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科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

喫煙と子宮頸がん

日本の疫学研究に基づく関連性の評価

日本の研究結果から、日本人のがん予防を考える

「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」研究班では、主要なリスク要因について、がん全般および肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんなどのリスクとの関連を調べた国内の疫学研究を収集し、個々の研究についての関連の強さの認識と科学的根拠としての信頼性の総合評価を行っています(研究班ホームページ)。

関連の強さについて、「強い」「中等度」「弱い」「なし」の4段階で個々の研究を評価し、研究班のメンバーによる総合的な判断によって、科学的根拠としての信頼性について「確実」「おそらく確実」「可能性がある」「不十分」の4段階で評価するシステムとしました。その際、動物実験や作用機序に関する評価については、既存の機関が行ったレビューを参考にすることにしました。さらに、関連が「確実」あるいは「おそらく確実」と判定された場合には、メタアナリシスの手法を用いた定量評価を行い、その影響の大きさについての指標を推定することにしました。 その研究の一環として、このたび、喫煙と子宮頸がんについての評価の結果を専門誌に報告しました(Jpn J Clin Oncol. 2018 Nov 8. doi: 10.1093/jjco/hyy158. [Epub ahead of print])。

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研究の背景

国際がん研究機関(IARC)による評価では、喫煙は発がん因子としてグループ1に分類されています。また、喫煙と子宮頸がんの因果関係については、国際的には多くの疫学研究があり、喫煙が子宮頸がんの罹患や死亡リスクを増加させることが報告されています。しかし、欧米と比べて喫煙割合や性ホルモン関連要因が異なる日本人女性において喫煙と子宮頸がんのリスクの関連性は異なっている可能性があります。そこで、研究では、これまでに報告された複数の疫学研究の結果から、日本人女性における喫煙と子宮頸がんリスクとの関連をまとめました。

 

喫煙によって子宮頸がんのリスクが確実に高くなる

本研究では、2018年までに喫煙と子宮頸がんの関連について報告された疫学研究の中から、一定の評価基準により、コホート研究2件と症例対照研究3件を選択しました。これら5件の研究の全てが、喫煙により子宮頸がんリスクが有意に増加することを報告していました。また、コホート研究2件および症例対照研究2件では、喫煙と子宮頸がんのリスクとの間に量反応関係がみられました。

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さらに、喫煙による影響を推定するため、各研究を統合してメタアナリシスを行ったところ、非喫煙者に対する喫煙者の相対リスクは2.03 (95% 信頼区間1.49‐2.57)となり、喫煙者の子宮頸がんのリスクは統計的に有意に高いことを示しました。

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喫煙が子宮頸がんの発癌に関与する生物学的メカニズムは、たばこに含まれる多くの発癌物質が直接的に子宮頸がん発症に影響を及ぼす可能性が示唆されています。加えて、これらの発癌物質は免疫機能を低下させる可能性があるため、HPVの持続感染を引き起こし、発癌リスクを高めているのかもしれません。

 

研究の限界について

各研究で喫煙本数などをカテゴリーにまとめて子宮頸がんのリスクを提示していますが、まとめ方が研究間で異なっていたため、量反応関係を見ることができませんでした。また、パートナーからの受動喫煙やHPV感染などの重大な潜在的交絡因子に対して十分な調整が行われていないことがあげられます。

 

結論

今回のレビュー結果および生物学的機序を総合的に検討した上で、日本人において喫煙により子宮頸がんのリスクは確実に上昇するという結論になりました。

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