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日本人におけるがんの原因の寄与度推計(JAPAN PAF プロジェクト)

日本人におけるがんの原因の寄与度推計:2015年時点のがん罹患・死亡に対する推計

研究の背景

がんは、長期間にわたる環境や生活習慣への暴露が原因となる生活習慣病であることが知られています。がんの発症分布は、地域や社会経済レベルで大きく異なり、欧米の国々で得られた結果がそのまま日本人に当てはまるとはいえません。そのため、国のがん対策には、他の国々ではなく日本人のがんの要因やその保有状況を反映した科学的根拠が必要になります。

研究の目的

JAPAN PAFプロジェクトでは、2015年時点および将来の日本人におけるがんの原因の寄与度を、最新の科学的根拠を網羅してより高い精度で推計・予測することを目的としています。具体的には、がんの予防可能な要因とされている喫煙、飲酒、がん関連感染症、肥満、運動、塩分摂取、野菜・果物摂取、女性ホルモン関連要因、糖尿病、大気汚染について、各部位がんにおけるそれらのリスク要因の人口寄与割合を求め、さらにこれらリスク要因のがん全体における人口寄与割合を推計することをねらいとしています。

日本人における予防可能ながんの要因(2015年版)

日本では、2005年のがんの罹患や死亡のうち予防可能な要因に起因する度合い(PAF: Population attributable fraction, 人口寄与割合)が初めて推計されました。PAFとは、その要因によって起こっているであろうがんの割合、言い換えると、その要因がなかったらがんに罹らず(死亡せず)にすんだ割合を意味します。2005年の推計では、推計の基となるデータが必ずしも十分ではありませんでした。また予防可能なリスク要因の保有率は出生の年代により異なっていることもあるため、そのような要因については年代ごとの適切な保有率を考慮することも必要です。

前回のPAFの推計から10年が経ち、利用可能なリスク要因に関するデータが蓄積され、リスク要因の保有率を適切に用いることにより正確な推計が可能となりました。そこで最新の疫学的エビデンスを基に、2015年の日本におけるがん罹患とがん死亡のうち予防可能な要因の寄与度(要因を避けることにより罹らずに(死亡せずに)すんだだろうがんの割合)(PAF)を推計しました。(GHM. 2022;4(1):26-36

研究の方法

PAFの推計には、日本のがん罹患とがん死亡のデータ、リスク要因の保有率、がんの相対リスクが必要となります。

対象としたリスク要因は、がんとの関連性に関するエビデンスがあり、全国の代表的な調査から保有率が得られる以下のものを選択しました。ただし、日本において適切なデータのないもの(職業性曝露や紫外線、放射線など)は除外しています。

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日本のがんにおける最大の要因は、喫煙と感染

日本では、がん罹患の35.9%(男性:43.4%、女性:25.3%)が予防可能なリスク要因によるものでした。がん死亡では41.0%(男性:49.7%、女性:26.8%)でした。リスク要因ごとのPAFでは、感染と喫煙が15%以上を占め、次いで飲酒となっていました。男性と女性では主要なリスク要因が異なっており、男性では喫煙、女性では感染が1番寄与度の高いリスク要因でした。

この研究の限界点

この研究では、紫外線や放射線などは検討していません。また、職業リスクについても一般人口における適切なリスク要因保有率のデータが無く検討していません。今後の研究では、職業性曝露を含めることでがん全体のPAF推計値の精度が良くなると考えられます。

リスク要因の保有率や相対リスクについては、日本人にとって最も適切な推計値と方法論を用いたとはいえ、今回の推計値は予防可能な要因のみに焦点を当てています。そのため、個人レベルで変えることができない遺伝的要因、社会経済格差、生殖要因(例:初経・閉経年齢や子どもの数)などの予防不可能な要因は含まれていません。予防可能な要因に加え、経済的要因に起因するがんのPAFや障害調整生存年(DALYs)の観点で算出したPAFも含めることで、より包括的ながんの原因の検討が可能となり、国の適切ながん対策につながります。

まとめ

2015年における日本の予防可能な要因の寄与するがんのPAFを利用可能な疫学的エビデンスを用いて推計しました。推計では、がん罹患とがん死亡の約40%はリスク要因を回避することで予防可能であったことが示されました。感染と喫煙、飲酒が大きなリスク要因であり、現在のがん対策において、最優先に取り組むべき対象であることが明らかとなりました。

PAFTable_2015_罹患

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PAFTable_2015_死亡

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