トップ >内分泌かく乱化学 >内分泌かく乱化学物質と人への健康影響との関連-疫学研究からの知見-(H16年度報告) >まとめ >各論 -まとめ-

内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する研究

各論 -まとめ-

内分泌かく乱物質の研究影響に関する検討かい
中間報告書 追補その2
平成17年3月31日
(厚生労働省医薬品食品局化学物質安全対策室 編)

(下線部が2001年以降の新たな知見)

 

[発がん影響]

  • 日本人でのエビデンスはない。
  • 複数のコホート内症例対照研究の成績より、有機塩素系化合物(PCBや主な有機塩素系農薬)による乳がんリスクの上昇はなさそうである。しかしながら、層別解析(閉経前か閉経後か、遺伝子多型など)で関連が強く出る可能性を示唆する報告があり、影響を受けやすいサブグループの存在が今後の検討課題である。
  • 複数のコホート研究の成績より、DESの経口投与による20~30%程度の乳がんリスクの上昇がありそうである。
  • その他の化学物質と乳がんとの関連については、疫学研究の成績は少なく、関連性について言及出来ない。
  • DESと卵巣がんとの関連については複数のコホート研究の結果が一致しておらず、卵巣がんのリスクである可能性は低そうである。
  • その他の化学物質と卵巣がんとの関連については、疫学研究の成績はほとんど存在せず、関連性について言及出来ない。
  • アトラジンと前立腺がんとの関連は2つのコホート研究の結果が一致しておらず、関連性について判断できない。
  • その他の化学物質と前立腺がんとの関連については、疫学研究の成績は少なく、関連性について言及出来ない。
  • その他の内分泌系の影響を受ける部位のがん(子宮体部、精巣、甲状腺)との関連については、疫学研究の成績はほとんど存在せず、関連性について言及出来ない。

 

[甲状腺機能への影響]

  • 複数の横断面研究の成績からは、PCB高度暴露者において甲状腺機能の低下をもたらす可能性が示唆されており、より質の高い疫学研究による検証が必要である。
  • 比較的低濃度のPCB暴露による乳児の甲状腺機能の低下を示唆するデータがあるが、否定するものもあり、いまだ一致した結論は出ていない。
  • HCBとの関連については複数の報告があるが、多くが横断面研究であり、関連性について判断できない。
  • その他の化学物質との関連については、疫学研究の成績は少なく、関連性について言及出来ない。

 

[器官形成への影響]

  • 子宮内DES暴露と尿道下裂との関連が、最近のオランダのコホート研究で示されているが、その他の報告はなく、関連性について判断できない。
  • 最近の1件のコホート内症例対照研究の成績からは、母親の血清中DDEと尿道下裂・停留精巣との関連は否定的であるが、他のデータがなく関連性について判断できない。
  • 出生前PCB暴露と停留精巣との関連がみられなかったという最近のコホート研究からの報告があるが、他にデータがなく関連性について判断できない。
  • その他の化学物質との関連については、疫学研究の成績はほとんど存在せず、関連性について言及出来ない。

 

[小児神経発達への影響]

  • 有機塩素化合物に関するコホート研究の追跡結果では、出生前暴露と児の神経発達等との間には負の関連性が見られる報告が多いが、一致した見解が得られていない。
  • アジアにおけるコホート研究は台湾における「油症」研究の追跡調査しか行われておらず、日本人でのデータはない。

 

[生殖機能への影響]

  • 精子数低下については、化学物質の高濃度暴露群で精子の質の低下があるとする報告が増えているが、内分泌かく乱作用によるものかについての判断は困難である。一般集団での報告は少ない。
  • 子宮内膜症との関連については、疫学研究の成績は一致しておらず、関連性について判断できない。

 

[免疫機能への影響]

  • PCB暴露とアレルギー性疾患の罹患の関連については、複数のコホート研究の結果が一致しておらず、関連性について判断できない。
上に戻る