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サンパウロ日系人研究

ボリビアの日系人

背景

サンファン移住地の入り口風景調査地は南米ボリビアのサンタクルス市郊外のサンファン移住地とオキナワ移住地です。ボリビアの日本移民は1899年に始まりました。ペルーの日本移民の中で過酷な労働に耐えられずゴム景気に誘われてボリビアの僻地へと踏み込んだ人たちがいました。これがボリビアの日本移民の始まりです。この人たちはほとんど現地の人と結婚したので日系社会はただ一代で消滅してしまいました。戦後まもなくアメリカの占領下にある沖縄よりボリビアへの移住が始まりました。1985年の資料によると第1〜第3オキナワ移住地は 46877haに182家族1101人(沖縄県出身者)、サンファン移住地(本土出身者)は、27132ha に237家族、1143人が定住しています。共に農業を営む位置的にも近く気候の違いも大きくない環境にあります。

サンファン移住地 とオキナワ移住地の位置

研究成果

死亡及び死因

  • 1975年から1984年の10年間での死因順位は、不慮の事故、悪性新生物、脳血管疾患でした。
    移住当初の頃は熱帯性感染症など発展途上国特有の病気に冒され命を落とすことが多かったのですが、近年においては不慮の事故による死亡が多いという特徴がありますが、日本と同様に悪性新生物や脳卒中などの成人病が主な死因でした。(論文6

血圧値

  • オキナワ移住地の人の血圧値はサンファン移住地よりも成人、学童いずれにおいても有意に高値を示しました。ナトリウムの推定摂取量がオキナワ移住地でむしろ少ないにも関わらず高い血圧値であるのは、遺伝的な背景と肥満などが原因であるのではないかと考察されます。(研究成果[2])日本で実施した調査では沖縄県の対象者は本土4地区の対象者に比べて血圧値、BMIが最も高く、24時間尿中のナトリウム量は最も低いというボリビアの日系移住地での知見と一致していました。
  • 学童児について日系人の子供はボリビア人の子供よりも血圧値が高く、日本人の血圧の相対的高値が既に小児より始まっていることが示唆されました。(論文5)

食生活

  • 牛肉やパン、コーヒーといった食品が両移住地とも移住前よりも頻度が増えていて、これらはボリビアで習得した食習慣と考えられます。移住地を比較するとオキナワ移住者は豚肉、動物性油脂の摂取頻度が多く、サンファン移住者は魚、漬け物、果物の摂取頻度が多いという結果を得ました。等しくボリビアの食生活を習得しつつも、両移住地とも移住前の出身県の食生活の違いを根強く残していました。(論文4) 特に魚介類の摂取頻度の違いは毛髪中の水銀濃度にも反映していました。(論文1,3

no 記事 外部リンク
7 津金昌一郎. 南米日系移民を対象とした衛生学的研究. 日本衛生学雑誌. 1992; 47(4): 775-784.
6 石井裕正, 津金昌一郎(編). ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康. 慶応義塾大学地域研究センター(東京). 1990; : 154p.
5 Tsugane S. Changes and Differences in Eating Habits of Immigrants from Okinawa and those from the Japanese Mainland in the Republic of Bolivia. Jpn J Health Hum Ecol. 1989; 55(3): 124-132.
4 Tsugane S, Kitagawa Y, Kondo H. Ethnic differences in blood pressure level between Japanese school children in Bolivia and native Bolivians. Int J Epidemiol. 1989; 18(1): 100-104.
3 Tsugane S, Kondo H. The mercury content of hair of Japanese immigrants in various locations in South America. Sci Total Environ. 1987; 63: 69-76.
2 津金昌一郎. 南米各地に居住する日系人移住者の毛髪内各種元素濃度とその変動要因. 日本公衆衛生雑誌. 1986; 33(9): 535-546.
1 津金昌一郎, 竹森幸一, 佐々木直亮. 南米ブラジルおよびボリビアに居住する日本人と現地住民の尿中Na,K排せつパタンと血圧値に関する比較民族学的研究. 民族衛生. 1986; 52(3): 127-132.
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