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年報

平成19年度

予防研究部では、地域住民、検診受診者、病院の患者さんなど人間集団を対象に、疫学研究の手法を用いて、

  1. 発がん要因の究明(がん予防のために必要な科学的根拠を作る)
  2. がん予防法の開発(科学的根拠に基づいて具体的かつ有効ながん予防法を提示する)

を目的とした研究を行っている。

多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究(JPHC Study)

生活習慣とがんなど成人病発症との関連を検討する目的で、全国11保健所管内14万人の地域住民を対象に、長期追跡調査(H2年開始)を多施設共同研究として行っている。

H19 年10月までに、累積で14,000名の死亡、12,700名のがん罹患、5,600名の循環器系疾患罹患を確認した。引き続き、食物摂取頻度調査の妥当性など、研究の質を確保するための基礎データを示し、ベースライン調査などで確認された生活習慣とその後のがんや成人病罹患の関係についても検討を行った。

大腸がんリスクについての検討では、身体活動量が高い群において特に結腸がんのリスクの低下、男性の特に大量飲酒群においてビタミンB-6 低摂取群での上昇、女性のコーヒー高摂取群において結腸がんリスクの低下が見られた。また、大腸がん検診受診者では大腸がんによる死亡リスクが低かった。

保存血液を用いたコホート内症例対照研究の結果、C−ペプタイド濃度が高い群で特に結腸がんリスクが高く、またビタミンDを反映する25(OH)D濃度が特に低い群で直腸がんリスクが高いことが示された。

膵がんリスクについての検討では、肥満指数(BMI)や余暇の運動量やコーヒー、緑茶の摂取量との関連は見られなかった。乳がんリスクについての検討では、出産の未経験や少ない回数、閉経後女性において高身長、体重とBMI、また自然閉経群での遅い閉経、第一子出産年齢の高さが、また閉経前女性においては初潮年齢の早さがリスクであった。前立腺がんについては、イソフラボン高摂取群で限局がんリスクが低下した。

その他、循環器系疾患や老人性白内障についても、生活習慣との関連を示す結果が得られた。

生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価

日本人における全がん、主要ながんについて、喫煙、飲酒、野菜・果物、肥満などその他の要因との関連について疫学研究の評価を行い、必要に応じてメタ・アナリシスを進めた。

飲酒と全がん、肺がん、乳がんについての結果が出版された。運動、感染症、食品(野菜・果物以外)と全がんおよび主要がん(胃・大腸・肺・乳・肝)、喫煙、飲酒、肥満指数、野菜・果物、大豆と食道・膵・前立腺がんの総合評価を行った。また飲酒と大腸がんの関連に関するプール解析を実施した。

胃がんの効果的な予防方法を開発する目的で実施した2つの無作為化比較試験が完了し、データを解析中である。

ブラジル日系移民を対象としたがんの疫学研究

サンパウロ日系人、ブラジル人、日本人の3つの乳がんの症例対照セットを解析中である。また、食事と大腸腺腫の関連を調べるための症例対照研究が進行中である。

その他

内分泌かく乱物質と子宮内膜症リスク、肺がんデータベースプロジェクト、遺伝的要因によるリスク修飾を検討する疫学研究や、疫学データの妥当性研究、臨床データの統計学的解析に対する支援などを行った。

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