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国際共同プロジェクトへの参加

アジア人におけるBMIと前立腺がん死亡の関連

50万人以上のアジア人を対象にした国際プール解析

 

アジアのコホートを対象としたBMIと前立腺がん死亡の関係の検証

 

がんの予防に役立つ疫学研究の大部分は欧米先進諸国から出されており、それらの知見が日本以外の東アジア諸国のがん予防にどの程度有効かは、必ずしも明らかにされてはいません。そこで、東アジア諸国に特有な危険因子と、がんをはじめとする生活習慣病との関連について、既存の大規模コホート研究のプール解析などの手法を用いて定量的評価を行っています。

 

この度、多目的コホート研究が参加した国際疫学研究プロジェクトの成果が専門誌に発表されました(Am J Epidemiology 2015年 182巻(5) 381-9ページ)。このプロジェクトでは、インド、中国、台湾、シンガポール、日本、韓国の18集団(計522,736人)を対象にして、体型の指標であるBMI(体重(kg)÷身長(m)2)、喫煙、飲酒と前立腺がんの関連を調べるプール解析が行われました。


研究方法の概要

この研究では、アジアコホート連合(ACC)の枠組みを利用して情報収集を進めました。本研究への参加条件として、5年以上の追跡期間があること、身長、体重またはBMIの情報が得られていること、研究開始時に10,000人以上の参加者が含まれていること、解析に必要な項目を最低限収集していることを基準として定め、さらに前立腺がんによる死亡データの利用が可能な集団に限定しました。 

 コホート数   対象者数 
インド 2 135,995
中国 3 154,856
台湾 2 14,205
シンガポール 1 27,937
日本  8 169,009
韓国 2 19,734
合計 18 522,736


BMIは「12-19.9」「20-22.4」「22.5-24.9」「25以上」の4区分に分けられ、「22.5-24.9」の区分を基準として、各区分の前立腺がん死亡率の相対リスク(ハザード比)とその95%信頼区間が計算されました。喫煙歴は「非喫煙」と「喫煙」に分けられ、「喫煙」のグループはさらに「過去喫煙」と「現在喫煙」に分類されました。「現在喫煙」グループは「1-20.0 pack-years」「21.0+ pack-years」に分けられ、「非喫煙」の区分を基準としました。飲酒は、「飲酒なし」と「飲酒あり」に分け、「飲酒あり」のグループはさらに週当たりの平均エタノール摂取量で「1-155 g/week」「156+ g/week」に分類し、「1-155 g/week」を基準としました。


BMIと前立腺がん死亡との関連

下図はBMI、喫煙、飲酒カテゴリー別の前立腺がん死亡の相対リスクをグラフにしたものです。

fin_Fowke_BMIと前立腺がんの関連

本研究の追跡期間中、合計634人の前立腺がん死亡が報告されました。本研究からはアジア人全体としてはBMIと前立腺がん死亡との関連は見られませんでした。なお、中国の参加コホートにおいては、統計学的に有意ではありませんでしたが、BMI20以下の群で死亡リスクの低下がみられました(HR=0.59、95% CI: 0.35-1.00)。また、喫煙や飲酒と前立腺がん死亡との関連も見られませんでした。

アジアにおける前立腺がん罹患率は比較的低い一方、進行性や転移性前立腺がんの割合は高いことがわかっています。欧米の先行研究では、肥満と前立腺がん死亡には一貫した関連があり、また喫煙と飲酒によりリスクが上昇することが報告されています。しかし、今回のアジア人を対象にした研究によると、BMI、喫煙、飲酒と前立腺がん死亡との関連はみられませんでした。東南アジアにおける前立腺のスクリーニングが、米国やその他の諸国と比べ未だ普及しておらず、欧米とアジアにおける前立腺がんのスクリーニングや治療方法の違いが、今回の研究結果が欧米の先行研究と一致しない理由のひとつとして考えられます。しかしながら、肥満、喫煙、飲酒は他のがんとの関連も多く報告されており、今後もこれらの生活習慣やスクリーニングプログラムとの関係を考慮した研究が必要であると考えられます。

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