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国際共同プロジェクトへの参加

アジア人におけるBMIと膵がん死亡との関連

―アジア人88万人の国際統合解析―


アジアのコホートを対象としたBMIと膵がん死亡の関係の検証


がんの一次予防に資する分析疫学研究の大部分は欧米先進諸国から発せられており、それらの知見が日本以外の東アジア諸国のがん予防にどの程度有効かは、必ずしも明らかにされてはいません。そこで、東アジア諸国に特有なリスク特性を示す要因とがんをはじめとする生活習慣病との関連について、既存大規模コホートのメタ分析などの手法を用いて量的評価を行っています。


この度、多目的コホート研究が参加した国際疫学研究プロジェクトの成果が専門誌に発表されました(Eur J Cancer Prev. 2013年 22巻(3))。このプロジェクトでは、バングラデシュ、中国、インド、日本、韓国、シンガポール、台湾の16集団(計883,529人)のアジア人を対象にして、体型の指標であるBMI(体重(㎏)÷身長(m)2)と膵がん死亡の関連を調べる横断研究が行われました。


研究方法の概要


この研究では、アジアコホート連合(ACC)の枠組みを利用して情報収集を進めました。肥満度と死亡との関連について結果を公表しているコホート集団を文献検索により確認し、本研究への参加候補集団を抽出しました。本研究への包含条件として、5年以上の追跡期間、身長、体重またはBMIの情報が得られていること、研究開始時10,000人以上の対象者が含まれていること、死因別死亡の追跡が実施されており、膵がん死亡のエンドポイントが得られているなど、解析に必須な項目を最低限収集していることを暫定基準として定めました。下表は除外後に研究に用いられた対象者数です。

 

コホート数 対象者数
日本   8 333,975
中国     2 134,597
台湾   1 23,493
韓国   2 28,168
インド   2 269,052
バングラデシュ   1 10,257
合計  16 799,542



ベースライン時BMIと膵がん死亡との関連について解析を行いました。BMIレベルは「18.5未満」「18.5-19.9」「20.0-22.4」「22.5-24.9」「25.0-27.4」「27.5-29.9」「30以上」の7区分に分けられ、「22.5-24.9」の区分を基準として、各区分の膵がん罹患率の相対リスク(ハザード比)とその95%信頼区間が計算されました。


体型と膵がん死亡との関連


下図はBMIカテゴリー別の膵がん死亡率を、糖尿病既往群、東アジア人、南アジア人別にグラフにしたものです。

 

アジア人におけるBMIと膵がん死亡との関連図

 

アジア人全体としては、体型と膵がん死亡との関連は見られず、肥満は東アジア人、南アジア人ともに膵がんと関連は見られませんでした。また、年齢、喫煙状況、糖尿病歴によって関連に差が出ることはありませんでした。なお、東アジア人において、BMI18.5未満でかつ糖尿病既往群でリスクが2.01倍(95%CI:1.01-4.00、p for interaction=0.07)高くなりました。これらの結果から、これまで示唆されてきた高BMIと膵がんリスクとの正の関連は、この大規模アジア人集団には当てはまらないことが示唆されました。


体型と膵がん死亡との関連は、アジア人集団については未だ結果が一致しておらず、結論は得られていません。今回の研究の結果、アジア人集団では関連が見られない理由として1)アジア人では肥満割合が2.5%と欧米の統合解析などで報告されている16-20%と比較して低いこと、2)同じ肥満度における体脂肪の蓄積特性や生活習慣要因が白人集団とアジア人集団とで異なること、等があげられ、これらに焦点を当てたさらなる検討が必要であると考えられます。

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