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科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

日本人のがん予防に対する意識調査 I

BMC Public Health 2006; 6: 2

 

  • 全国の成人男女2000人に対するオムニバス調査の一部として実施
  • H15のテーマ:がんの原因と予防法
  • 有効回答率68%

 

Q: もし、この世の中から「○○○な人(こと)」がいなくなったら、日本人に発生しているがんのうち、何パーセントくらいのがんを防ぐことができると思いますか

 

Q: あなたは何パーセントぐらいのがんが、生まれながらに遺伝子によって運命づけられていると思いますか

20%以上であると考える人が過半数で、そのうち50%以上もの高い割合であると考える人が全体の約5分の1もいらっしゃいました。

がん発生に関わる遺伝的要因の大きさを知る目的で行われた北欧の「双子の研究」があります。約4万5000組の双子を28臓器のがんについて追跡調査して、そのうち11臓器のがんについて遺伝的要因、双子が共有する環境的要因と共有してない環境的要因による割合を推定した研究です。これによると、双子の片方ががんになった場合に、もう片方が75歳までに同じがんを発病するリスクは一卵性で11-18%、二卵性で3-9%にすぎませんでした。この集団で遺伝的要因の割合が確かに大きかったのは、前立腺がん(42%)、大腸がん(35%)、乳がん(27%)の三部位にとどまりました(N Engl J Med 2000; 343:78-85)。

Q: あなたは生活習慣を改善することで、がんになる確率は何パーセント位下がると思いますか

生活習慣改善で予防できるがんの割合は50%未満と答えた人が過半数で、70%以上と答えた人は1割に満たないという状況でした。

実際には、生活習慣改善ではどうにもならない、宿命的ながんの割合というものは意外に少なく、禁煙や節酒、節塩など、生活習慣を変えたり工夫したりする努力で予防できるものと考えられています。

参考:ハーバード大学による推計: 米国におけるがんの原因(円グラフ)

米国で1996年に発表されたがんの原因の割合です。「たばこ」30%、「食事」30%、「運動不足」5%、「職業」5%、「遺伝」5%、「ウイルス・細菌」5%、「その他」20%でした。
注:日本では、ウイルスによるがんリスクが米国より高いなど、割合が少し異なると考えられます。しかし、たばこや食事などの生活習慣によるがんリスクが上位であることは、日本でも同じことでしょう。
Harvard Report on Cancer Prevention Vol.1: Causes of human cancer. Cancer Causes Control 1996; 7 Suppl 1:S3-59

さまざまな研究結果から、日本で発生するがんのほとんどはいわゆる生活習慣病であり、たばこや食事などを改善することによって予防できると考えられています。Q1ではそれぞれの原因によってがんになる割合の数値が全体的に高かったのですが、特に「細菌やウイルス」「環境ホルモン」などは調査時期にテレビ等のメディアでよく取り上げられていたので、その影響を反映したのでしょう。実際には、「たばこ」と同じくらい第八位であった「食事」ががんリスクを高くすることや、遺伝的ながんよりは生活習慣の改善によって防ぐことのできるがんの割合が高いことなどをしっかりと認識していただく必要があるとわかりました。

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