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現在までの成果

喫煙、飲酒と口腔・咽頭がん罹患リスクについて

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2018年現在)管内にお住まいだった方々のうち、がんの既往がなく、アンケート調査に回答していただいた40~69歳の男女約9万6千人を、平成22年(2010年)まで追跡した調査結果に基づいて、喫煙・飲酒と口腔・咽頭がん発生リスクとの関連を調べました。その結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Eur J Cancer Prev 2016年ウェブ先行公開)。

口腔・咽頭がんは口腔がんと咽頭がんの総称です。口腔がんは口腔内の舌、歯肉、口腔底、口蓋、唾液腺等の部位に発生したがんを指します。咽頭がんは咽頭を構成する上咽頭、中咽頭、下咽頭および扁桃等の部位に発生したがんを指します。今回解析した口腔・咽頭がんは上述したすべての部位のがんの合計です。

 国際がん研究機関(IARC)では、喫煙や飲酒は口腔・咽頭がんの確実なリスクであると報告しています。しかしながら、日本人を対象とする喫煙、飲酒と口腔・咽頭がん罹患リスクとの関係を検証した大規模な研究はほとんど行われていません。今回の研究対象に該当した95,525人うち、2010年までの追跡期間中に222人が口腔・咽頭がんに罹患しました。

  

男性では喫煙により口腔・咽頭がんの罹患リスクが2.4倍増加する

男性では、たばこを吸わないグループ(非喫煙者)と比べて、たばこを吸うグループ(現在喫煙者)の口腔・咽頭がんの罹患リスクが2.4倍増加しました。また、吸わないグループと比べて、累積喫煙指数(1日喫煙箱数×喫煙年数)が60以上のグループでは罹患リスクが4.3倍増加しました。部位別では、下咽頭がんへの影響が特に大きく、たばこを吸うグループで約13倍、累積喫煙指数60以上のグループで約21倍罹患リスクが増加しました(図1)(* P<0.05)。

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男性では飲酒により口腔・咽頭がんの罹患リスクが1.8倍増加する

男性ではお酒を飲まないグループ(非飲酒者)に比べ、週に1回以上飲酒するグループ(日常飲酒者)では口腔咽頭がんの罹患リスクは1.8倍増加しました。エタノール摂取量に換算して週に300グラム以上(1日平均4合以上)お酒を飲むグループでは罹患リスクは3.2倍増加しました。部位別では、下咽頭がんへの影響が大きく、週に1回以上の飲酒するグループで3.3倍、週に300グラム以上お酒を飲むグループで10.1倍増加しました(図2)(* P<0.05)。

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男性では飲酒と喫煙の影響が足し合わさり口腔・咽頭がん罹患リスクがさらに増加する

たばこを吸わず、飲酒量の少ない(週に150グラム未満のエタノールを摂取)グループに比べ、たばこを吸う、飲酒量の少ないグループの口腔・咽頭がん罹患リスクは1.8倍増加し、また、たばこを吸わず、飲酒量が多い(週に150グラム以上のエタノールを摂取)グループの口腔・咽頭がん罹患リスクは2.1倍増加しました。たばこを吸う、飲酒量が多いグループの罹患リスクは、飲酒と喫煙の影響が足し合わさり、4.1倍とさらに増加しました。(図3)(* P<0.05)。

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女性でも飲酒と喫煙の影響で口腔・咽頭がん罹患リスクが上昇する

追跡調査期間中に診断された222人の口腔・咽頭がんのうち、女性は62人(27.9%)でした。女性ではたばこを吸わないグループと比べて、たばこを吸うグループで口腔咽頭がん罹患リスクは2.5倍増加する傾向がみられました。また、お酒を飲まないグループとくらべて、週にエタノール150グラム以上を飲酒する女性グループでは口腔・咽頭がん罹患リスクは5.9倍と、統計学的に有意な増加がみられました。

 

喫煙しないこと、飲酒量を控えることが口腔・咽頭がん予防に重要である

今回の研究で、喫煙、飲酒ともに口腔・咽頭がん罹患リスクを増加することが確認されました。特に下咽頭がんで大きくリスクが増加することが分かりました。今回の結果は、これまでの国際的評価を支持する結果であり、日本人における口腔・咽頭がんの予防のためには、喫煙せず、飲酒量を控えることが重要であることが再確認されました。

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