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科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

がん罹患・死亡・有病数の長期予測

がん罹患・死亡・有病数の長期予測

本研究は、2015年時点および将来の日本人におけるがんの原因の寄与度を、最新のエビデンスを用いて高い精度で推計・予測することを目的とする。本研究では、リスク要因に起因するがんの超過罹患数・死亡数・有病数の将来推計を行うため、日本人におけるがん罹患・死亡・有病数の長期予測データが不可欠である。そこで本研究では、最新の入手可能なデータソースを用いて2039年までの将来予測を行った。

資料と方法

がん罹患数

日本人の全国がん罹患数の資料として、1985‐2012年の全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ)によるがん罹患数の全国推計値を用いた。罹患数の将来予測および罹患率の算出に必要な人口は、1985‐2014年は国勢調査人口または推計人口を用い、2015年以降の将来推計人口は、国立社会保障・人口問題研究所が公表している2015-2039年の総人口(出生中位、死亡中位推計)を用いた。また、年齢調整罹患率の算出には、標準人口として昭和60年モデル人口を用いた。

解析には、性・部位・年齢5歳階級別に罹患数および人口を5年毎に合算し、6期間(1985-89, 1990-94, 1995-99, 2000-04, 2005-09, 2010-14)に分けたデータを用いた。将来予測については5期間(2015-19, 2020-24, 2025-29, 2030-34, 2035-39)の予測を行った。なお2010‐2014年の期間については、最新データが2012年であることから、2010‐2012年の罹患数の年平均を5倍したものを罹患数として用いた。

将来予測には、対象部位ごとに性、年齢階級別の罹患数について年齢、時代、世代(出生年)の効果を考慮したポアソン回帰モデル(Age-Period-Cohortモデル)をあてはめ、それぞれの効果の推定値を得た。さらに、得られた各効果の推定値を将来推計部分に外挿し、性・部位・年齢5歳階級別の将来罹患予測を行った。20歳未満の罹患数については、数が少ないため、最新2期間(2005-09, 2010-12)の平均罹患数を将来罹患数とした。将来推計の仮定として、新たにがん発症年齢に入る新規の世代の世代効果は、推計期間に含まれる最新の世代効果と同じとした。本推計は、国際がん研究機関と北欧のがん登録プロジェクト(NORDCAN)が共同で開発した手法を踏襲している(1-4)。なお、解析には統計ソフトRのパッケージ「Nordpred」を用いた。

がん死亡数

日本人の全国がん死亡数の資料として、1985‐2014年の人口動態統計死亡数を用いた。死亡数の将来予測および死亡率の算出に必要な日本人人口は、1985-2014年は国勢調査人口または推計人口を用いた。2015年以降の将来推計日本人人口は公表値が得られなかったため、性、年齢5歳階級別の2005-2014年の総人口に対する日本人人口の比を算出し、これを国立社会保障・人口問題研究所が予測し、公表している2015-2039年の総人口(出生中位、死亡中位推計)に乗じることで推計した。年齢調整死亡率の算出には、標準人口として昭和60年モデル人口を用いた。

解析には、性・部位・年齢5歳階級別に死亡数および総人口を5年毎に合算し、6期間(1985-89, 1990-94, 1995-99, 2000-04, 2005-09, 2010-14)に分けたデータを用いた。将来予測については5期間(2015-19, 2020-24, 2025-29, 2030-34, 2035-39)の予測を行った。将来死亡予測に用いた手法は、がん罹患数予測と同様である。罹患の場合と異なるのは、用いたデータの最新期間が罹患では2010-2012年であるのに対し、死亡では2010-2014年である点である。

がん有病数

本研究では、1)地域がん登録による部位別がん実測生存率データ(2006-2008年診断例)、2)、性・部位・年齢5歳階級別がん罹患数将来予測値(2015-2039年)をデータソースとして用いた。有病数の定義は、一定期間(5年)以内に診断され、生存している推計患者数とした。罹患は年央に生じると仮定し、罹患から1-5年時点での罹患数および生存率より5年有病数を算出した。将来推計予測に用いる罹患数は、2015-2039年の期間を5年5区間に分け、各5年区間の年平均を各年の罹患数として用いた。

生存率は、上記2006-2008年生存率データを用い、カプラン・マイヤー法を使用することで、性・年齢5歳階級別でのがん患者の実測生存率を算出した。生存率は全ての予測期間において2006 -2008年診断例の生存率データと同じであると仮定した。有病数の推計方法は、Pisaniら(2002)による有病数推計モデルを参考とし、データの性質や形、入手可能性に応じて修正したものである(5, 6)。

P(t)は暦年t年の有病数とし、I(t-x)はt年よりx年前の新規罹患数である。S(x+0.5)は、x年前に診断された新規罹患が年央に生じたと仮定した場合の、性・年齢階級別実測生存率である。

結果の概要

表1、2に2015-2039年における全がんの死亡数、罹患数、有病数の結果を示す(表1:男性、表2:女性)。

死亡では、2015-2019年の年平均死亡数は男性22万人、女性は15万人である一方、2035-2039年平均では男性は21万人、女性は17万人と推計され、がん死亡数は男性では5%減少、女性では11%増加する見込みである。罹患では、2015-2019年の年平均罹患数は男性57万人、女性は41万人である一方、2035-2039年平均では男性は64万人、女性は53万人と推計され、罹患数は男性で13%、女性で29%増加する見込みである。有病数では、2015-2019年の年平均有病数は男性173万人、女性は140万人である一方、2035-2039年平均では男性は184万人、女性は167万人と推計され、有病数は男性で6%、女性で19%増加する見込みである。

表1.男性全がんの予測値(値は年平均)
推計期間男性
死亡数罹患数有病数
2015-2019 222,520 565,780 1,734,060
2015-2019 224,970 618,810 1,865,440
2025-2029 223,390 645,410 1,910,400
2030-2034 220,880 646,980 1,882,170
2035-2039 211,510 640,690 1,844,130

 

表2.女性全がんの予測値(値は年平均)
推計期間女性
死亡数罹患数有病数
2015-2019 153,650 413,360 1,399,380
2015-2019 161,440 464,760 1,547,620
2025-2029 166,430 499,730 1,635,240
2030-2034 170,470 517,660 1,660,120
2035-2039 170,400 531,990 1,671,630

参考文献

  • 1. Hakulinen T, Dyba T. Precision of incidence predictions based on Poisson distributed observations. Statistics in medicine. 1994;13(15):1513-23.
  • 2. Dyba T, Hakulinen T, Päivärinta L. A simple non-linear model in incidence prediction. Statistics in medicine. 1997;16(20):2297-309.
  • 3. Møller B, Fekjær H, Hakulinen T, Sigvaldason H, Storm HH, Talbäck M, et al. Prediction of cancer incidence in the Nordic countries: empirical comparison of different approaches. Statistics in medicine. 2003;22(17):2751-66.
  • 4. Bray F, Møller B. Predicting the future burden of cancer. Nature Reviews Cancer. 2006;6(1):63-74.
  • 5. Pisani P, Bray F, Parkin DM. Estimates of the world‐wide prevalence of cancer for 25 sites in the adult population. International journal of cancer. 2002;97(1):72-81.
  • 6. Pisani P, Ferlay J, Ferlay J, Black R, Pisani P. Prevalence data. EUCAN90: Cancer in the European Union Lyon, France, International Agency for Research on Cancer. 1996:5-6.
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