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長野県の低がん死亡率と農作物との関連についての疫学研究

研究の成果

1. アブラナ科野菜、きのこと胃がん・大腸がんリスクについて<詳細>

【結果要約】 白菜、ブロッコリー、ぶなしめじ、なめこで胃がんリスクの減少が見られました。また、大腸がんでは、野菜全体と低カロテン含有野菜、食品ではブロッコリーで有意なリスク減少が見られました。これらの関連は、組織型や詳細部位によって差が見られました。

2. ピロリ菌感染、その他の環境要因と胃がんリスクについて

【結果要約】 胃がんリスクはピロリ菌感染でとても高いことが確認できましたが、ピロリ菌の感染の影響を調整しても、喫煙、味噌汁、ご飯と胃がんが関連していました。またピロリ菌感染の有無によって喫煙などのリスクが異なることはありませんでした。

3. 塩基除去修復酵素遺伝子MYHの新規スプライス部位の胃がん発がんへの関与について

【結果要約】酸化的損傷塩基に対する修復酵素遺伝子MYHにおける新規スプライス部位を同定しました。この変異によって核DNAにおける修復能力が低いことが実験的に示唆され、胃がん発がんに関与していることが推測されましたが、この遺伝子多型と胃がんとは関連が見られませんでした。

4. 胃がんリスクに対する塩基除去修復酵素遺伝子hOGG1の遺伝子多型と環境要因との相互作用について

【結果要約】 酸化的損傷塩基に対する修復酵素の一つhOGG1の遺伝子多型は、胃がんを含めさまざまながんと関連あることが報告されています。今回の研究結果はその遺伝子多型単独では胃がんとの関連は見られませんでしたが、この遺伝子多型がありなおかつ萎縮性胃炎がある人で特に胃がんのリスクが高くなりました。

5. 葉酸、B群ビタミン摂取および関連代謝酵素遺伝子多型と大腸がんリスクについて

【結果要約】 葉酸は、緑色野菜に多く含まれる栄養素で、水溶性のビタミンB群に属します。葉酸は大腸がんを予防すると言われています。しかし、この症例対照研究では、葉酸の摂取量や、葉酸の代謝経路の補酵素として関わるビタミンB6、B12、B2の摂取量には、大腸がんリスクとの関連は見られませんでした。また、葉酸の代謝経路の酵素の一つMTRRの遺伝子多型と葉酸およびビタミンB6との相互作用が示唆されましたが、従来から言われている高葉酸摂取とMTHFRのC677T遺伝子多型との相互作用は確認できませんでした。

6. 萎縮性胃炎、ピロリ菌感染と大腸がんとの関連

【結果要約】 ピロリ菌感染、血中ガストリン、萎縮性胃炎のいずれも大腸がんとは関連はみられませんでした。ただし、直腸がんに限ると、萎縮性胃炎は3倍程度のリスク上昇と関連していました。

no 記事 外部リンク
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5 Otani T, Iwasaki M, Hanaoka T, Kobayashi M, Ishihara J, Natsukawa S, Shaura K, Koizumi Y, Kasuga Y, Yoshimura K, Yoshida T, Tsugane S. Folate, vitamin B6, vitamin B12, and vitamin B2 intake, genetic polymorphisms of related enzymes, and risk of colorectal cancer in a hospital-based case-control study in Japan. Nutr Cancer. 2005; 53(1): 42-50.
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3 Tao H, Shinmura K, Hanaoka T, Natsukawa S, Shaura K, Koizumi Y, Kasuga Y, Ozawa T, Tsujinaka T, Li Z, Yamaguchi S, Yokota J, Sugimura H, Tsugane S. A novel splice-site variant of the base excision repair gene MYH is associated with production of an aberrant mRNA transcript encoding a truncated MYH protein not localized in the nucleus. Carcinogenesis. 2004; 25(10): 1859-1866.
2 Machida-Montani A, Sasazuki S, Inoue M, Natsukawa S, Shaura K, Koizumi Y, Kasuga Y, Hanaoka T, Tsugane S. Association of Helicobacter pylori infection and environmental factors in non-cardia gastric cancer in Japan. Gastric Cancer. 2004; 7: 46-53.
1 Hara M, Hanaoka T, Kobayashi M, Otani T, Adachi HY, Montani A, Natsukawa S, Shaura K, Koizumi Y, Kasuga Y, Matsuzawa T, Ikekawa T, Sasaki S, Tsugane S. Cruciferous vegetables, mushrooms, and gastrointestinal cancer risks in a multicenter, hospital-based case-control study in Japan. Nutr Cancer. 2003; 46(2): 138-147.
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