日本人におけるがんの原因の寄与度推計(JAPAN PAF プロジェクト)
飲酒に起因するがんの割合
背景
アルコール飲料の摂取(飲酒)は、がんと関連していることが知られています。今回、2015年における飲酒によるがん罹患および死亡の人口寄与割合(PAF:飲酒していなかった場合、がんの罹患や死亡が何%防げたかを表す数値, population attributable fraction)を推計しました。(GHM Open. 2021; 1(2):51-55.)
研究の概要
本研究では、日本人において飲酒によってリスクが増加するといわれている口腔、咽頭、食道、胃、大腸、肝臓、喉頭および乳房のがんを対象とし人口寄与割合を算出、最終的にがん全体の罹患・死亡に占める人口寄与割合を推計しました。
飲酒量については、2005年の⽇本の国⺠健康・栄養調査から1⽇あたりのアルコール摂取量(エタノール換算のグラム数)を算出して使用しました。先行研究に基づき、世界的にはアルコールの最適摂取量は0 g/日、すなわち飲まない、としています。飲酒習慣開始時期からの上記のがんのリスクが増加するまでの期間は明らかでないため、本研究では10年と仮定しています。2015年のがん罹患は、全国がん罹患モニタリング集計から推計し、2015年のがん死亡は、日本人口動態統計を使用しました。飲酒をする人のそれぞれのがんの相対リスクは、世界がん研究基金/米国がん研究協会(WCRF/AICR)の報告書、日本のコホート研究やプール解析から引用しました。
飲酒に起因するがんは、全がん罹患の 6.2% を占める
結果、2015年の59,838件のがん罹患と23,929件のがん死亡が飲酒によるものでした。飲酒に起因するがん全体の罹患と死亡の人口寄与割合は、それぞれ6.2%と6.5%でした。最も人口寄与割合が⾼かったのは食道がんであり、罹患では54.0%、死亡では52.3%という結果でした。
表1. 日本における飲酒によるがんの人口寄与割合(%)(2015)
図1. 日本における飲酒によるがん罹患の人口寄与割合(%)(2015)
図2. 日本における飲酒によるがん死亡の人口寄与割合(%)(2015)
まとめ
最後にこの研究の限界ですが、人口寄与割合の計算には⾃⼰申告による飲酒量を用いており、その精度に依存した結果となっています。さらに飲酒とがんに関する⽇本人を対象とした疫学研究は限られていることから、結果に誤差が生まれている可能性があります。