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年報

平成12年度

多目的コホートによるがん・循環器疾患の疫学研究

全国11保健所管内約14万人の地域住民を対象に、生活習慣とがんなど成人病発症との関連を検討する目的で、長期追跡調査(1990年開始)を、がん情報研究部がん発生情報研究室、国立循環器病センター集団検診部などとの共同研究として行っている。累積で6,000名の死亡、5,000のがん罹患を確認すると共に、10年を経過した約5万人に対するアンケート調査を実施し、84%より回収した、また、ベースライン調査で用いた食物摂取頻度調査からの栄養素摂取量の推定がいくつかの栄養素については妥当であること、アンケートによる自己申告では、実際のがん既往歴の36%程度しか把握できないこと、血糖値と HbAlc値により宮古地域の糖尿病有病率の推定値などを明らかにした。

胃がん高危険度群に対する有効な予防方法の開発研究

胃がん死亡率の高い地域に居住する住民を対象に、胃がんの効果的な予防方法を開発する目的で、2つの無作為化比比較試験(ビタミンC投与による胃粘膜萎縮改善効果の評価、食事関連危険因子の軽減を目指した効果的な食事指導システムの開発・評価)を行っている。今年度は、各々、6年目(10年計画)と3年(3年計画)を進行させた。また、β-カロテン(0,3,30mg/day)とビタミンC(0,50,100mg/day)の3ヶ月連続投与による血中濃度の推移と他の抗酸化栄養素への影響を明らかにした。

ブラジル日系移民を対象としたがんの疫学研究

サンパウロ市在住の日系移民を対象に、移住による環境・生活習慣の変化が、がんの発生に及ぼす影響を検討するため様々な疫学研究を行っている。今年度は、日系人及び非日系人の胃がんの症例対照研究から、日系人におけるペプシノーゲンI値、非日系人におけるニトロソ化合物代謝酵素の遺伝子多型が、各々、胃がんと関連することなどを明らかにし、胃発がんにおける人種差の存在を示した。

栄養疫学研究のための基礎研究

BMI値が高い人ほど、総エネルギー摂取量を過少申告する傾向にあること、高脂血症の改善を目的として開発した食事改善システムは、その効果が1年程度持続することなどを明らかにした。

分子疫学研究のための基礎研究

コークス炉作業者の白血球DNA付加体量を曝露指標とする場合は、代謝酵素の遺伝子多型を考慮する必要があること、DNAの酸化的損傷の修復酵素の1つhOGG1遺伝子の末梢血mRNA発現量に個人差があり、疫学研究への応用可能性があることを明らかにした。

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