トップ >多目的コホート研究 >現在までの成果 >身体指標とメタボリックシンドロームとの関連について
リサーチニュース

JPHCに関するお問い合わせはこちら
 


 

多目的コホート研究のメールマガジン購読申込みはこちら

多目的コホート研究(JPHC Study)

身体指標とメタボリックシンドロームとの関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などとの関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。

今回私たちは、多目的コホート対象地域のうち長野県佐久保健所管内にお住まいであった方のうち平成12年(2000年)に千曲病院で健康診断を受診された方を対象として、身体指標とメタボリックシンドロームとの関連を調べました。その結果を、専門誌で論文発表しましたのでご紹介いたします。
(Asia Pac J Clin Nutr. 2008年17巻223-228ページ)

現在の日本のメタボリックシンドロームの診断基準にはウエスト(腹囲)が必須項目として入っています(男性85cm以上、女性90cm以上)。しかし身長の違う人が同じウエストの基準値でいいのか、と思われたことはないでしょうか? 実際、日本人の場合にはウエストよりもウエスト/身長比のほうが心血管病のリスクとよく関連する、という報告もあります。また海外ではウエスト/ヒップ比のほうがよいとする人たちもいます。

そこで私たちは現在の日本のメタボリックシンドロームの診断基準のうちウエスト以外のもの、すなわち血糖値 110mg/dL以上か糖尿病の治療中、血圧130/85 mmHg 以上か高血圧の治療中、中性脂肪150 mg/dL 以上またはHDL コレステロール40 mg/dL 未満、のうち2つ以上を満たす場合を「リスク重積」と定義し、各種身体指標(ウエスト、ウエスト/身長比、ウエスト/ヒップ比、BMI)と「リスク重積」との関連を調べました。

多目的コホート対象地域のうち長野県佐久保健所管内にお住まいであった、平成元年(1989年)に40-59歳で、生活習慣についてのアンケート調査にお答えいただいた方のうち、平成12年(2000年)に千曲病院で健康診断を受診された682人(男性331人、女性343人)から、空腹時受診でなかった方、コレステロールの薬を飲んでいると答えた方を除外した、男性315人、女性314人の合計629人の方を対象としました。

男女ともウエストと「リスク重積」が関連

 
ウエストを5cm刻みにして、各ウエストの範囲で「リスク重積」の人の割合を調べました。その結果ウエストが65cmをこえたところから「リスク重積」の人の割合は増えていくことがわかりました。ウエスト65cm未満の方は多くありませんでしたので、ウエストが増加するほど「リスク重積」の割合はほぼ直線的に増加する、という結果が得られました。また、この値を超えると特に増加する、という値(閾値)はありませんでした。

図

身体指標の中ではウエストが最もよく「リスク重積」と関連

次に各種身体指標(ウエスト、ウエスト/ヒップ比、ウエスト/身長比、BMI)と「リスク重積」との関連を調べました。その結果、この4つの身体指標のなかではウエストが最もよく「リスク重積」と関連することがわかりました。しかしこの4つの身体指標間の違いは統計的に意味のある差ではありませんでした。また現在の日本のメタボリックシンドロームの基準値(男性85cm以上、女性90cm以上)を用いた場合には、男性では「リスク重積」でない人のうち約40%を「リスク重積」としてしまうこと(「空振り」)、女性では「リスク重積」の人のうち約65%を「リスク重積」でないとしてしまうこと(「見逃し」)、がわかりました。

この研究について

今回の研究では、ウエスト、ウエスト/ヒップ比、ウエスト/身長比、BMIの4つの身体指標のなかではウエストが最もよく「リスク重積」と関連することがわかりました。しかし、この4つの身体指標間の違いは統計的に意味のある差ではありませんでした。とはいえ、簡便さを考えるとウエストが最もよい指標といえるでしょう。また現在の日本のメタボリックシンドロームの診断基準のウエスト値を用いた場合には、男女ともかなりの「空振り」や「見逃し」がおこることもわかりました。これは現在の基準値が不適切であるというよりは、身体指標を用いて「リスク重積」を診断することの限界なのかもしれません。実際、4つの身体指標のなかでは最もよかったウエストを用いた場合でも、「空振り」と「見逃し」を同時に30%以下にするような基準値は存在しませんでした。心血管病のハイリスクの人たちを見つけるという意味においては、ウエストを必須項目にすることにはほとんど意味がないといえます。しかし、ウエストを測定すること自体が無意味だというわけではありません。実際ウエストが増加するにつれ「リスク重積」の人の割合は増加しますし、また腹部肥満の簡便な指標として有用なものであることには間違いありません。ウエストにはこれらの限界があることを踏まえた上で、これを上手に活用することが重要だといえます。

 

上に戻る