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年報

平成16年度

予防研究部では、地域住民、検診受信者、病院の患者さんなど人間集団を対象に、疫学研究の手法を用いて

  1. 発ガン要因の究明
    (がん予防のために必要な科学的根拠を作る)
  2. がん予防法の開発
    (科学的根拠に基づいて具体的かつ有効ながん予防方を提示する)

を目的とした研究を行っている。

多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究(JPHC Study)

生活習慣とがんなど成人病発症との関連を検討する目的で、全国11保健所管内14万人の地域住民を対象に、長期追跡調査(H2年開始)を多施設共同研究として行っている。
H16年までに、累積で10,717名の死亡、9,359例のがん罹患、2,957の脳卒中罹患、929の急性死を含む心筋梗塞罹患を確認した。引き続き、食物摂取頻度調査の妥当性など、研究の質を確保するための基礎データを示し、ベースライン調査で確認された生活習慣とその後のがんや成人病罹患の関係についても検討を行った。
喫煙が男性のがんの30%、女性のがんの3%に寄与することを明らかにし、日本においてたばこ対策により予防可能ながん罹患を年間9万件と試算した。
BMIとがん罹患リスクは、男性ではUカーブの関連があり、日本においては、肥満対策により予防可能ながん罹患の割合が少ないことを示した。
野菜・果物により、胃がんリスクが抑制されることはすでに報告したが、肺がんリスクとは関連がなかった。食塩や高塩分食品の摂取、伝統型食パターンが、胃がんのリスクを高める一方、緑茶飲用によって、女性の胃がんリスクが抑制された。魚に豊富なn3系脂肪酸の摂取量は大腸がんリスクには関連しなかった。 1日3合以上の飲酒により、総合的な脳卒中リスクは1.6倍になった。また、たばこによって男女とも脳卒中リスクが高くなった。

生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価

日本人による全がん、主要ながんに対する、たばことお酒という二大リスク要因との関連についてメタ・アナリシスを進めるとともに、野菜・果物との関連を調べた疫学研究結果を評価した。また、胃がん死亡率の高い地域に居住する住民を対象に、胃がんの効果的な予防方法を開発する目的で、2つの無作為化比較試験(ビタミンC補給による胃粘膜萎縮改善効果の評価、食事関連危険因子の軽減を目指した効果的な食事指導システムの開発・評価)をH7年から継続して行っている。その中で、ビタミンC補給による血中脂質濃度への影響を評価した。

ブラジル日系移民を対象としたがんの疫学研究

サンパウロ州在住日系人の近年の死因を分析するために、死亡票の収集と手作業による日系人の抽出作業を行い、1999−2001年の3年間の死因統計を作成し、日本やサンパウロと比較した。また、サンパウロ日系人、ブラジル人、日本人の3つの乳がんの症例対照セットを解析する環境を整えた。

その他

内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する疫学研究として、文献レビューによる疫学知見のまとめをホームページにて公開した。また、子宮内膜症および乳がんの症例対照研究などを実施している。長野県の低がん死亡率と農作物との関連についての疫学研究では、胃がんの症例対照研究において、胃がんリスクとピロリ菌感染、喫煙、味噌汁、ご飯との関連を確認した。
また、hOGGIの遺伝子多型と環境要因の相互作用を検討した。さらに、新たに同定したMYHにおけるスプライス部位の遺伝子多型は、発がんに関与する可能性が示唆されたが、胃がんとは関連はみられなかった。その他、身体的な症状により日本の救急医療施設に収容された患者の薬物乱用率の測定に貢献した。

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