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科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

コーヒー・緑茶摂取と肝がんリスク

日本の疫学研究に基づく関連性の評価

コーヒー・緑茶摂取と肝がんリスク

 

コーヒーおよび緑茶は日本人において広く飲まれており、これまでの疫学研究の結果から、摂取によってがんのリスクが低下するという報告がなされていることから、近年注目されています。世界がん研究基金(World Cancer Research Fund: WCRF)による最新のレポートでは、コーヒーの高摂取はほぼ確実に肝がんを予防すると結論づけられています。日本人において、これらの飲料摂取と肝がんリスクとの関連を評価するため、本研究では、これまで日本で報告されているコーヒー・緑茶と肝がんリスクに関する疫学研究の系統的レビューによるエビデンス評価を行いました。(Jpn J Clin Oncol, 49 (10), 972-984

MEDLINEおよび医中誌のデータベースを用いて、一定の基準により日本人におけるコーヒー摂取及び緑茶摂取と肝がんリスクに関する疫学研究を検索し、コーヒー摂取については、4件の前向きコホート研究、4件の症例対照研究を、また、緑茶摂取と肝がんリスクについては6件の前向きコホート研究、1件の症例対照研究を特定しました。

 

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図1. コーヒー摂取と肝がんリスクの関連についての系統的レビューとメタ・アナリシスの結果

コーヒー摂取については、4件すべてのコホート研究において、コーヒー摂取と肝がんリスクとの間に弱い~強い負の関連が、症例対照研究においては中等度~強い負の関連が報告されていました(図1)。それらの研究のメタ・アナリシスにより、1日あたりのコーヒー摂取が1杯増す毎の肝がんリスクは0.72 倍(95%信頼区間: 0.66–0.79)となり、コーヒー高摂取による肝がんリスクが統計学的に有意に低いことが示されました。

 

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図2. 緑茶摂取と肝がんリスクの関連についての系統的レビューとメタ・アナリシスの結果

一方、緑茶摂取については、2件のコホート研究では肝がん罹患との間に弱い~中等度の負の関連を報告していますが、4件の研究では関連が見られませんでした。一方で、1件の症例対照研究は強い正の関連を報告していました。メタ・アナリシスの結果から、1日あたりの緑茶摂取が1杯増す毎の肝がんリスクが0.99倍 (95%信頼区間: 0.97–1.01)となり、緑茶摂取と肝がんリスクとに有意な関連はありませんでした。

 

結論

今回のレビュー結果および生物学的機序を総合的に検討した上で、日本人においてコーヒー高摂取により肝がんリスクが低下することは「ほぼ確実」である一方で、緑茶が肝がんリスクと関連するという証拠は不十分である、という結論になりました。

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