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日本人におけるがんの原因の寄与度推計(JAPAN PAF プロジェクト)

野菜、果物、食物繊維の摂取不足に起因するがんの割合

 野菜、果物、食物繊維の摂取は、がん罹患および死亡と関連していることが知られています。

 今回、2015年における野菜、果物、食物繊維の摂取不足によるがんの罹患および死亡の人口寄与割合(PAF: 野菜、果物、食物繊維の摂取不足が無かった場合、がんの罹患や死亡が何%防げたかを表す数値, population attributable fraction)を推計しました。 (GHM Open. 2021; 1(2):70-75.

研究の概要

 この研究では、野菜、果物、食物繊維の摂取により予防できるとされている胃、肺、大腸がんを対象としました。まず野菜、果物、食物繊維の摂取不足によるこれらのがんの人口寄与割合を算出、最終的にがん全体の罹患・死亡に占める人口寄与割合を推計しました。

 野菜、果物、食物繊維の摂取量(g/日)については、2005年の日本国民健康・栄養調査から入手しました。最適摂取量はそれぞれ野菜350 g/日以上、果物100 g/日と仮定し、食物繊維の最適摂取量は日本の食事摂取基準に従って年齢層別に定義し使用しました。野菜、果物、食物繊維の摂取不足によってがんに罹患するまでの期間は不明であり、10年と仮定しています。2015年のがん罹患は、2013年の全国がん罹患モニタリング集計から推計し、2015年のがん死亡は、日本人口動態統計を使用しました。野菜、果物、食物繊維の摂取不足がある人のそれぞれのがんの相対リスクは、日本人を対象としたコホート研究やプール解析から引用しました。

野菜や果物の摂取不足によるがんは、がん全体の罹患の 0.1 - 0.2% を占める
食物繊維の摂取不足によるがんは、がん全体の罹患の 1.0% を占める

結果、野菜、果物、食物繊維の摂取不足によるがん全体の罹患の人口寄与割合は0.2%、0.1%、1.0%、死亡の人口寄与割合は0.2%、0.1%、0.9%を占めることが分かりました。

表. 日本における野菜、果物、食物繊維の摂取不足によるがんの人口寄与割合(%)(2015)

運動_表1

 

まとめ

 この研究では、限界がいくつかあげられます。第一に、食事摂取量の推計に使用した方法が異なる点です。この研究では、国民健康・栄養調査で収集された一日分の食事記録の結果から食事平均摂取量を推計しました。一方で、相対リスクを求めた研究の中には、食物摂取頻度調査票(FFQ)を使用しているものがありました。それぞれ方法が異なっており、結果が若干異なる可能性があります。第二に、今回の解析は、曝露(食事摂取量)と転帰(発がんリスク)の間に用量反応関係*があるという仮説に基づいています。この仮説が間違っていた場合、結果に誤差がでる可能性があります。最後に、食物繊維の摂取不足によるがんの相対リスクは、一つの研究から得られたものであり、そのリスクを過大評価または過小評価している可能性があります。今後、メタ分析やプール解析から出された相対リスクを用いて人口寄与割合を再計算する必要があるでしょう。

*摂取量が多ければ多いほど、がんリスクが上がる(下がる)関係

 
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