるBMI以外の要因(年齢、地域、喫煙、飲酒、糖尿病の既往)について、それらの偏りが結果に影響を与えないように、統計的な調整を行いました。

 

肥満による膵がんリスクの上昇が確認された

 平均で約13年の追跡期間中に1,593人(男性:885人、女性:708人)が膵がんと診断されました。ベースラインBMIでは、男性において肥満(≥30 kg/m2)は高リスク(ハザード比=1.71、95%信頼区間1.03-2.86)であり、BMI<21 kg/m2でもリスクが高い傾向にあることが示されました(図1)。女性では、統計学的に有意ではないもののBMIが高くなるにつれてがんリスクも高くなるような関連がみられ、BMIが1 kg/m2高くなるごとにリスクが1.02(95%信頼区間1.00-1.05)上昇しました(図1)。20歳時BMIでは、男性においてBMI≥27 kg/m2でリスクが高い傾向が示されましたが、女性では明らかな関連は認められませんでした(図2)。BMI変化量では、男性において5 kg/m2以上で低リスク(ハザード比=0.55、95%信頼区間0.32-0.96)であることが示されましたが、女性では明らかな関連は認められませんでした(図3)。

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この研究について

 本研究は、アジア人を対象とした研究ではじめて欧米人を対象とした研究と同様に「肥満は高リスク」であることを示しました。更に、20歳時BMIの男性における結果は、20歳までの体重の適切な管理が膵がんの予防にとって重要である可能性を示しています。
 女性においてBMIと膵がんとのはっきりした関連がみられなかった原因として、BMI高値の女性が少ないことや、 膵がんのリスクが最も低いBMI区分を基準区分として定義しなかったことなどが考えられました。各BMI区分に有意な関連はみられませんでしたが、ベースラインBMIでBMIが高くなるにつれてがんリスクも高くなるような傾向がみられたことから、女性においても男性と同様に膵がんの予防に体重管理が重要であると考えられます。
 BMI変化量と膵がんとの関連は、これまでの研究でも一貫した結果が得られていません。本研究では、20歳時にやせ型でその後の体重増加によりベースライン時には体重が適正に近づいた男性が一定数以上存在しており、このことがBMI変化量5 kg/m2以上が予想に反した低リスクを示した原因である可能性が考えられました。ただし、本研究でBMI変化量5 kg/m2以上の群に含まれる症例数は15と少なく、偶然このような関連性が見られた可能性は否定できず、解釈には注意が必要です。

 今回の研究の結果、日本人男性において肥満は膵がんのリスクであり、膵がんの予防に体重管理は重要であることが示されました。

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