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多目的コホート研究(JPHC Study)

保存血液を用いる研究計画(2015年12月)

保存血液を用いる研究計画のご案内

多目的コホート研究では、約14万人の方に研究にご協力いただいています。そのうち、約6万人の方から、研究のために血液をご提供いただき、国立がん研究センターで冷凍保存管理しております。 保存血液を用いた研究の実施にあたっては、まず研究計画書を国立がん研究センターの倫理審査委員会に提出し、人を対象とした医学の研究における倫理的配慮等について厳密な審査を受けます。 国立がん研究センターにおける研究倫理審査については、公式ホームページをご参照ください。倫理審査委員会の承認を受け、実施されている研究計画は、以下の通りです。研究のテーマをクリックすると、研究計画の概要がご覧になれます。いずれも、検査結果を誰のものかわからないように匿名化して、各グループごとの検査データの傾向を比較する研究です。ひとりひとりの検査結果を取り扱うことはありませんが、ご自分の試料が研究の対象になると思われるが、以下のいずれかの研究には使用して欲しくないとお考えになる方は、その旨をJPHC 研究事務局までお伝えくださいますよう、お願いいたします。 なお、研究への使用の拒否の意思を表明されても、診療の機会などで、いかなる意味においても不利益をこうむることはありません。また、「コホート内症例対照研究」という研究計画の性格上、ご提供いただいた試料が必ずしも該当研究に用いられているとは限りません。

 

No 研究のテーマ 承認年月
1 胃がんのコホート内症例・対照研究 H14年11月
2 乳がんのコホート内症例・対照研究 H15年 5月
3 大腸がんのコホート内症例・対照研究 H16年 1月
4 脳卒中・心筋梗塞のコホート内症例・対照研究 H16年 1月
5 主要ウイルス・細菌感染とその後のがんの発生に関連する生活習慣要因に関する疫学研究 H16年11月
6 前立腺がんのコホート内症例・対照研究 H18年 1月
7 脳卒中、心筋梗塞のコホート内症例・対照研究 H18年 9月
8 肺がんのコホート内症例・対照研究 H20年 4月
9 がんのコホート内症例・対照研究 H24年12月
10 脳腫瘍のコホート内症例・対照研究 H27年12月



1.「多目的コホートにおける血液を用いた胃がんのコホート内症例・対照研究」

胃がんの発症には多くの要因が関与しているが、中でも従来重要視されている食物要因および近年注目されているHelicobacter pylori (H. pylori) 菌感染は主たる要因である。しかしながら、食物要因およびH. pylori菌感染と胃がんの関連についてもいまだ不明な点が多く、検討の必要性が高い。ところが、食物要因およびH. pylori菌感染と胃がんの関連について血液データを用いて検討した研究は少なく、後ろ向き研究や横断研究の域にとどまっているものが多いのが現状である。 そこで、多目的コホート研究の一環として、すでに採取・保存されている血液試料を匿名化した上で用いて、その後に発症した胃がんと種々の検査項目との関連をコホート内症例・対照研究の手法により検討する。 血液検査項目としては、1)H. pylori菌、炎症関連:H. pylori, CagA, PGI, PGII 、2)抗酸化物質:ビタミンE, カロテノイド、ポリフェノール類、3)その他:IGFs などを予定している。

2.「多目的コホートにおける血液を用いた乳がんのコホート内症例・対照研究」

乳がんのリスク要因として、早期の初潮、閉経の遅延、高齢出産、未経産、高身長、肥満など、エストロゲンなどのホルモンの体内レベルに影響を与える要因が知られている。しかし血中エストロゲンレベルを直接測定した前向き研究は少なく、日本人を対象とした研究はわずか1つである。一方、乳がんの抑制要因として野菜・果物の摂取が多いことが示唆されているが、栄養素として何が関連しているかは不明である。また大豆製品中に多く含まれる植物エストロゲンの乳がん発症抑制作用についても結論は出ていない。これまでに食物要因と乳がんの関連について摂取量ではなく血中レベルで検討した前向き研究は皆無に等しいのが現状である。エストロゲンレセプターに結合して内分泌系への影響を及ぼすことが危惧されている、いわゆる内分泌かく乱化学物質の暴露と乳がん発症との関連を検討した疫学研究についても、これまでにわが国では報告がない。 >そこで多目的コホート研究の一環として、すでに採取・保存されている血液試料を匿名化した上で用いて、その後に発症した乳がんと種々の検査項目との関連をコホート内症例・対照研究の手法により検討する。 血液検査項目としては、1)内因性ホルモン関連:estradiol、sex hormone-binding globulinなど、2)外因性ホルモン類似物質関連:イソフラボノイド、ビスフェノールA、フタル酸エステル類など、3)抗酸化物質:ポリフェノール類、カロテノイド、ビタミンCなどを予定している。

 3.「多目的コホートにおける血液を用いた大腸がんのコホート内症例・対照研究」

大腸がんの発症には多くの要因の関与が示唆されているが、食物要因は主たる要因のひとつとされている。疫学研究において、質問票から推定された栄養素摂取量と大腸がん罹患の関連は数多く研究されているが、血中の栄養素と罹患との関連を検討した研究は限られている。また、アスピリンやNSAIDs内服者でのリスク低下が一貫して確認されることから、炎症が重要な役割を果たしていることが示唆されている。しかしながら、炎症を示すマーカーと大腸がんとの関連は実験室レベルまたは進展や予後に関する臨床研究にとどまっている。 そこで多目的コホート研究の一環として、平成2年(コホートI)および平成5年(コホートII)より追跡中のデータと生活習慣質問票データおよび研究開始時に採取・保存された血液試料を匿名化した上で用いて、その後に発症した大腸がんと種々の検査項目との関連をコホート内症例・対照研究の手法により検討する。 血液検査項目としては、1)栄養素関連:葉酸関連、脂肪酸関連、抗酸化物質など、2)炎症関連:高感度CRPなど、を予定している。

 4.「多目的コホートにおける血液を用いた脳卒中・心筋梗塞のコホート内症例・対照研究」

動脈硬化の進展に感染、抗酸化物質が関与することは実験、病理学的研究で示されているが、日本人においてこれらの要因が循環器疾患(脳卒中、心筋梗塞)の発症にいかに関与するかは明らかにされていない。また、感染と抗酸化物質の循環器疾患の発症に関する相互作用については国外を問わず、検討されていない。 そこで多目的コホート研究の一環として、平成2年(コホートⅠ)および平成5年(コホートⅡ)より追跡中のデータと生活習慣質問票データおよび研究開始時に採取・保存された血液試料を匿名化した上で用いて、その後に発症した脳卒中、心筋梗塞と種々の検査項目との関連をコホート内症例・対照研究の手法により検討する。 血液検査項目としては、1)hs-CRP、ホモシステイン2)肺炎クラミジア・ヘリコバクターピロリの感染抗体、3)血清中のビタミンE、ポリフェノールなど、4)LDL-コレステロールなどの血清脂質を予定している。

 5.「多目的コホートに基づく主要ウイルス・細菌感染と その後のがんの発生に関連する生活習慣要因に関する疫学研究」

日本で、特に重要と考えられているがん関連ウイルス・細菌としてC型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-I)、ヘリコバクター・ピロリ菌(H. pylori)等が知られている。これらのウイルス・細菌感染者では、肝がんをはじめ、成人T細胞白血病や子宮頸がん、胃がんになるリスクが高いことが知られている。がん全体の発生の3割近くをこれらのウイルス・細菌関連がんが占めている。 近年、これらのウイルス・細菌感染に対する予防対策が進んできたが、一度これらのウイルス・細菌感染者となってしまった場合、どのような生活習慣がその後のがんの発症を促進あるいは防御するかについては、いまだ、解明が進んでいない。また、この研究を遂行するためには、ウイルス・細菌感染の有無に分けた分析が必要となるが、本研究における既存情報のみでは、ウイルス・細菌感染の有無が把握できず、現状では、このような検討が不可能である。 そこで、既に採取・保存されている血液を用いた測定及び協力医療機関からの対象者に関するウイルス・細菌感染情報を用いて、多目的コホート研究地域におけるHCV、HBV、HTLV-I、H. pylori等、わが国における主要がん関連ウイルス・細菌の感染率の実態を把握するとともに、各ウイルス・細菌感染と食事や生活習慣との関連、及びウイルス・細菌感染者における食事や生活習慣等のがん発生促進・防御要因を解明し、これらのウイルス・細菌関連がんの発症予防対策に資する。

 6.「多目的コホートにおける血液を用いた前立腺がんのコホート内症例・対照研究」

前立腺組織はアンドロゲン依存性に発達するので、前立腺がんの発生には内分泌系の要因の関与が大きいことが示唆されている。また、細胞分裂に関与するInsulin-like growth factors-I (IGF-I)などの成長因子の血中濃度と前立腺がんとの関連も指摘されている。しかし、日本人を対象として血中レベルを直接測定した前向き研究はない。一方、前立腺がんの抑制要因として、日本人で摂取の多いIsoflavoneなどの植物エストロゲン、特にその中のequolの予防効果が報告されているが、equolの摂取量は調査票からは推定できないので、血中レベルでの検討が必要である。また、βカロテン、ビタミンD、ビタミンE、などの栄養素が予防因子として報告されているが、これまでに食物要因と前立腺がんの関連について血中レベルで検討した前向き研究は、わが国ではほとんどない。エストロゲンレセプターに結合して内分泌系への影響を及ぼすことが危惧されている、いわゆる内分泌かく乱化学物質の曝露と前立腺がん発症との関連を検討した疫学研究についても、これまでにわが国では報告がない。 そこで、多目的コホート研究の一環として、既に採取・保存されている血液試料を匿名化した上で用いて、その後に発症した前立腺がんと種々の検査項目との関連をコホート内症例・対照研究の手法により検討することにより、わが国の前立腺がん発症予防のために応用可能な科学的証拠が得られることが期待される。 血液検査項目としては、1)内因性ホルモン関連:testosterone、sex hormone-binding globulin、IGF-Iなど、2)外因性ホルモン類似物質関連:イソフラボノイド、有機塩素化合物など、3)栄養素関連物質:βカロテン、ビタミンD、ビタミンEなどを予定している。

 7.「多目的コホートにおける血液を用いた脳卒中、心筋梗塞のコホート内症例・対照研究」

脳卒中、心筋梗塞の発症には多くの要因が関与しているが、従来重要視されている食物要因および近年注目されている炎症マーカーである高感度C反応蛋白(hs-CRP)、Helicobacter pylori (H. pylori) 菌並びにClamydia Pneumoniae(C. preumoniae) 感染は中でも主たる要因である。しかしながら、食物要因(特に抗酸化物質)および炎症・感染症と脳卒中・心筋梗塞の関連とそれらの相互作用についてはいまだ不明な点が多く、検討の必要性が高い。ところが、食物要因および炎症・菌感染症と脳卒中・心筋梗塞の関連について血液データを用いて検討した研究は少なく、後ろ向き研究や横断研究の域にとどまっているものが多いのが現状である。 そこで、多目的コホート研究の一環として、すでに採取・保存されている血液試料を匿名化した上で用いて、その後に発症した脳卒中・心筋梗塞と種々の検査項目との関連をコホート内症例・対照研究の手法により検討する。 血液検査項目としては、1)炎症・感染症関連: hs-CRP、ホモシステイン、H.pylori抗体、C. Pneumoniae抗体など、2)抗酸化物質:ビタミンE、ポリフェノール、3)その他:LDL-コレステロールなどの血清脂質を予定している。

 8.「多目的コホートにおける肺がんのコホート内症例・対照研究」

肺がんの発生に関与する最大の要因は喫煙であることが知られている。しかし、喫煙者の一部にしか肺がんが発生しない一方、非喫煙者からも肺がんが発生するという事実は、肺がんの発生にその他の要因が関与することを示唆するものである。食物要因はそのひとつであり、野菜・果物についてはとくに肺がん発生に予防的にはたらくことが示唆されている。また、日本人で摂取量が多い大豆、魚についても予防的な食物要因としての期待が高まっている。野菜・果物については、質問票により摂取量を評価し肺がんの発生との関連をみた研究は数多く報告されているが、栄養素として何が関連しているのかは不明である。大豆・魚については、それらに含まれる成分を血中レベルで検討した前向き研究はない。また、魚に含まれるn-3多価不飽和脂肪酸は抗炎症作用を介し、がんに予防的にはたらくことが示唆されているため、炎症をしめすマーカーとの関連をあわせて調べることは有用である。炎症マーカー自体と肺がんの発生との関連をみた研究もあまり行われていない。
そこで、多目的コホート研究において、既に採取・保存されている血液試料を匿名化した上で用いて、その後に発生した肺がんと種々の検査項目との関連をコホート内症例・対照研究の手法により検討する。血液検査項目としては、1)外因性ホルモン類似物質関連:イソフラボノイドなど、2)脂肪酸関連:n-3多価不飽和脂肪酸、3)抗酸化物質関連、4)葉酸代謝関連、5)炎症関連:高感度CRPなどを予定している。

 

9.「多目的コホートにおける膵がんのコホート内症例・対照研究」

膵がんは、予後が非常に悪いことから、早期に発見し早期に治療を行うことが特に重要である。しかし、膵がんの早期診断は、現在の血液検査や腫瘍マーカー、画像診断では非常に難しい。そこで早期発見のためには、血液の中で早い時点で上昇してくる新たなマーカーを見つけることが必要となる。また、現在までのところ膵がんの予防対策は確立されておらず、膵がん発生に関与する要因の解明が必要とされる。
そこで、多目的コホート研究において、既に採取・保存されている血液試料を匿名化した上で用いて、その後に発生した膵がんと種々の検査項目との関連をコホート内症例・対照研究の手法により検討する。血液検査項目としては、栄養素(葉酸、ビタミンB群、脂肪酸、抗酸化物質など)、炎症マーカー、肥満・糖尿病関連マーカー、がん関連ウイルス・細菌感染マーカーおよびタンパク質・ペプチドなどを予定している。

 

10.「多目的コホートにおける血液を用いた脳腫瘍のコホート内症例・対照研究」
(『研究概要の情報公開原稿』の全文はコチラのリンク先PDFにてご覧いただけます)

脳腫瘍は、特に膠芽腫において予後が非常に悪いことから、予防要因をみつけること、早期に発見し早期に治療を行うことが重要である。しかし、脳腫瘍の予防要因はいまだ明らかにされておらず、早期診断は、現在の血液検査や腫瘍マーカー、画像診断では非常に難しい状況にあるため、脳腫瘍発生に関与する要因の解明を行うとともに、早期発見のためには、血液の中で早い時点で上昇してくる新たなマーカーを見つけることが必要とされる。
そこで、多目的コホート研究(JPHC Study)においてベースライン時(コホートIは1990年、コホートIIは1993年)および5年後調査時に採取・保存されている血液を用いて、その後に発症した脳腫瘍と種々の血液検査項目との関連を検討する。
血液検査項目としては、IGF-1やIgE抗体などの血中ホルモンおよびタンパク質、早期診断マーカー候補である各種アミノ酸・マイクロRNA、タンパク質を予定している。

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