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サンパウロ日系人研究

サンパウロにおける乳がんのリスク要因(日系人および非日系人を対象)

研究成果一覧

1 イソフラボンと乳がん

要約:イソフラボン摂取量と乳がんリスクの関連を、長野とサンパウロにおける病院ベースの乳癌症例対照研究で検討しました。全体として、食事からの中程度のイソフラボン摂取により乳がんリスクが軽減される可能性が示されました。発表論文5

2 イソフラボン摂取、エストロゲン受容体遺伝子多型と乳がん

要約:イソフラボン摂取とエストロゲン受容体遺伝子多型(α:rs9340799、rs1913474、rs2234693、β:rs4986938、rs1256049)の交互作用を、長野とサンパウロにおける病院ベースの乳がん症例対照研究で検討しました。その結果、rs4986938の多型のうちAAおよびAG群では負の関連が見られず、GG群に限って負の関連が見られました。この傾向は、日本人、日系人、非日系人の3集団とも同様でしたが、いずれの集団も統計学的に有意な交互作用は検出されませんでした。またその他の遺伝子多型については明らかな違いは観察されませんでした。発表論文4

3 イソフラボン摂取、CYP17、CYP19、17β-HSD1、SHBGの遺伝子多型と乳がん

要約:イソフラボン摂取とCYP17 (rs743572)、CYP19 (rs10046)、17β-HSD1 (rs605059)、SHBG (rs6259)の遺伝子多型との交互作用を、長野とサンパウロにおける病院ベースの乳がん症例対照研究で検討しました。その結果、日本人、日系人、非日系人の3集団において、rs605059の多型のうちAアレルを持つ群に限って負の関連が見られました。また、日本人と日系人ではrs6259の多型のうちGG群に限って負の関連が見られましたが、非日系人ではAアレルを持つ群に限って負の関連が見られるという違いがありました。これらは交互作用を示唆する結果ですが、いずれも統計学的に有意ではありませんでした。発表論文6

4  エストロゲン代謝に関連する遺伝子多型と乳がん

要約:エストロゲン代謝に関連する遺伝子多型のうち、CYP1A1*2A、CYP1A1*2C、CYP1A2*1F、CYP1B1 Arg48Gly、CYP1B1 Leu432Val、CYP3A5*3との関連を、長野とサンパウロにお ける病院ベースの乳がん症例対照研究で検討しました。日本人、日系人、非日系人の3集団を合わせた解析では、いずれの多型においても関連は見られませんでした。しかし日本人のみの解析では、CYP1B1 Leu432ValのValアレルを持つ群でのリスク低下、およびCYP3A5*3の*1アレルを持つ群でのリスク上昇がみられました。また非日系人のみの解析では、CYP1A2*1FのCC群でのリスク低下が観察されました。発表論文3

5 ブラジル人女性を対象とした食物摂取頻度調査票の妥当性の検討

要約:乳がんの症例対照研究に使用した食物摂取頻度調査の妥当性を検討するために、対照群の55名に対して8日間の食事記録と食物摂取頻度調査票の調査を行いました。その結果、カルシウムやイソフラボンなどの栄養素は、食事記録と食物摂取頻度調査票から算出した摂取量の相関係数が0.5以上であり、乳がんとの関連を検討する上で妥当な指標となり得ることが確認されました。発表論文1

6 葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12摂取およびそれらに関連する酵素の遺伝子多型と乳がん

要約:葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12摂取、およびこれらの栄養素が関与する代謝酵素の遺伝子多型のうちMTHFR C677T、MTHFR A1298C、MTR A2756Gとの関連、さらにこれらの栄養素と 遺伝子多型の交互作用を検討しました。全体では葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12の栄養素との間に有意な関連は観察されませんでしたが、閉経前女性では葉酸高摂取群で乳がんリスクの上昇が見られました。またMTHFR遺伝子多型(C677T、A1298C)との間には有意な関連は見られませんでしたが、MTR遺伝子多型(A2756G)ではAAアレルを持つ群に比べてGGアレルをもつ群で有意なリスク上昇が見られました。また栄養素と遺伝子多型の組み合わせでは、生物学的なメカニズムを反映すると想定される交互作用は観察されませんでした。発表論文2

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6 Iwasaki M, Hamada GS, Nishimoto IN, Netto MM, Motola J, Jr., Laginha FM, Kasuga Y, Yokoyama S, Onuma H, Nishimura H, Kusama R, Kobayashi M, Ishihara J, Yamamoto S, Hanaoka T, Tsugane S. Dietary isoflavone intake, polymorphisms in the CYP17, CYP19, 17beta-HSD1, and SHBG genes, and risk of breast cancer in case-control studies in Japanese, Japanese Brazilians, and non-Japanese Brazilians. Nutr Cancer. 2010; 62(4): 466-475.
5 Iwasaki M, Hamada GS, Nishimoto IN, Netto MM, Motola J, Jr., Laginha FM, Kasuga Y, Yokoyama S, Onuma H, Nishimura H, Kusama R, Kobayashi M, Ishihara J, Yamamoto S, Hanaoka T, Tsugane S. Dietary isoflavone intake and breast cancer risk in case-control studies in Japanese, Japanese Brazilians, and non-Japanese Brazilians. Breast Cancer Res Treat. 2009; 116(2): 401-411.
4 Iwasaki M, Hamada GS, Nishimoto IN, Netto MM, Motola J, Jr., Laginha FM, Kasuga Y, Yokoyama S, Onuma H, Nishimura H, Kusama R, Kobayashi M, Ishihara J, Yamamoto S, Hanaoka T, Tsugane S. Isoflavone, polymorphisms in estrogen receptor genes and breast cancer risk in case-control studies in Japanese, Japanese Brazilians and non-Japanese Brazilians. Cancer Sci. 2009; 100(5): 927-933.
3 Shimada N, Iwasaki M, Kasuga Y, Yokoyama S, Onuma H, Nishimura H, Kusama R, Hamada GS, Nishimoto IN, Iyeyasu H, Motola J, Jr., Laginha FM, Kurahashi N, Tsugane S. Genetic polymorphisms in estrogen metabolism and breast cancer risk in case-control studies in Japanese, Japanese Brazilians and non-Japanese Brazilians. J Hum Genet. 2009; 54(4): 209-215.
2 Ishihara J, Iwasaki M, Kunieda CM, Hamada GS, Tsugane S. Food frequency questionnaire is a valid tool in the nutritional assessment of Brazilian women of diverse ethnicity. Asia Pac J Clin Nutr. 2009; 18(1): 76-80.
1 Ma E, Iwasaki M, Junko I, Hamada GS, Nishimoto IN, Carvalho SM, Motola J, Jr., Laginha FM, Tsugane S. Dietary intake of folate, vitamin B6, and vitamin B12, genetic polymorphism of related enzymes, and risk of breast cancer: a case-control study in Brazilian women. BMC Cancer. 2009; 9: 122.
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