日本におけるがんの家族歴がある者の割合
本研究事業(NC-CCAPH)では、6つの国立高度専門医療研究センターの公衆衛生・予防医学分野の研究者が協働して、日本人の疾病予防と健康寿命延伸のための研究を行っています。これまで、がんの家族歴(両親あるいは兄弟姉妹にがんになった方がいること)とがん罹患リスクについての研究は日本でもなされてきましたが、がんの家族歴の有無そのものを、日本人について詳しく調べた研究はありませんでした。そこで、本研究では、NC-CCAPHに参加するコホート研究のうち、7つのコホート研究のデータを用いて、がんの家族歴の有無の分布を調べました(Sci Rep. 2023 Feb 22;13(1):3128)。
すべてのがんおよび部位別のがんについて、全体および性別、年齢、出生年代の層別に、がんの家族歴がある者の割合(%)を調べました。
すると、研究対象者の35.67%が、がんの家族歴を有し、その割合は年齢とともに増加していました(15~39歳で10.51%、70歳代で47.11%)。また、1929年より前に生まれた群から1960年代に生まれた群まで、出生年代が新しくなるほど増加し、その後20年間は減少していました(図)。さらに、性別では、女性(34.32%)は一貫して男性(28.75%)よりも高い割合でした。
部位別のがんについては、胃がん(11.97%)が最も多く、次いで大腸がん、肺がん(ともに5.75%)、前立腺がん(4.37%)、乳がん(3.43%)、肝臓がん(3.05%)でした(図)。感染症と関連するがん腫の胃がん・肝臓がんの家族歴が、欧米の先行研究と比較して多い結果でした。
米国において大腸がん、肺がん、乳がん、膵臓がん、子宮頸がんなどでは、家族歴のある検診対象者向けの検診プログラムが強調されています。いっぽうで、日本の対策型検診(組織型検診)ガイドラインではがんの家族歴評価については言及されておらず、任意型検診で言及されているのは前立腺がん検診のみです。
本研究では、参加者のほぼ3人に1人ががんの家族歴を有しており、日本における早期かつ的を絞ったがん検診サービスの重要性を強調する結果でした。