国際共同プロジェクトへの参加
日中研究連携
研究の概要
平成20年11月2日に厚生労働省と中国衛生部間において、衛生及び医学科学に関する協力覚書が締結されました。この中で、がんは、優先領域として位置づけられたことから、日中間におけるがん予防対策に関連する研究の連携協力を促進するために編成されたのがこの研究プロジェクトです。本プロジェクトは、日中間におけるがん統計等のがん対策に必要な基礎データの相互比較・分析を行うとともに、がんの要因探索のための研究を展開していく基盤となる、両国の作業チームの編成と情報収集、日中間研究連携の具体的活動計画の策定、両国間の専門家の交流やがん予防対策研究に関するシンポジウムの開催等の実現を目的としています。
具体的には、日中がんセンター間(日本は独立行政法人国立がん研究センター、中国は中国医学科学院腫瘤医院腫瘤研究所)のがん研究に関する覚書の調印を受けて、両センターを中心に、実際の共同研究や研究交流の可能性とその調整を進めています。がん予防対策関連分野を軸に、日本側作業チームを編成し、がん統計、疫学研究、予防研究、たばこ対策、がん関連感染症、環境発がん物質に関連する各分野について、関係出版物やウェブサイト等の利用可能資料や科学専門誌の文献検索、及び日中専門家との意見交換による情報収集を行っています。
中国は、わが国と食文化や生活習慣や疾病構造が類似しています。わが国は第二次世界大戦後に生活習慣の欧米化が進みました。が、一方、中国は近年急速に欧米化が進み、さらにわが国と同じく高齢化が進んでいます。今後、わが国と類似した疾病構造の変化が予想され、がん予防等に関する情報の共有はきわめて重要と考えられますが、これまで両国間の研究連携が必ずしも十分に行われてきたわけではありませんでした。本プロジェクトでは、日中協力のための基盤を整備すべく、両国間の情報交換と連携の可能な課題の調査と具体的連携を開始しました。
研究連携内容の紹介
疫学予防研究分野における研究連携
予防法研究分野では、近年は各国において、その国のがん予防対策の効果を予測するための方法として、人口寄与割合(既知の要因を予防することによって減らすことのできるがんの割合)の推定が試みられるようになってきています。将来の比較に向け、日中ともに現在独立にこの作業を進めています。
がん統計における研究連携
がん統計分野では、がん死亡・がん罹患の性年齢別集計データを相互に交換して解析をすることで、日中がん罹患死亡特性比較を試みています。
中国側の統計データとして、中国11地域の1988-2005年のがん罹患性年齢別集計データ(中国医学科学院腫瘤医院腫瘤研究所・全国がん登録センターより提供)、日本側のデータとして、日本国内13地域の1993-2004年のがん罹患性年齢別集計データを、日中で相互に交換し、分析を進めています。
たばこ対策分野における研究連携
日中はともに、紙巻たばこの喫煙率が世界的に高い地域であり、男性喫煙率(紙巻たばこ、以下同じ)が欧米諸国と比べて顕著に高いことを大きな特徴としています。WHOのたばこ規制枠組条約(FCTC)の枠組み等を参考に、法的枠組み、能動及び受動喫煙の実態、公共場所での禁煙、健康影響、価格と税金、販売本数、禁煙治療、警告表示、広告規制について日中の現状調査を進めています。
がん疫学研究分野における研究連携
胃がんや食道がん等、日中両国に関心の高いがんの比較疫学研究の実施による日中連携を検討しています。
がん関連感染症分野における研究連携
日本と中国は、ともに肝炎・肝がん罹患率が世界的みても高率の地域であり、かつ民族・生活習慣が類似しています。しかしながら、中国における肝炎・肝がんの罹患状況やその対策は、わが国においてはあまり知られていないのが現状です。本プロジェクトでは、肝炎ウイルス感染等、中国のがん関連感染症の実態について、中国側からの情報提供も受けながら、調査を進めています。
環境発がん物質分野における研究連携
両国民が共通して曝露している環境発がん物質の曝露レベルの評価およびヒト発がんへの関与に関する研究の連携について検討を進めています。
no | 記事 | 外部リンク |
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2 | Inoue M, Sawada N, Matsuda T, Iwasaki M, Sasazuki S, Shimazu T, Shibuya K, Tsugane S. Attributable causes of cancer in Japan in 2005--systematic assessment to estimate current burden of cancer attributable to known preventable risk factors in Japan. Ann Oncol. 2012; 23(5): 1362-1369. | |
1 | Tanaka M, Katayama F, Kato H, Tanaka H, Wang J, Qiao YL, Inoue M. Hepatitis B and C virus infection and hepatocellular carcinoma in China: a review of epidemiology and control measures. J Epidemiol. 2011; 21(6): 401-416. |