長野県の低がん死亡率と農作物との関連についての疫学研究
目的
どのような食事が胃がんや大腸がんのリスクとなり、どのような食事が予防に効果があるのかを明らかにするのが目的です。具体的には、食事摂取(肉、魚、野 菜、果物、きのこ、塩分など)や喫煙・飲酒習慣と胃がん、大腸がんとの関係を症例対照研究という疫学研究の方法で分析しました。
また、同じようにたくさん食べても太る人と太らない人がいて、同じように喫煙していても肺がんになる人とならない人が いるように、生活習慣は同じでも、その結果としての体の状態(病気・健康両方を含む)には個人差があります。その個人差をもたらす原因のひとつは遺伝子多 型(遺伝子のタイプ)です。
わかりやすい例としてアルコールの分解・代謝にかかわる酵素、アルデヒド脱水素酵素の遺伝子多型がありま す。お酒を飲むと顔や手足が真っ赤になる人とならない人がいますが、これはアルデヒド脱水素酵素の遺伝子のタイプが違うことによります。この遺伝子は3つ のタイプに分けられて、日本人では、赤くならないタイプの人が5割、赤くなるが飲めるタイプの人が4割、ほんの少しでも飲むと真っ赤になりそれ以上に飲め ないタイプの人が1割という割合です。 このタイプによって、アルコールが体に与える影響の大きさが違うと考えられます。
このような遺伝子多型という個人差を考慮に入れた研究分野が現在の疫学研究の柱のひとつになりつつありま す。どのような遺伝子多型を持った人が、胃がんや大腸がんになりやすいのか、またはなりにくいのかということを、生活習慣など環境的な要因との相互作用か ら明らかにすることも、本研究における重要な目的のひとつです。