科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究
日本人における緑茶摂取と全死亡および疾患別死亡リスク
日本のコホート研究のプール解析
日本人における緑茶摂取と全死亡および疾患別死亡リスク
茶は、世界的にも水に次いで2番目に多く摂取されています。お茶には様々な種類がありますが、その中でも緑茶は日本を含む東アジアにおいて広く摂取されており、日本では50%以上の成人が日常的に緑茶を飲んでいます。これまでに行われた研究の多くは、緑茶摂取による死亡全体のリスク低下を報告しており、脳卒中などの心血管疾患死亡リスクについても同様の傾向を示しています。しかし、がん死亡リスクについては結果に一貫性がなく、確かな結論に至っていません。そこで今回、私たちは緑茶摂取による日本人の全死亡および疾患別死亡リスクへの影響について、日本の8つのコホート研究(JCC; Japan cohort consortium)の結果を統合し、まとめて結果を提示する「プール解析」という手法を用いて研究を行いました。(Eur J Epidemiol, 34 (10), 917-926)
日本の8つのコホート研究(JPHC-IとJPHC-IIの多目的コホート研究、JACC研究、宮城県コホート研究、大崎国保コホート研究、三府県宮城コホート研究、三府県愛知コホート研究、三府県大阪コホート研究)における男性14万4,750人、女性16万8,631人が解析の対象となりました。17年間の平均追跡期間中に5万2,943人が死亡し、うち、がん1万9,495人、心疾患7,321人、脳血管疾患6,387人、呼吸器疾患3,490人、傷害・事故3,382人という内訳となっていました。
1日5杯程度の緑茶摂取で全死亡、心疾患死亡、脳血管疾患死亡リスクが減少
男女共に、緑茶5杯以上/日の摂取によって死亡全体のリスクが有意に低下する傾向が認められました。同様のリスク低下が心疾患死亡および脳血管疾患死亡でも男女ともに認められました。また、女性でのみ1-2杯/日および3-4杯/日のカテゴリーでがんによる死亡リスクが有意に低下していました。同じく女性でのみ、3-4杯/日および5杯以上/日のカテゴリーで呼吸器疾患死亡リスクが有意に低下する傾向が認められました。
これらの結果から、日本人では、緑茶高摂取は特に心疾患や脳血管疾患死亡のリスク低下につながるかもしれません。