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年報

平成10年度

臨床疫学研究部では、ヒト集団を対象に疫学・生物統計学の手法を用いて、

  1. 発がんにおける食品・栄養素の関連
  2. 発がんにおける環境要因と遺伝的感受性との関連
  3. がんの予防法に関する研究を行っている。


具体的には、10万人規模の地域住民を対象に、長期追跡調査により食品・栄養素摂取など生活習慣との関連を検証するコホート研究、当部で開発した食品摂取頻度調査票についての妥当性研究、ブラジル在住の日系移民などを対象に遺伝子指標を取り入れた症例対照研究、胃がん死亡率が高い地域における効果的な予防法に関する研究などのプロジェクトを進行させた。

コホート研究においては、5.5 万人の9年間の追跡を終了し、2,200名の死亡と2,000のがん罹患を確認した。また、対象地域から無作為抽出した住民を対象とした断面研究により、コホート研究のベースライン調査で用いている4カテゴリーの単純な果物の摂取頻度が、3日間の食事記録により計算したビタミンC摂取量と比較しても、血漿アスコルビン酸濃度の優れた指標である事を示した。さらに、3日間の食事記録に基づいて、全変動に占める地域間変動の割合を計測したところ、総カロリー、炭水化物、リン、ナトリウムにおいてその割合が高い一方、微量栄養素で低い事を明らかにし、コホート研究のための基礎データを得た。CYPIA1の遺伝子多型の国内地域差を検討すると共に、沖縄における肺がんの症例対照研究に応用し、Exon 7のVal/Val多型の保有が有意なリスク要因である事を示した。

胃がん予防研究については、胃がん高率地域の慢性萎縮性胃炎保有者に対する、ビタミンC投与による影響を評価するための無作為比較試験の4年目を経過すると共に、同一地域の住民を対象として、胃がんの食事関連危険因子の軽減を目指した効果的な食事指導システムの開発及びその評価に関する介入研究の1年目を約500名の対象に対し行った。さらに、臨床試験や予後因子に関する研究などに対する疫学・生物統計学的支援を行った。

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