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多目的コホート研究(JPHC Study)

B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス感染者の膵がんリスク

 

—「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果報告—

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成5年(1993年)に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の6保健所管内にお住まいだった方々のうち、40~69歳の男女約2万人を、平成22年(2010年)まで追跡した調査結果にもとづいて、B型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルス感染者と膵がん発生との関連を調べました。その研究結果を論文発表しましたので紹介します。(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.2016 Mar;25(3):555-7)。

中国、韓国、台湾や米国での先行研究では、B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)感染者の間で膵がん罹患のリスクが上昇することが報告されています。そこで本研究では、HBV及びHCV感染と膵がんリスクとの関連を検討しました。

 

研究方法の概要

多目的コホート研究の開始時(1993年から1994年まで)に生活習慣を調査するアンケートに回答していただき、健康診断時に約3割の方から任意で血液を提供していただきました。これに該当する20,360人を追跡したところ、今回の解析対象とした2010年までに、116人に膵がんが発生しました。

対象者の血液中のウイルス感染マーカーのうち、HBVに感染していることを表すHBs抗原、HBVに感染したこと、またはしている可能性を表すHBc抗体、HCVに感染したこと、またはしている可能性を表すHCV抗体の状況から、これらのウイルス感染マーカー別にみた肝炎ウイルス感染と膵がんとの関連を検討してみました。

 

B型・C型肝炎ウイルス感染と膵がん発生との関連はなし

本研究からは、HBc抗体陽性、HCV抗体陽性の群のいずれでも、陰性群に比べてリスクに有意差はなく、膵がん発生との関連は認められませんでした。また、HBs抗原陽性群からの膵がん発生はありませんでした。この関連については、まだ国内外からの研究も少なく、今後、さらなる研究が必要です。

図1、図2とも、M1 は性、年齢、居住地域を統計的に調整。M2はM1で用いた共変数に加えて、BMI、糖尿病の既往、喫煙の有無を調整。M3は、到達年齢を追跡期間軸として解析した。

 

この研究について

この研究は前向きコホート研究であり、対象者の情報はがんの診断の前に集められました。高い回答率と追跡率がこの研究の強みとして挙げることができます。この研究の問題点としては、膵がんの患者数が少なく(116人)、統計分析の強度にやや疑問が残る点が挙げられます。また、HBVとHCV感染に関連するといわれる輸血や薬物注射などに関する情報は考慮しておりませんので、これらの点にご留意ください。

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