臨床疫学研究部では、ヒト集団を対象に疫学・生物統計学の手法を用いて、

1. 発がんにおける食品・栄養素の関連
2. 発がんにおける環境要因と遺伝的感受性との関連
3. がんの予防法の評価などに関する研究

を行っている。


具体的には、10万人規模の地域住民を対象に、長期追跡調査により食品・栄養素摂取など生活習慣との関連を検証するコホート研究、当部で開発した食品摂取頻度調査票についての妥当性研究ブラジル在住の日系移民などを対象に遺伝子指標を取り入れた症例対照研究、胃がん死亡率が高い地域における効果的な予防法に関する研究
などのプロジェクトが進行している。


コホート研究においては、７年間の追跡を終了した5.5万人から、1,500名の死亡と1,400のがん罹患を確認すると共に、５年目を経過した5.5万人に半定量的食品摂取頻度調査票を配布し、4.3万人より回答を得て、栄養素摂取量を計算し各個人に報告した。またコホート研究対象地域において、地域レベルの食品の摂取頻度と胃がん死亡率との関連や、個人の血中抗酸化微量栄養素濃度に及ぼす喫煙や飲酒の影響、地域の食事がラット肝臓の薬物代謝酵素や抗酸化酵素に及ぼす影響などについて基礎的検討を行った。


ブラジルにおける研究については、日系人と非日系人各々に対して実施した胃がんの症例対照研究のデータ解析を行い、食品摂取
頻度と血清ﾍﾟｼﾉｰｹﾞﾝ・抗ﾍﾘｺﾊﾞｸﾀｰ･ﾋﾟﾛﾘ抗体との関連を検討した。胃がん予防研究については、胃がん高率地域の慢性萎縮性胃炎保有者に対する、ﾋﾞﾀﾐﾝＣとβｰｶﾛﾃﾝ投与による胃がん予防効果を評価するための無作為比較試験の２年目を経過した。約600名の萎縮性胃炎保有者を抽出し、研究への参加要請を行い、約440名より参加の同意を得て研究が進行していたが、米国でのβｰｶﾛﾃﾝを用いた研究に関するＮＣＩの発表に対応し、βｰｶﾛﾃﾝ の使用を中止した。現在、ﾋﾞﾀﾐﾝＣを用いた試験に約300名が継続参加している。