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平鹿胃がん予防研究

本研究の成果

1.食事指導による食事の変化

前期指導群を指導群、後期指導群を観察群として、研究1年目と2年目の調査の結果を用いて食事指導の効果を検証しました。1年目と2年目の変化を、指導群と観察群とで群間で比較しました。その結果、食事指導の対象とした食塩、ビタミンC、カロテンのすべてにおいて、食事調査の結果から有意な改善が認められました。また食塩と -カロテンにおいては尿中排泄量および血中濃度の結果からも有意な改善が認められました。

スライド3:ナトリウム摂取量および排泄量
スライド4:ビタミンC
スライド5:カロテン 

また、食品摂取量の結果について検討してみると、指導群において、漬物、魚の塩蔵品、みその摂取量は減り、緑黄色野菜、果物の摂取量は増え、これらの変化は群間で有意な差が認められました。このことから、この研究で実施した食事指導方法の有効性が確かめられました。【発表論文3】

2.食事指導による食事の変化が血圧値に与える影響

食事指導が血圧への影響について検討しました。その結果、収縮期血圧の変化は、指導群で2.7mmHg低下したのに対して、観察群では0.5mmHg上昇し、変化量の群間差は統計学的に有意でした。

スライド6:収縮期血圧の変化

さらに、正常血圧者と高血圧者を分けて検討したところ、指導群では5.6mmHg低下したのに対して、観察群では1.4mmHg上昇し、この差も統計学的に有意でした。このことから、この研究で実施した食事指導は血圧降下に有効であることが確認されました。【発表論文4】

スライド7:高血圧者の収縮期血圧の変化

3.指導終了後の食事指導の効果の持続についての検討

食事指導の効果がどの程度持続しているか検討することを目的として、追跡調査の結果について検討しました。

栄養素摂取量の変化について

食塩、ビタミンC、カロテンのすべての栄養素について、指導終了直後の摂取量と比較すると有意な差は認められず、また指導前の摂取量との比較では有意な差が認められました。

スライド9:ナトリウム摂取量の変化

つまり、指導を終了から4年経過しても、食事指導の効果が十分に残っていることが認められました。本研究で開発した食事介入手法は、短期的だけでなく、長期的にも食事改善に効果があることが認められました。

食品摂取量の変化について

みそについては摂取量の低下を維持していましたが、漬物と魚の塩蔵品については再び増えていました。漬物や魚の塩蔵品は、対象地域においては一般的な伝統食であり、長年の食習慣でもあるため、指導直後は一時的に摂取量を減らすことができても、それを長期的に維持することが難しかったと考えられました。野菜ジュースと果物は、指導終了直後は増加したが、その後減り、元に戻ってしまいました。

スライド10:果物摂取量の変化

一方、緑の葉野菜(ほうれん草、小松菜など)は、指導終了後もさらに増えました。

スライド11:緑の葉野菜摂取量の変化

野菜ジュースは、元々、対象者は飲む習慣がなく、摂取量も低い食品でした。一方、緑の葉野菜は、年間を通していろいろな種類のものが出回っており、調理法もさまざまなものがあります。元々よく食べられている食品であり、新しい調理の技術、味の慣れなども必要なかったので、長期的にも受け入れられやすい食品であったことが、この結果につながったと考えられました。

また、食事介入の生体影響を検出するための指標を開発する目的で、以下の研究を実施しました。

日本人の有機塩素系化合物摂取レベルおよび、食事要因と有機塩素レベルとの関係を推定するために、本研究の対象者から41人を抽出して、食事摂取と血清中のβ-HCH、HCB、p,p'-DDD、p-chlorophenyl、p,p'-DDEと p,p'-DDTの関連を検討しました。β-HCHは、米・牛乳の摂取量と、HCBについては魚摂取量と、総DDTは肉・魚・野菜摂取量との正の関連が示唆されました。【発表論文1】

本研究に参加した閉経後女性について、脂質過酸化物由来のDNA損傷の指標である1,N6-ethenodeoxyadenosine( dA)尿中排泄量を測定しました。尿中 dA排泄量は、食塩によって引き起こされる炎症や、脂質過酸化によるDNA損傷の指標となりうる可能性があることが示唆されました。【発表論文2】

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