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科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

がん予防法の提示 2026年5月26日改訂版

日本人のためのがん予防法

 

2026年5月26日改訂版

 

日本人の2人に1人が一生のうちに一度はがんを経験するとされ、がんは誰にとっても身近な病気となっています。がんの発生には、遺伝的な体質や生活環境など個人では変えることができない要因が関わる一方で、生活習慣が影響することも明らかになっています。生活習慣の改善で必ずしもがんを予防できるわけではありませんが、がんのリスクを減らすために、がんと関わる生活習慣を無理のない範囲で見直すことが大切です。日常生活の中で自分にできそうな改善を一つみつけてみませんか?

この研究班は、現時点で科学的に妥当な研究方法で明らかにされている知見をもとに、日本人のためのがん予防法を提示します。がんの発生要因を正しく理解し、生活習慣の改善を通じてリスクを減らすための実践的な指針を示すことで、より多くの人が健康な生活を送るための一助となることを目的としています。

具体的には、WHO国際がん研究機関(IARC: International Agency for Research on Cancer)や世界がん研究基金および米国がん研究協会(WCRF/AICR: World Cancer Research Fund/ American Institute for Cancer Research)などによる国際的なエビデンス評価に加え、日本人を対象とした研究成果を踏まえ、生活習慣の改善および感染症の予防を推奨します。

この内容は、現時点で判明している範囲に基づく目安であり、新しい研究の成果が積み重なることにより、内容が修正されたり、項目が追加あるいは削除されたりする可能性があります。

なお、各項目についての一般の方向けの解説は、がん情報サービス(国立がん研究センター)の「科学的根拠に基づくがん予防法(科学的根拠に基づくがん予防法:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ])」でもご覧になることができます。

 

(2026年5月26日の主な改訂点)
以下について内容の更新を行いました。
・体重の推奨を更新
・喫煙と閉経前乳がんに対して、本研究班の評価を”ほぼ確実”に更新。
・肥満と子宮内膜がんに対して、本研究班の評価を”ほぼ確実”に更新。
・肥満と胃がん(噴門部)に対して、本研究班の評価を”可能性あり”に更新。
・やせと肺がんに対して、本研究班の評価を”可能性あり”と記載。
・やせと食道がん(扁平上皮癌)に対して、本研究班の評価を”可能性あり”と記載。
・国民健康・栄養調査、日本人の食事摂取基準についての記載を更新。
・身長と大腸がんおよび結腸がんに対して、本研究班の評価を”確実”に更新。
・身長と直腸がんに対して、本研究班の評価を”可能性あり”に更新。
・「健康づくりのための運動指針」から「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」についての記載に変更。

(2024年8月19日の主な改訂点)
以下について内容の更新を行いました。
・飲酒の推奨を更新
・加工肉と赤肉について、※その他の項目に移動

(2022年8月3日の主な改訂版)
以下について内容の更新を行いました。
・喫煙と大腸がんに対して、本研究班の評価を”確実”に更新。
・飲酒と男性の胃、閉経前女性の乳がんに対して、本研究班の評価を”ほぼ確実"に更新。
・肥満と肝がんに対して、本研究班の評価を”確実”に更新。
・身長と大腸がんおよび結腸がんに対して、本研究班の評価を”ほぼ確実”と記載。
・HCV肝炎治療と肝がんに対して、本研究班の評価を”確実”と記載。
・ピロリ菌除菌治療と胃がんに対して、本研究班の評価を”確実”と記載。
・HPVワクチンと子宮頸がんに対して、本研究班の評価を”確実”と記載。
・IARC、WCRF International/AICR の評価を更新。
・国民健康・栄養調査についての記載を更新。

(2017年11月10日)
がん情報サービスのホームページ更新に合わせて、リンク先についての記載を更新。

(2017年8月1日の主な改訂点)
・喫煙と急性骨髄性白血病に対して、本研究班の評価を"ほぼ確実"と記載。
・IARC、WCRF International/AICRの評価を更新。
・「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」の評価結果を追加。
・国民健康・栄養調査についての記載を更新。

  

科学的根拠に基づくがん予防法5+1


たばこ >>

 

 たばこは吸わない

 他人のたばこの煙を避ける

 


お酒 >>

 飲酒をひかえる


食生活
 >>

 

 減塩する

 野菜や果物不足にならないようにする

 熱い飲み物や食べ物は冷ましてからとる

 


身体活動 
>>

 日常生活を活動的に過ごす


体重 >>

 体重(BMI)を適切な範囲内にする


感染 
>>

 

 感染の検査や予防接種を受ける

  • 肝炎ウイルス:感染の有無を検査し、感染している場合は治療を受ける
  • ヘリコバクター・ピロリ:感染の有無を検査し、感染している場合は除菌を検討する
  • ヒトパピローマウイルス:小学校6年~高校1年相当の女子は、ワクチンの定期接種を受ける

 

 

 1)各項目解説

推奨1

たばこ

たばこは吸わない

他人のたばこの煙を避ける

 

目標

喫煙しない。 

たばこを吸っている人は禁煙をする。

たばこの煙を周囲に広げない、他人のたばこの煙を避ける。

 

能動喫煙

【国際評価の現状】

IARCは、喫煙は、肺がんだけでなく、口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、大腸、膵臓、肝臓、胆道、腎臓、尿路、膀胱、子宮頸部、鼻腔、副鼻腔、卵巣のがん及び骨髄性白血病に対して、「発がん性に関するエビデンスが十分にある」、乳がんに対して「発がん性に関する証拠が限定的」と分類しています(List of Classifications by cancer site, IARC Monographs)。また、禁煙した人では、吸い続けた人と比べて、口腔、喉頭、食道、胃、肺、膀胱、子宮頸部のがんのリスクが低くなることが"確実"と評価されています(IARC 2007)。これらのがんの多くで、禁煙期間が長くなるほどリスクが低くなることも示されています。

【日本人を対象とした疫学研究の系統的レビューと統合解析】

日本人を対象とした疫学研究を系統的にレビューした結果、喫煙によりがん全体の罹患リスクが高くなることが示されました(Inoue et al. Jpn J Clin Oncol 2005)。部位別では、食道(Oze et al. Jpn J Clin Oncol 2012)、肝臓(Tanaka et al. Jpn J Clin Oncol 2006)、胃(Nishino et al. Jpn J Clin Oncol 2006)、膵臓(Matsuo et al. Jpn J Clin Oncol 2011)、大腸(Mizoue et al. Jpn J Clin Oncol 2006)、頭頸部(Koyanagi et al. Jpn J Clin Oncol 2016)、肺(Wakai et al. Jpn J Clin Oncol 2006)、膀胱(Masaoka et al. Jpn J Clin Oncol 2016)、乳房(Nagata et al. Jpn J Clin Oncol 2006)、子宮頸部(Sugawara et al. Jpn J Clin Oncol 2019)について、喫煙により罹患リスクが高くなることが示されています。

研究班では、国内の5つのコホート研究結果のメタ解析から、非喫煙者に対する喫煙者のがん全体の罹患リスクは、約1.5倍(男性:1.6倍、女性:1.3倍)と推計しました(Inoue et al. Jpn J Clin Oncol 2005)。さらに、9つのコホート研究のプール解析を実施し、喫煙は少量であってもがん死亡のリスクを有意に増加させ、喫煙量の増加に応じてリスクが段階的に増加することが分かりました(Inoue-Choi et al. Int J Epidemiol 2022)。一方で、禁煙をするとがんになるリスクは徐々に低下し、20年ほど経過すると非喫煙者とほぼ同等になることが示されています(Saito et al. Cancer Epidemiol 2017)。

部位別では、国内の疫学研究結果のメタ解析から、非喫煙者と比べて喫煙者では、肺がん罹患のリスクが約3~4倍(Wakai et al. Jpn J Clin Oncol 2006)、胃がんで約1.2~1.8倍(Nishino et al. Jpn J Clin Oncol 2006)、子宮頸がんで約2倍(Sugawara et al. Jpn J Clin Oncol 2019)になると推計されています。また、コホート研究のプール解析から、生涯非飲酒・非喫煙の者に比べ、生涯非飲酒の喫煙経験者では、男性の食道がんのリスクが約3倍に増加し、さらに飲酒と組み合わさることでリスクが約9倍まで高まることが示されました(Oze et al. Cancer Med 2019)。このような喫煙と飲酒の組み合わせ効果は、咽頭がんや喉頭がんといった頭頚部がんでも確認されています(Tsuge et al. Int J Epidemiol 2026)。また、非喫煙者と比べた喫煙者のリスクは、膵がんで約1.6~1.8倍(Koyanagi et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2019)、膀胱がんで約1.9~2.3倍(Masaoka et al. J Epidemiol 2023)で、いずれも喫煙量の増加に応じてリスクが増加しました。また、生涯非喫煙者と比べた喫煙経験者のリスクは、頭頚部がんで約1.8~2.1倍(Tsuge et al. Int J Epidemiol 2026)、大腸がんで約1.2~1.5倍(Akter et al. Int J Cancer 2021)と推計されています。急性骨髄性白血病(Ugai et al. Hematol Oncol 2018)や乳がん(Wada et al. Int J Epidemiol 2024)においても、喫煙によりリスクが高くなる可能性が示されています。

研究班によるリスク評価と推奨

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、喫煙により、がん全体のリスクが高くなることは"確実である"と評価しています。部位別では、食道、肝臓、胃、膵臓、子宮頸部、頭頸部、膀胱、大腸に対しては"確実である"、急性骨髄性白血病、閉経前女性の乳がんに対しては"ほぼ確実である"、乳がん全体に対しては"可能性がある"と評価しています。その他の部位については、現時点では根拠が“不十分である”と結論づけています。2016年に厚生労働省より発行された「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」においても、本研究班で“確実である”と評価されたがんにおいて、喫煙との因果関係を支持する科学的根拠が十分であるとする「レベル1」と評価されています。喫煙は、がんだけでなく、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)や脳卒中などの循環器疾患、肺炎や慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患の原因になることも知られています。

このように、喫煙はがんのリスク増加に密接に関与しており、喫煙しないことがベストといえます。たばこを吸っている人は禁煙を検討しましょう。現在の日本では、一定の条件を満たせば、多くの喫煙者が禁煙治療を健康保険で受けることができます。ニコチンパッチなどの禁煙補助薬やカウンセリングに加えて、禁煙治療用アプリとCOチェッカーも保険診療で利用できます。オンライン診療も認められ、より手軽に、より確実に禁煙へ取り組める環境が整っています。禁煙の方法については、厚生労働省の「禁煙支援マニュアル(第二版)増補改訂版」も参考になります。

加熱式たばこや電子たばこによる健康への影響も心配されています。加熱式たばこはニコチンを含むため依存性があり、禁煙に役立つとする科学的根拠も十分ではありません。電子たばこは、魅力的なフレーバーやデザインを用いたプロモーションにより若者の使用が増加していることが問題となっています。

【対策の効果】

喫煙ががんの罹患および死亡に寄与する割合は、男性でそれぞれ23.6%、 29.8%、女性で4.0%、4.7%と試算されています(Inoue et al. Glob Health Med. 2022)。言い換えると、集団全体が喫煙していなければ、これだけのがんが予防可能であったと考えられます。喫煙は、男性ではがんへの寄与割合が最も高い要因であり、女性では感染に次いで第2位の要因と位置づけられました。

2023年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上の喫煙率は、男性25.6%、女性6.9%と推計されています。喫煙対策は、がん以外にも、脳卒中、心臓病、糖尿病、呼吸器疾患など多くの生活習慣病のリスクを減らすことから、大きな効果が期待できます。日本人の喫煙率を更に減少させることが、特に、男性において有効と考えられます。

 

受動喫煙

【国際評価の現状】

受動喫煙は、肺がんの確実なリスク因子とされています(Secretan et al. Lancet Oncol 2009)。受動喫煙と肺がんとの関係を調べた55の疫学研究結果のメタ解析では、非喫煙女性の肺がんのリスクは、夫からの受動喫煙がない場合に比べて、受動喫煙がある場合に約1.3倍になることが報告されています(Taylor et al. Int J Epidemiol 2007)。さらに、受動喫煙は、喉頭がん、咽頭がん、副鼻腔がん、乳がん(閉経前)に加え、胎児発育(低出生体重児、早産)、乳幼児突然死症候群、呼吸器疾患(急性下気道感染(小児)、喘息、慢性呼吸器症状(小児)、眼球・鼻粘膜炎症、内耳感染)、心疾患(心疾患死亡、急性・慢性心不全、血管変性)のリスクを高くする可能性が指摘されています(California Environmental Protection Agency 2005, U.S.Department of Health and Human Services 2006)。

【日本人を対象とした疫学研究の系統的レビューと統合解析】

非喫煙の日本人女性を対象としたコホート研究において、夫が非喫煙者である場合と比べて、夫が喫煙者である場合に肺腺がんのリスクが約2倍(肺がん全体のリスクは約1.3倍)になることが示されました(Kurahashi et al. Int J Cancer 2008)。また、閉経前の非喫煙女性において、家庭あるいは職場など公共の場所で受動喫煙を受けていたグループの乳がんリスクは、受動喫煙のないグループと比べて約2.6倍高いことが示されています(Hanaoka et al. Int J Cancer 2005)。さらに、国内の9つの疫学研究の結果を統合したメタ解析で、非喫煙者において、受動喫煙のある人は、受動喫煙がない人と比較して、肺がんのリスクが約1.3倍になることが示されています(Hori et al. Jpn J Clin Oncol)。一方で、9つのコホート研究のプール解析では、受動喫煙による乳がんリスクへの影響は明確ではありませんでした(Wada et al. Int J Epidemiol 2024)。

研究班によるリスク評価と推奨

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、受動喫煙により、肺がんのリスクが高くなることが"確実である"、乳がんにおいては"可能性がある"と評価しています。その他の部位については、現時点では根拠が“不十分である”と結論づけています。2016年9月に厚生労働省より発行された「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」でも、肺がんにおいて、受動喫煙との因果関係を支持する科学的証拠が十分であるとする「レベル1」と評価されています。また、鼻腔・副鼻腔がん、乳がんについては、科学的証拠は因果関係を示唆しているが十分ではないとする「レベル2」と評価されています。

このように、たばこは、喫煙者だけでなく周囲の人のがんリスクにも影響を与える可能性があるため、たばこの煙を周囲に広げないこと、他人のたばこの煙を避けることが重要です。たばこの煙を避けることは、心臓病、呼吸器疾患、副鼻腔がん、胎児発育(低出生体重児など)のリスクを低下させる効果があることも知られています。

【対策の効果】

受動喫煙ががんの罹患および死亡に寄与する割合は、男性でそれぞれ0.2%、0.3%、女性で0.9%、1.3%と試算されています(Inoue et al. Glob Health Med. 2022)。

2023年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上で受動喫煙に「ほぼ毎日」さらされている割合は、家庭で約7.6%、職場で約5.4%、学校で約0.1%、飲食店で約0.2%、遊技場で約0.2%、行政機関で約0.1%、医療機関で約0.0%、公共交通機関で約0.2%、路上で約1.5%と推計されています。これらの割合は、非喫煙者より喫煙者で高く、喫煙者では、家庭で約21.6%、職場で約22.8%と受動喫煙の機会がより多いことが示されています。

近年、公共施設を全面禁煙とし、違反に罰則を設ける法規制が、欧米やアジアの国・地域で広く導入されるようになっています。日本でも、2020年4月に、「健康増進法の一部を改正する法律(受動喫煙対策)」が施行されたのを受けて、多数の者が利用する施設は原則禁煙となりました。これに伴い、学校、児童福祉施設、病院、診療所、行政機関の庁舎などでは敷地内禁煙が義務付けられ、その他の施設についても屋内禁煙が原則となっています。こうした取り組みにより、他人のたばこの煙にさらされることのない“煙ゼロ”の社会の実現が期待されています。

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推奨2

お酒

飲酒はひかえる

 

目標

がんリスクを減らすためには、お酒を飲まない。

飲まない人、飲めない人にお酒を無理に勧めないようにしましょう。

 

飲酒

【国際評価の現状】

WCRF/AICRの評価で、飲酒により口腔、咽頭、喉頭、食道(扁平上皮がん)、肝臓、大腸、乳房(閉経後)のがんのリスクが高くなることが"確実"とされています。さらに、胃、乳房(閉経前)のがんのリスクが高くなることも"ほぼ確実"とされています(WCRF/AICR 2018)。一方、腎臓がんに関しては、1日の飲酒量がエタノール摂取量に換算して30 gまでであればリスクが低くなることが“ほぼ確実”と判定されています。IARCの評価では、口腔、咽頭、喉頭、食道(扁平上皮癌)、肝臓、大腸、乳房(女性)のがんについて、「発がん性に関するエビデンスが十分にある」と評価されています(List of Classifications by cancer site, IARC Monographs)。刊行論文のメタ解析と世界疾病負荷研究(Global burden of disease Study)の結果から、飲酒が非感染性疾患死亡に寄与する割合は3.4%と試算されています。特にがん、高血圧、出血性脳卒中、心房細動を含む心疾患、脂肪肝・アルコール性肝炎・肝硬変などの肝疾患、膵炎では関連が強く見られます(Parry et al. Addiction 2011)。

【日本人を対象とした研究の系統的レビューと統合解析】

日本人を対象とした疫学研究を系統的にレビューした結果、飲酒によりがん全体の罹患リスクが高まることが示されました(Inoue et al. Jpn J Clin Oncol 2007)。部位別には、肝臓(Tanaka et al. Jpn J Clin Oncol 2008)、大腸(Mizoue et al. Jpn J Clin Oncol 2006)、食道(Oze et al. Jpn J Clin Oncol 2011)、頭頚部がん、男性の胃がん(Shimazu et al. Jpn J Clin Oncol 2008)、閉経前女性の乳がん(Nagata et al. Jpn J Clin Oncol 2007)ついて、飲酒によりリスクが高くなる可能性が示されています。肺がん(Wakai et al. Jpn J Clin Oncol 2007) など、その他の部位については、飲酒との関連は明確ではありませんでした。

日本人男性を対象としたコホート研究で、1日あたりの平均アルコール摂取量(純エタノール量)が46g以上の飲酒でがん全体のリスクが約40%、69g以上の飲酒では約60%高くなることが示されています(Inoue et al. Br J Cancer 2005)。アルコール約20~25 gは、日本酒なら1合、ビールならロング缶1本、焼酎なら2/3合、ワインならグラス2杯、ウィスキーやブランデーならダブル1杯にあたります。本研究班では、6つのコホート研究のプール解析を実施し、1日あたりのアルコール摂取量が92g以上の飲酒により、男性のがん死亡のリスクが約24%高くなることを示しました(Inoue et al. J Epidemiol Community Health 2012)。

部位別でみると、生涯非喫煙・非飲酒者と比べて、生涯非喫煙の飲酒経験者では、男性の食道がんリスクが約3倍に増加し、さらに喫煙と組み合わさることでリスクが約9倍にまで高まることが示されました(Oze et al. Cancer Med 2019)。このような喫煙と飲酒の組み合わせ効果は、咽頭がんや喉頭がんといった頭頚部がんでも確認されています(Tsuge et al. Int J Epidemiol 2026)。大腸がんでは、男性では、非飲酒者と比べて、1日あたりのアルコール摂取量が23~45.9g、46~68.9g、69~91.9g、92g以上の飲酒者で、罹患リスクがそれぞれ約1.4倍、2.0倍、2.2倍、3.0倍と段階的に増加し、女性でも1日23g以上の摂取で約1.6倍のリスク増加がみられました(Mizoue et al. Am J Epidemiol 2008)。同様に、肝がんでも飲酒量に応じたリスク増加がみられ、男性でそれぞれ約1.1倍, 1.1倍, 1.8倍, 1.7倍、女性では約3.6倍のリスク増加が示されています(Shimazu et al. Int J Can 2011)。胃がんについても同様に、男性でそれぞれ約1.0倍、 1.2倍、 1.4倍、2.0倍、女性では約1.4倍のリスク増加が示されています(Tamura et al. Cancer Sci 2022)。また、生涯非飲酒者と比べた飲酒経験者の頭頚部がんのリスクは約1.2~1.8倍と推計されました(Tsuge et al. Int J Epidemiol 2026)。乳がんでは、非飲酒に比べて1日23g以上の摂取において、閉経前の女性で約1.9倍、閉経後で約1.1倍のリスク増加が示されています(Iwase et al. Int J Cancer 2021)。一方で、飲酒と膀胱がんリスクとの間には有意な関連は認められませんでした(Masaoka et al. J Epidemiol 2020)。

研究班によるリスク評価と推奨

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、飲酒によりがん全体のリスクが上がることを"確実である"と評価しました。部位別では、食道、肝臓、大腸、頭頚部のがんについて飲酒によるリスク増加が"確実である"、男性の胃がん、閉経前女性の乳がんについて"ほぼ確実である"と評価しています。その他の部位については、現時点では根拠が“不十分である”と結論づけています。

このように、飲酒は多くのがんのリスク増加と関連し、一部のがんでは飲酒量が多いほどリスクが段階的に増加し、安全域といえる飲酒量が存在しないと考えられます。したがって、がんになるリスクを減らすためには、飲酒しないことがベストといえます。また、体質の違いにより、お酒をたくさん飲んでも平気な人、少量で顔が赤くなる人、ほとんど飲めない人などがいます。お酒を飲むときの体調によっても反応は変化します。飲まない人や飲めない人に無理にお酒を勧めないようにしましょう。

【対策の効果】

飲酒ががんの罹患および死亡に寄与する割合は、男性でそれぞれ8.3%、8.8%、女性で3.5%、3.0%と試算されています(2005年の国民健康・栄養調査:飲酒割合男性71.7%、女性36.9%に基づいて推計)(Inoue et al. Glob Health Med 2022, Hirabayashi et al. GHM Open 2021)。飲酒は、男女共に喫煙・感染に次いで寄与の高い要因と位置付けられます。

2023年の国民健康・栄養調査によると、健康日本21で定める生活習慣病のリスクを高める量(1日当たりの純アルコール摂取量が男性で40g以上、女性で20g以上)を飲酒している人の割合は、男性14.1%、女性9.5%と推計されています。その割合は、男性では40歳代、女性では50歳代が最も高く、それぞれ23.6%、14.6%です。がんリスクは大量飲酒によって顕著に増加するため、飲酒対策では、国民全体の飲酒率の減少に加え、過度な飲酒者の割合を減らすことも有効と考えられます。

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推奨3

食生活

減塩する

野菜や果物不足にならないようにする

熱い飲み物や食べ物は冷ましてからとる

 

目標

食塩摂取量を1日あたり、男性7.5 g、女性6.5 g未満にする。 

1日に野菜350g、果物200gを目標(成人)に多めに摂る。

熱い飲み物や食べ物はよく冷ましてからとる。

 

食生活

【国際評価の現状】

塩蔵食品の摂取により胃がんのリスクが高くなることは、国際的にも"ほぼ確実"と評価されています(WCRF/AICR 2018)。食塩の摂取が高血圧の主要な原因であることも、INTERSALTやEPIC-Norfolkなどの大規模疫学研究で示されています(Intersalt Cooperative Research Group. BMJ 1988, Khaw et al. Am J Clin Nutr 2004)。そのため、減塩により血圧の関連する心疾患のリスクが低くなります。他にも、脳卒中、左室肥大、腎疾患などのリスクが食塩の摂取により高くなることが示されています(He et al. Prog Cardiovasc Dis 2010)。

野菜・果物については、非でんぷん質野菜(いも類、とうもろこし、かぼちゃ等を除く野菜)の摂取により、消化器系がん全体のリスクが低くなることが"ほぼ確実"、口腔、鼻咽頭、喉頭、食道、肺(喫煙経験者)、乳房、膀胱のがんリスクが低くなることが“限定的に示唆される”と評価されています(WCRF/AICR 2018)。また、果物の摂取により、食道(扁平上皮癌)、肺(喫煙経験者)、膀胱のがんリスクが低くなることが“限定的に示唆される”と評価されています。また、非でんぷん質野菜の摂取により大腸がんのリスクが、果物の摂取により胃がんと大腸がんのリスクが高くなることも“限定的に示唆”されています。食習慣とがんおよび循環器疾患リスクとの関連についての観察研究をレビューした結果によると、地中海式食事や、野菜・果物が豊富な食事により心疾患および一部のがんのリスクが低くなることが示されています(Tyrovolas et al. Maturitas 2010)。

WCRF /AICRは、南米で非常に高温で飲む習慣のあるマテ茶を飲用すると食道がんのリスクが高くなることは“ほぼ確実”と評価しています(WCRF /AICR 2016)。ただし、リスクを高めるのはマテ茶の成分ではなく、金属の吸い口から吸い込むように非常に高温で飲むため、食道粘膜が障害されることが原因と考えられています。IARCも、65℃以上の「非常に熱い飲み物」は食道がんに対してGroup 2A(ほぼ確実にヒトへの発がん性あり)と分類しています。

 

食塩・高塩分食品

【日本人を対象とした研究の系統的レビュー】

日本人を対象としたコホート研究において、食塩摂取量の多い男性で胃がんのリスクが高くなることが示されています。また、男女ともに、いくら、塩辛、練りうになどの塩分濃度の高い食品を多くとる人で胃がんのリスクが高くなる傾向がみられました(Tsugane et al. Br J Cancer 2004)。また、漬物、塩魚、塩蔵魚卵などの塩蔵食品を多く摂ると、がん全体、また、胃がんのリスクが高くなることも示されています(Takachi et al. Am J Clin Nutr 2010)。

研究班によるリスク評価と推奨

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、食塩・塩蔵食品の摂取により胃がんのリスクが上がることは"ほぼ確実である"と評価しました。

胃がん予防の観点から、食塩・高塩分食品の摂取量を抑えることが推奨されます。調味料を控えて味付けを濃くしない、汁物や麺類の汁は全部飲み切らないようにするなど、できるところから減塩を心がけましょう。食品の加工や保存の際に、食塩を使わない工夫を取り入れることも大切です。減塩は、高血圧を予防し、循環器疾患のリスクを低下させることも知られています。

厚生労働省は「日本人の食事摂取基準」を策定しており、2025年版では1日あたりの食塩摂取量の目標を男性7.5g未満、女性6.5g未満と設定しています。一方、世界保健機関(WHO)は、1日あたりの食塩摂取量を5g未満にすることを推奨し、世界では多くの人が過剰に食塩を摂取していると指摘しています。

【対策の効果】

食塩摂取ががん罹患および死亡に寄与する割合は、男性でそれぞれ3.0%、2.5%、女性で1.6%、 1.7%と試算されています(Inoue et al. Glob Health Med. 2022)。

2023年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上の食塩摂取量の平均値は1日あたり男性10.7 g、女性9.1 gです。減塩対策は血圧を下げ、脳卒中や心臓病のリスクを減らす効果もあることから、日本人の平均食塩摂取量を可能な限り低下させ、「日本人の食事摂取基準」における目標量の達成者を増やしていくことが有効と考えられます。

 

野菜・果物

【日本人を対象とした研究の系統的レビューと統合解析】

日本人を対象とした疫学研究を系統的にレビューした結果、野菜・果物の摂取量が多い程、食道がんおよび胃がんのリスクが低くなることが示されています。また、果物の摂取量が多いほど肺がんのリスクが低くなる可能性も示唆されています(Wakai et al. Jpn J Clin Oncol 2011)。一方、大腸がん(Kashino et al. Jpn J Clin Oncol 2015)など、その他の部位については、野菜・果物摂取との関連は明確ではありませんでした。

本研究班では、6つのコホート研究のプール解析を実施した結果、野菜と果物の摂取とがん全体の罹患リスクに有意な関連はみられませんでした(Takachi et al. J Epidemiol 2017)。部位別では、緑黄色野菜の摂取量が最も少ない群に比べて、摂取量が最も多い群で胃がんのリスクが低下する傾向がみられています(Shimazu et al. Ann Oncol 2014)。また、適度に果物を摂取している男性において、肺がんのリスク低下がみとめられました(Wakai et al. Cancer Sci 2015)。

研究班によるリスク評価と推奨

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、野菜の摂取による食道がんのリスク低下を"ほぼ確実である"、胃がんのリスク低下を"可能性がある"と評価しました。また、果物の摂取による食道がんのリスク低下を"ほぼ確実である"、胃がん、肺がんのリスク低下を"可能性がある"、と評価しています。全がん、その他の部位については、現時点では根拠が“不十分である”と結論づけています。また、野菜および果物の摂取により脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患のリスクが低下することも知られています。

WCRF/AICRは、野菜と果物を合わせて少なくとも400 g摂取することを推奨しています。一方、国民全体の健康づくりを進める上で、厚生労働省が策定している「健康日本21(第三次)」では、野菜と果物の十分な摂取を重要項目として掲げ、1日あたりの摂取目標量を野菜350g、果物200gと設定しています。

【対策の効果】

野菜・果物摂取ががん罹患・死亡に寄与する割合は、男性でそれぞれ野菜0.3%, 0.2%、果物0.1%, 0.1%、女性で野菜0.1%, 0.1%、果物0.02%, 0.01%と試算されます(Ishihara et al. GHM open. 2021)。

2023年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上の野菜・果物の1日あたりの平均摂取量はそれぞれ256.0 g、92.9 gとなっています。野菜・果物摂取は、多くの生活習慣病を予防する効果もあるので、不足している者の割合を減少させることが重要と考えられます。

 

熱い飲食物

研究班によるリスク評価と推奨

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、熱い飲食物の摂取により食道がんのリスクが高くなることは"ほぼ確実である"と評価しました。飲食物を非常に熱い状態でとることは、食道粘膜を損傷させ炎症を引き起こすことが知られています。飲食物が熱い場合はなるべく冷ましてから摂取するよう心掛けましょう。

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推奨4

身体活動

日常生活を活動的に過ごす

 

目標

成人では、歩行またはそれと同等以上の身体活動を毎日60分以上に加え、息がはずみ汗をかく程度の運動を週に60分以上行う。

高齢者では、歩行またはそれと同等以上の身体活動を毎日40分以上、有酸素運動、筋力、バランス、柔軟性などの運動を週3日以上行う。

 

身体活動

【国際評価の現状】

中等度から強度の身体活動により、大腸(結腸)がんのリスクが低くなることは"確実"、また、閉経後乳がん、子宮体がんのリスクが低くなることは"ほぼ確実"、強度の身体活動により閉経前女性の乳がんのリスクが低くなることは“ほぼ確実”と評価されています(WCRF/AICR 2018)。がん罹患後のがん死亡に対しても、身体活動が予防的に働くことが報告されています。また、アメリカ心臓協会(AHA: American Heart Association)は、心疾患予防のために週当たり150分の中等度の身体活動、または75分の高強度の身体活動を推奨しています。近年は短時間でも身体活動を増やすことの重要性が示されています。

【日本人を対象とした研究の系統的レビュー】

日本人を対象とした疫学研究を系統的にレビューした結果、身体活動量が多いほど、大腸(結腸)がん(Pham et al. Jpn J Clin Oncol 2012)や乳がんのリスクが下がることが示されています。

日本人を対象としたコホート研究では、仕事や運動などからの身体活動量が高くなるほど、がん全体の発生リスクが低くなることが示されています(Inoue et al. Am J Epidemiol 2008)。

研究班によるリスク評価と推奨

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、身体活動により大腸がんのリスクが低くなることを"ほぼ確実である"、乳がんのリスクが低くなることを"可能性がある"と評価しました。その他の部位については、現時点では根拠が“不十分である”と結論づけています。身体活動量が高いとがんのみならず心疾患死亡や死亡全体のリスクも低くなることが示されています(Inoue et al. Ann Epidemiol 2008)。身体活動量を保つことは、健康で長生きするための鍵になりそうです。

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の中で、18〜64歳の成人に対して、歩行またはそれと同等以上の身体活動(3メッツ相当)を毎日60分以上(1日約8,000歩以上)行うことに加え、息がはずみ汗をかく程度の運動を週60分以上行うことを推奨しています。65歳以上の高齢者では、歩行またはそれと同等以上の身体活動を毎日40分以上(1日約6,000歩以上)に加え、有酸素運動、筋力、バランス、柔軟性などの運動を週3日以上行うことが推奨されています。

【対策の効果】

身体活動ががん罹患・死亡に寄与する割合は、男性でそれぞれ1.0%, 0.9%、女性で1.6%, 0.8%と試算されています(Inoue et al. Glob Health Med. 2022)。

2023年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上で運動習慣のある者の割合は、男性36.2%、女性28.6%と推計されています。これまでの国民健康・栄養調査の推移を見ると、1970年代よりエネルギー摂取量が一貫して減少しているにも関わらず、男性ではBMIが上昇傾向にあります。このことから、仕事などでの身体活動量が低下していることが示唆されます。身体活動量を高めることは、糖尿病や循環器疾患など多くの生活習慣病の予防にも効果があるので、特に仕事で十分な身体活動量が得られない人に対して、運動習慣を持つ人の割合を増やすことが有効と考えられます。

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推奨5

体重

体重(BMI)を適切な範囲内にする

 

目標

男性・女性ともにBody Mass Index(BMI)が21~25の範囲になるように体重を管理する。

BMIの求め方 BMI値 = 体重(kg)/身長(m)2

 

体重・身長

【国際評価の現状】 

肥満があると、食道(腺癌)、膵臓、肝臓、大腸、乳房(閉経後)、子宮体部、腎臓の各部位のがんのリスクが高くなることは"確実"と評価されています(WCRF/AICR 2018)。西ヨーロッパと北米を中心とした57の前向き研究(約90万人)の統合解析では、全死亡リスクがBMI 22.5-25を底とするU字形の関連が示されています。これによると、BMI 25以上の過体重が脈管系疾患、がんに寄与する割合は、米国でそれぞれ29%、8%、英国で23%と6%と試算されています(Prospective Studies Collaboration Lancet 2009)。また、アジアの11の前向き研究(約100万人)の統合解析では、日本、中国、韓国を含む東アジアにおいて、全死亡リスクがBMI 22.6-27.5を底とするU字形の関連が示され、がん死亡、心血管系疾患死亡、その他の死因による死亡でも同様の傾向がみられました。一方、インドとバングラデシュでは、低BMIでリスク増加がみられたものの、高BMIではリスクの増加はみられず、同じアジアでも国によって結果が異なることが示されました(Zheng et al. N Engl J Med 2011)。 

高身長については、大腸、乳房、卵巣のがんのリスクが高くなることが"確実"、膵臓、子宮体部、前立腺、腎臓、皮膚がん(メラノーマ)のリスクが高くなることは"ほぼ確実"と評価されています(WCRF/AICR 2018)。刊行論文のメタ解析において、身長が5 cm増加するごとに大腸がんのリスクは男性で1.04倍、女性で1.06倍に高まることが示されています(WCRF/AICR, colorectal cancer report 2017)。

【日本人を対象とした研究の系統的レビューと統合解析】

日本人を対象とした疫学研究を系統的にレビューした結果、がん全体のリスクは、男性ではBMI 18.5未満のやせで、女性ではBMI 30以上の肥満で高くなることが示されました。また、BMIが高い人では、肝がん(Tanaka et al. Jpn J Clin Oncol 2012)、閉経後の乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、膵がん(男性)、胃がん(噴門部)、閉経前の乳がんのリスクが高くなることも示されました。一方、肺がん、食道がん(扁平上皮癌)では、痩せにおいてリスクが高くなることが示されています。

日本のコホート研究において、BMIが21未満の男性で、がん全体の罹患リスクが高くなることが示されています(Inoue et al. Cancer Causes Control 2004)。また、別のコホート研究では、BMIが27.5以上の女性で、がんの罹患リスクの増加が認められました(Kuriyama et al. Int J Cancer 2005)。本研究班では、国内の7つのコホート研究のプール解析を実施し、BMIが23~25の人に比べ、男性ではBMIが21未満で、女性ではBMIが30以上で、がん死亡のリスクが有意に高くなることを示しました。(Sasazuki et al. J Epidemiol 2011)。欧米人でみられるような肥満とがんとの強い関連は、日本人ではあまりみられませんでした。

部位別では、国内の8つのコホート研究のプール解析で、BMIが高いほど大腸がんのリスクが段階的に増加(BMIが1上昇あたり約2~3%増加)することが示されています(Matsuo et al. Ann Oncol 2012)。閉経後の乳がんについても、BMIが高いほどリスクが増加(BMIが1上昇あたり約5~6%増加)することが確認されています(Wada et al. Ann Oncol 2014)。一方で、閉経前の乳がんについては、欧米で見られる「BMIが高いほどリスクが低くなる」という傾向はみられず、BMIが23~25と比べて、BMIが30以上でリスクが約2.3倍高いことが示されています。また、同様のプール解析にて、BMIが23~25の男性に比べ、BMIが30以上の男性で膵がんのリスクが1.7倍上がることや(Koyanagi et al. J Epidemiol 2018)、非肥満者(BMI25未満)に比べ肥満者(BMI25以上)では、噴門部胃がんのリスクが1.2倍上がることも示されました(Koyanagi et al. Cancer Sci 2023)。一方、肺がん(Kawai et al. Cancer Sci 2024)や食道がん(扁平上皮癌)(Koyanagi et al. Cancer Sci 2023)では、BMIが低いほどリスクが高くなることが示されました。

身長に関しては、日本人を対象とした疫学研究を系統的にレビューした結果、高身長の人で大腸(結腸)がんのリスクが高いことが示されています(Shrestha et al. Jpn J Clin Oncol 2022)。さらに、国内の7つのコホート研究のプール解析でも、同様の関連が確認されています(Shrestha et al. J Epidemiol 2024)。

研究班によるリスク評価と推奨

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、男性ではBMI 18.5未満のやせで、女性ではBMI 30以上の肥満において、がん全体のリスクが高くなる"可能性がある"”と評価しました。部位別では、肥満により肝がんおよび閉経後乳がんのリスクが高くなることは"確実である"と評価しました。また、大腸がん、子宮内膜がんに対してはリスク増加が"ほぼ確実である"、膵がん(男性)、胃がん(噴門部)、閉経前乳がんではリスクが高くなる”可能性がある”と評価しました。一方、痩せについては、肺がん、食道がん(扁平上皮癌)のリスクが高くなる"可能性がある"と評価しています。

また、高身長があると大腸(結腸)がんのリスクが高くなることを"確実である"と評価しています。

やせによる低栄養は、免疫力を低下させて感染症にかかりやすくなるほか、血管の壁がもろくなり、脳出血を起こしやすくなることも知られています。一方で、肥満は糖尿病や高血圧、脂質代謝異常症などのリスクを増加させることが分かっています。そのため、やせすぎず太りすぎず、適切な範囲内で体重を管理することが重要です。その目安としては、BMIが21~25の範囲が推奨されています。

【対策の効果】

日本人男女の各年代における平均BMIは25未満のため、BMI 25以上を基準とした体重過多(過体重および肥満)ががん罹患・死亡に寄与する割合は男女とも0%と試算されます。一方、WHOが提案するアジア人の基準である過体重(BMI23以上)・肥満(BMI25以上)を用いて試算すると、がん罹患・死亡に寄与する割合は男性でそれぞれ1.0%、1.0%、女性で0.3%、0.3% となりました(Inoue et al. Glob Health Med 2022, Hirabayashi et al. GHM Open 2021)。

2023年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上でBMIが25以上の割合は、男性31.5%、女性21.1%、BMI30以上は、男性4.7%、女性4.4%と推計されています。一方、BMIが20以下の割合は、男性12.6%、女性27.7%、BMI18.5未満は、男性4.4%、女性12.0%でした。がんのリスクはBMIが30を超えてから顕著に高くなるため、該当の人が少ない日本人での肥満対策によるがん予防効果はそれほど大きくありません。一方、BMIが21未満からがんリスクの増加が明確になっており、がん予防の観点ではやせ対策がより重要となる可能性があります。ただし、肥満対策は糖尿病や高血圧などの予防に、やせ対策は感染症や脳出血の予防に役立つことが示されています。したがって、がんに限らず、全体的な疾病予防や健康維持の観点から、肥満とやせの双方の割合を減少させることが重要です。

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推奨6

感染

感染の検査や予防接種を受ける

 

目標

肝炎ウイルスの検査を受け、感染している場合は専門医に相談し治療を受ける。

胃がん検診を定期的に受ける。機会があればピロリ菌の検査を受ける。除菌については医師とよく相談して決める。

・子宮頸がん検診を定期的に受ける。小学校6年~高校1年相当の女子は、子宮頸がんワクチンの定期接種を受ける。

 

感染

【国際評価の現状】

IARCは、B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)を肝がんの原因として、HCVを非ホジキンリンパ腫の原因として、それぞれGroup 1 (ヒトへの発がん性あり)に分類しています。さらに、ヒトパピローマウイルス(HPV)16型は子宮頸部、外陰、膣、陰茎、肛門、口腔、中咽頭、扁桃のがん、ピロリ菌(Helicobacter pylori)は非噴門部胃がん、胃MALTリンパ腫に対して、Group 1と評価されています。その他にも、EBウイルス(EBV: Epstein-Barr virus)、 カポジ肉腫ヘルペスウイルス(Kaposi’s sarcoma herpes virus)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1: Human immunodeficiency virus type 1)、 ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1: Human T-cell lymphotrophic virus type 1)、肝吸虫(Clonorchis sinensis、Opisthorchis viverrini)、 住血吸虫(Schistosoma haematobium)が、Group 1に位置づけられています(Bouvard et al. Lancet Oncol 2009)。

 

B型・C型肝炎ウイルス(HBV・HCV)と肝がん

【日本人を対象とした研究の系統的レビュー】

献血者約15万人のコホート研究において、HBV(Hepatitis B virus)またはHCV(Hepatitis C virus)が単独で陽性の場合、両方とも陰性の人と比べて、肝がんのリスクがそれぞれ約102倍、126倍になり、さらに、HBV・HCV両者が陽性の場合にはそのリスクが約572倍に上ることが報告されています(Tanaka et al. Int J Cancer 2004)。また、一般住民を対象としたコホート研究では、HBV・HCVいずれも陰性の人と比べて、HBV単独陽性者の肝がんリスクは約16倍、HCV単独陽性者では約36倍、両者が陽性の場合には約47倍になることが報告されています(Ishiguro et al. Cancer Lett 2011)。また、肝がん患者の約69%がHCV単独陽性、約9%がHBV単独陽性、2%がHBV・HCVの重複感染であったと報告されています(Ishiguro et al. Eur J Cancer Prev 2009)。本研究班では、HCV治療に関する26の疫学研究を系統的にレビューした結果、ウイルス排除や肝がんリスクの低減にインターフェロン治療が有効であることを示しています(Yamagiwa et al. Sci Rep 2023)。

研究班によるリスク評価と推奨

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、HBV・HCV感染により肝がんリスクが高くなることは"確実である"と評価しました。また、C型肝炎ウイルス治療により肝がんのリスクが低下することが"確実である"と評価しています。

HBV・HCVは主に血液を介して感染し、HBVでは性的接触によっても感染します。出産時の母子感染、輸血や血液製剤の使用、感染リスクが十分に認識されていなかった時代の医療行為などが主な感染ルートとして考えられています。医療従事者では、針刺し事故による感染の恐れもあります。輸血や血液製剤の使用などに思いあたることがなくても、昔受けた医療行為などにより知らないうちに感染している可能性もあります。地域の保健所や医療機関で、一度は肝炎ウイルスの検査を受けておくことが勧められます(検査の日時や費用は各施設によって異なります)。陽性の場合は、さらに詳しい検査や治療を受けるために肝臓の専門医を受診しましょう。肝炎治療には、ウイルスを駆除したり、肝臓の炎症を抑えるための治療が用いられます。ウイルス駆除の治療は、従来のインターフェロン療法から、C型肝炎では直接作用型抗ウイルス薬(DAA)、B型肝炎では核酸アナログ製剤が主流となっています。これらの治療に対して、国による医療費助成制度も設けられています(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kanen/index.html、http://www.kanen.ncgm.go.jp/ )。HBV陽性(HBs抗原陽性)の妊婦は、国の「B型肝炎母子感染防止事業」によって、出産時の赤ちゃんへの感染を防ぐための公的な予防対策を受けられます。また、予防接種法に基づく定期接種として、生後1歳までの乳児を対象に、HBVワクチンが公費で接種されています。

 

ピロリ菌と胃がん

【日本人を対象とした研究の系統的レビューと統合解析】

ある日本のコホート内症例対照研究では、胃がん患者では、胃がんのない人に比べて、ピロリ菌陽性率が約5倍であることが報告されています(Sasazuki et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2006)。本研究班では、日本人を対象とした疫学研究を系統的にレビューした結果、ピロリ菌の感染があると、胃がんのリスクが高くなることが示されました。また、国内の19のコホート研究や無作為化比較試験の結果を統合したメタ解析では、ピロリ菌の除菌治療を行うことで、胃がんのリスクが有意に低下することを示しています(Lin et al. Jpn J Clin Oncol 2021)。

研究班によるリスク評価と推奨

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、ピロリ菌感染により胃がんリスクが高くなることは"確実である"と評価しました。また、ピロリ菌の除菌により胃がんのリスクが低くなることは"確実である"と評価しています。

日本人では中高年のピロリ菌感染率が高く、胃がん患者だけでなく、胃がんのない人にも多くの感染者がいることが報告されています。ピロリ菌は糞便中に排泄されますが、感染の多くは幼少期(おおむね5歳頃まで)に起こると考えられています。特に、家庭内で箸やスプーンを共用したり、口移しで食べ物を与えたりすることが、主な感染経路とされています。戦後の衛生環境の改善により、若い世代での感染率は激減しています。1940年代頃までの出生世代では感染率約70〜80%であるのに対し、それ以降の世代では段階的に低下し、2000年以降の出生世代では10 %未満になっています(Wang et al. Sci Rep 2017)。機会があればピロリ菌感染の検査を受け、感染している場合は除菌を検討しましょう。除菌治療は高い成功率(9割程度)が期待されますが、除菌後に逆流性食道炎を発症することがあるほか、将来的な胃がんの発生リスクが完全になくなるわけではありません。そのため、治療のメリットや注意点について医師とよく相談し、十分に理解したうえで治療を受けることが大切です。除菌後も、定期的に胃内視鏡検査を受けましょう。

 

ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がん

【日本人を対象とした研究の系統的レビュー】

HPV(Human papillomavirus)は多くの場合、自然に排除されますが、再感染を繰り返すこともあります。HPVの持続感染は子宮頚部の細胞に異形成(前がん病変)を引き起こし、子宮頸がんに進展するリスクを高めます。子宮頸がん検診もしくは子宮疾患の治療のために医療機関を受診した約2300名の女性を対象とした研究では、浸潤子宮頸がんの約67%、前がん病変に相当するCIN2–3の約36%に HPV16型または18型の単独感染、あるいは他の型を含む混合感染が認められています(Onuki et al. Cancer Sci 2009)。

研究班によるリスク評価と推奨

研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、HPV感染により子宮頸がんのリスクが高くなることは"確実である"と評価しました。特にHPV16型および18型で一貫した結果が見られています。また、HPVワクチンの接種により子宮頸がんのリスクが低くなることが"確実である"と評価しています。

HPVは主に性的接触によって感染し、性交経験のある女性の多くが生涯に一度は感染を経験するとされています。ある調査では、子宮頸がん検診(細胞診)で異常がない女性でも、15~19歳で35.9%、20~29歳で28.9%にHPVが検出されたことが報告されており(Onuki et al. Cancer Sci 2009)、性交渉の活発な年代ではHPV感染はごく一般的に見られるものといえます。HPV感染を予防するために、小学校6年から高校1年相当の女子は、予防接種法に基づく定期接種として、公費によりHPVワクチンを接種することができます。

子宮頸がんは他のがんと異なり、20歳代の若い世代から発症がみられます。定期的に子宮頸がん検診を受けることは、前がん病変やがんの早期発見・早期治療のために有効です。

 

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)と成人T細胞白血病リンパ腫

成人T細胞白血病リンパ腫は、HTLV-1というウイルスが、白血球の中のT細胞に感染し、その感染細胞が癌化して増殖することで発症します。

HTLV-1感染者は、九州・沖縄地方に多いことが知られています。感染経路は主に母乳ですが、輸血や性的接触による感染もあります。妊婦健診でHTLV 1感染が判明した場合は、母乳から子どもへの感染を防ぐために、人工栄養や短期母乳などの母乳制限が推奨されます。これらの対策により、母乳による母子感染は大きく減少しています。

【対策の効果】

上述のB型・C型肝炎ウイルス、HPV、ピロリ菌、HTLV-1に、EBウイルスを加えた感染ががん罹患・死亡に寄与する割合は、男性でそれぞれ18.1%、18.5%、女性で14.7%、16.5%と試算されています(Inoue et al. Glob Health Med. 2022)。感染は、男性では喫煙に次いで第2位、女性では最も高いがんの原因と位置づけられています。

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※その他の項目

・コーヒー・緑茶摂取

本研究班では、8つのコホート研究のプール解析を実施した結果、コーヒー摂取とがん全体の死亡に有意な関連はみられませんでした (Abe et al. Prev Med 2019)。一方、女性において、緑茶の摂取が1日1杯未満の人に比べ、1日1~4杯飲む人では、がん死亡のリスクが有意に低下しました(Abe et al. Eur J Epidemiol 2019)。また、男女共に1日5杯以上の緑茶摂取によって全死亡、循環器疾患死亡のリスクが有意に低下する傾向がみられました。

部位別では、日本人を対象とした疫学研究を系統的にレビューした結果、コーヒーの摂取が多い人で肝がんのリスクが低くなることが示されました(Tanaka et al. Jpn J Clin Oncol. 2019)。そのリスクはコーヒー摂取が1日1杯増える毎に約0.72倍になることが推計されました。一方、緑茶の摂取と肝がんリスクには有意な関連はみられませんでした。また、同様の系統的レビューの結果、女性では、緑茶の摂取により胃がんリスクが低下する可能性があることが示されました(Sasazuki et al. Jpn J Clin Oncol 2012)。6つのコホート研究のプール解析では、緑茶の摂取が1日1杯未満の人に比べ、1日5杯以上飲む人では、胃がんの罹患リスクが約0.72倍であることが示されました(Inoue et al. Gut 2008)。大腸がんに関しては、系統的レビューで、コーヒー摂取との一貫した関連はみとめられませんでした(Akter et al. Jpn J Clin Oncol 2016)。8つのコホート研究のプール解析でも、大腸がん全体との有意な関連はみられませんでしたが、コーヒーを1日に3杯以上飲む女性で結腸がんのリスク低下が示されました(Kashino et al. Int J Cancer 2018)。

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、コーヒーの摂取により肝がんのリスクが低下することは"ほぼ確実である"と評価しています。また、女性の結腸がん、子宮内膜癌についてもリスクが低くなる"可能性がある"と評価しました。緑茶摂取については、女性の胃がんのリスクが低くなる"可能性がある"と評価しています。

加工肉と赤肉の摂取

赤肉や加工肉は、鶏肉などに比べて動物性脂肪の含有量が高く、がんの発生に関わる化合物や成分を含むことが知られています。IARCは、加工肉をGroup 1 (ヒトへの発がん性あり)、赤肉はGroup 2A(ほぼ確実にヒトへの発がん性あり)と評価しています。WCRF/AICRでは、ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉の摂取により大腸がんリスクが高くなることは"確実"、赤肉(牛・豚・羊など、鶏肉・魚は含まない)の摂取により大腸がんのリスクが高くなることは"ほぼ確実"と評価されています。また、加工肉の摂取により胃がんリスクが高くなることが“限定的に示唆される”と評価されています。国際的には、赤肉の摂取を1週間に500gを超えないようにすることが推奨されています。

日本人を対象とした疫学研究を系統的にレビューした結果、赤肉、加工肉の摂取により大腸がんのリスクが上がる可能性が示されました(Pham et al. Jpn J Clin Oncol 2014)。さらに、6つのコホート研究のプール解析を実施した結果、牛肉摂取量が一番少ないグループと比較して、一番多いグループで、男性の下行結腸がん、女性の結腸がんのリスクが高いことを示しました(Islam et al. Cancer Sci 2019)。女性では豚肉の摂取頻度が多いと下行結腸がんリスクが高く、加工肉の摂取頻度が多いと結腸がんリスクが高くなることも示されています。

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、女性において、ハム、ソーセージなどの加工肉および赤肉の摂取により大腸がんのリスクが高くなる"可能性がある"と評価しています。

・授乳と乳がん

授乳期間が長いと母親の乳がんリスクが低くなることが示唆されています。国際的にも授乳による乳がん予防効果は"確実"とされています(WCRF/AICR 2018)。

日本人を対象とした疫学研究を系統的にレビューした結果、授乳経験があると乳がんリスクが低くなることが示されました(Nagata et al. Jpn J Clin Oncol 2012)。一方で、9つのコホート研究のプール解析で授乳経験と乳がんリスクに有意な関連はみられませんでしたが、出産経験がある、出産回数が多い女性ではリスクが低くなり、初産年齢が高い女性ではリスクが高くなりました(Takauchi et al. Cancer Med 2021)。また、閉経年齢が高いほどリスクが高くなることが示されています。

本研究班では、日本人を対象とした研究に基づいて、授乳には乳がんリスクを減らす効果がある"可能性がある"と判定しました。授乳に加え、初経年齢が遅いこと、閉経年齢が若いこと、出産経験が多いこと、初産年齢が若いことが、乳がんのリスクを低下させることも知られています。

 

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がん予防法利用のための予備知識

・食品や栄養素の摂取量と発がんリスクとの関係は、必ずしも単純には考えられない

良いものは多くとるほど効果が上がるという直線的な関連になるとは限りません。この点は、特に栄養補助剤(サプリメント)の服用に際して注意が必要です。

・欧米の研究だけに基づく情報の場合には、日本人ではリスクやその意味合いが変わる可能性がある。

例えば、日本人ではかかりやすいがんの種類が違ったり、肥満の割合が少なかったりという特徴があります。その違いを踏まえたうえで、日本人ではどうなのかを解釈する必要があります。

・特定のがんを予防するための生活習慣が、必ずしも健康的とはいえない。

例えば、肥満に関連するがんや糖尿病を予防するにはやせればやせるほど効果的ですが、やせ過ぎてその他の部位のがんや感染症のリスクが高くならないよう、総合的な健康に配慮し、バランスをとる必要があります。

・ある人にとって最適な予防法は、常に同じというわけではない。

がん予防のための予防戦略は、ひとりひとりの体質、生活習慣やライフステージなど、さまざまな条件との兼ね合いの中で、あらためてその位置づけを問い直さなくてはなりません。

・生活習慣は、個人だけの責任ではない。

生活習慣は周りの環境や社会的背景に大きく影響されます。家や職場の状況、経済的な背景などを総合的に捉え、行動変容が起こりやすい環境を整えることが有効と考えられます。

科学的根拠に基づくがん予防法5+1は、「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」の成果を中心に、病気の予防や健康づくりに関する国の方針に基づいてまとめられたものです。数値目標としてあげた値は、がんのみならず広く生活習慣全体への影響、逆効果の可能性、既存の指針などを総合的に考慮して設定されています。がんは多数の要因が長い時間をかけて複雑に重なり合って発生してくるものであり、特定の値を境にリスクが急激に上がったり下がったりすることはありません。したがって、これらの目標値は「少しでもはずれたら意味がない」というものではなく、がん予防を実践する際のひとつの目安として捉えてください。

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