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内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する研究

多目的コホートにおける血液を用いた乳がんのコホート内症例対照研究

背景と目的

これまでの国内外の研究から明らかになった乳がんの危険因子には、初潮年齢が早い、閉経年齢が遅い、初産年齢が遅い、未経産、高身長、肥満などがあります。乳がんの発生には女性ホルモンであるエストロゲンが深く関与していますが、これらの要因は主にエストロゲンなどのホルモンの体内レベルに影響を与えると考えられています。また、内分泌かく乱作用が疑われている有機塩素系化合物などの化学物質は、エストロゲン受容体に結合してエストロゲンに似た働きをすると言われていることから、乳がんとの関連が危惧されています。そこで、これらの化学物質が乳がんの発症に関連するか否かを疫学的に検討することを目的にのデータを用いて、コホート内症例対照研究を行いました。

対象と方法

対象者は、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部(以上、1990年開始のコホートⅠ)、茨城県水戸、新潟県柏崎、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田市(以上、1993年開始のコホートⅡ)の10保健所管内に在住していた40〜69歳の女性住民67521人です。このうち追跡開始後に判明した不適格者、乳がんまたは卵巣嚢腫の既往がある方を除き、ベースライン調査の質問票に回答しかつ血液検体の提供のあった対象者は 24226人でした。この対象者のうち、ベースライン調査後から2002年12月31日末までの追跡期間中に病理組織学的に診断された初発の乳がん患者さん144人を症例としました。また対照は、症例の乳がん発症日(診断日)の時点で乳がんに罹っていない方から、症例と年齢が±3歳以内、管轄保健所が一致、市部または郡部在住が一致、採血年月日が±90日以内、採血時間が±3時間以内、空腹時間が±3時間以内、閉経状況が一致という条件に合う対象者からさらに無作為に2名を選び対照としました。

多目的コホート研究のベースライン調査(コホートⅠは1990年、コホートⅡは1993-4年に実施)では、既往歴、喫煙、飲酒、食生活、生理や生殖に関する項目などについて自記式の質問票調査を行い、研究用に10mLの血液の提供をお願いしました。

凍結保存してある血液検体(1mL)を用いて、血清成分の測定を行っています。

発表論文

  1. イソフラボンと乳がん
  2. 有機塩素系化合物と乳がん
no 記事 外部リンク
2 Iwasaki M, Inoue M, Sasazuki S, Kurahashi N, Itoh H, Usuda M, Tsugane S, the JPHC Study Group. Plasma organochlorine levels and subsequent risk of breast cancer among Japanese women: a nested case-control study. Sci Total Environ. 2008; 402(2-3): 176-183.
1 Iwasaki M, Inoue M, Otani T, Sasazuki S, Kurahashi N, Miura T, Yamamoto S, Tsugane S. Plasma isoflavone level and subsequent risk of breast cancer among Japanese women: a nested case-control study from the Japan Public Health Center-based prospective study group. J Clin Oncol. 2008; 26(10): 1677-1683.
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