日本人におけるがんの原因の寄与度推計(JAPAN PAF プロジェクト)
赤肉及び加工肉の過剰摂取に起因するがんの割合
国際がん研究機関(IARC)は、加工肉には発がん性があり、また赤肉にもおそらく発がん性があるだろうと評価しています。また世界がん研究基金/米国がん研究協会(WCRF/AICR)は、加工肉の過剰摂取により大腸がんのリスクが増加すると結論づけています。
今回、2015年における赤肉・加工肉の過剰摂取によるがん罹患および死亡の人口寄与割合 (PAF: 赤肉・加工肉の過剰摂取がなかった場合、がんの罹患や死亡が何%防げたかを表す数値, population attributable fraction)を推計しました。(GHM Open. 2021; 1(2):91-96.)
研究の概要
本研究では、日本人において赤肉や加工肉の摂取が多いほどリスクが増加するといわれている大腸がんを対象とし人口寄与割合を算出、最終的にがん全体の罹患・死亡に占める人口寄与割合を推計しました。
赤肉・加工肉の摂取量に関しては、2005年の日本国民健康・栄養調査から入手し、日本における赤肉の最適摂取量を500g/週未満または71.4g/日、加工肉は0g/日(食べない)としました。赤肉・加工肉を過剰摂取してから大腸がんのリスクが増加するまでの期間は不明なため、10年と仮定しています。2015年のがん罹患は、全国がん罹患モニタリング集計から推計し、2015年のがん死亡は、日本人口動態統計を使用しました。赤肉・加工肉の過剰摂取者の大腸がんの相対リスクは、日本のコホート研究や症例対照研究から引用しました。
赤肉の過剰摂取によるがんは、がん全体の罹患の 0.01%を占め、
加工肉の過剰摂取によるがんは、がん全体の罹患の 0.4%を占める
結果、赤肉の過剰摂取によるがん全体の罹患の人口寄与割合は0.01%(男性0.01% 女性0.0001%)、死亡の人口寄与割合は0.0002%(男性0.01% 女性0.0002%)となりました。また、加工肉の過剰摂取によるがん全体の罹患の人口寄与割合は0.4%(男女ともに0.4%)、死亡の人口寄与割合は0.3%(男女ともに0.3%)でした。
表1. 日本における赤肉および加工肉の過剰摂取によるがんの人口寄与割合(%)(2015)
(小数点第二位四捨五入)
まとめ
この結果から、赤肉や加工肉によるがん全体の罹患・死亡リスクは小さいと言えます。日本では魚の摂取量が多く、赤肉や加工肉の摂取量が少ないことが欧米と比べて人口寄与割合が低くなった理由のひとつと考えます。日本において、がん全体の罹患や死亡を減らす目的に赤肉や加工肉の摂取量を減らす政策は、必ずしも効果的ではないのかもしれません。