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科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

喫煙・飲酒の組み合わせと食道がん罹患リスクの関係

日本のコホート研究のプール解析

喫煙・飲酒の組み合わせと食道がん罹患リスクの関係

  喫煙と飲酒は多くの病気の原因として知られています。食道がんも喫煙と飲酒が主要な原因であることがこれまで世界中で行われた多くの研究で裏付けられています。また、喫煙も飲酒もする人では、どちらか単独の人と比べて食道がんのリスクが非常に大きくなる交互作用という現象があると考えられていますが、交互作用を示せていない研究も多く、十分に証明されてはいない状況でした。通常の交互作用の研究では、その大きさを相乗的(かけ算)スケールでのみ検討します。しかし、本研究ではより小さな交互作用でも検出できるように相加的(足し算)スケールでも交互作用の検討を行いました。また、こうして求めた相加的交互作用を考慮することで、食道がんのどれだけの割合が飲酒や喫煙によって発生したのかを明らかにしました。(Cancer Med, 8 (14), 6414-6425

 この研究に参加したのは日本で行われた大規模コホート研究であるの計8コホート研究です。女性は食道がん罹患率、喫煙割合、飲酒割合がいずれも低く、詳しい検討ができないため除外され、男性のみで解析を行いました。それぞれのコホートで調査開始時の喫煙習慣(たばこを吸ったことがある・ない)、飲酒習慣(お酒を飲む・飲まない)をそれぞれ2段階で評価、また喫煙量(なし、40パックイヤー以下、40パックイヤー超)、1日あたり飲酒量(エタノール換算で23g未満、23g以上46g未満、46g以上)はそれぞれ3段階で評価し、その組合せ毎に食道がんリスクを算出しました。食道がんリスクはCox比例ハザードモデルを用いてコホートごとに算出し、その結果をメタ解析の方法で統合しました。次に、統合したリスクを用いて交互作用の計算を行いました。

【参加したコホート一覧】

多目的コホート研究(JPHC-I, JPHC-II)、JACC研究、大崎国保コホート研究、宮城県コホート研究、三府県宮城コホート研究、三府県愛知コホート研究、高山スタディ

 

喫煙・飲酒の組み合わせと食道がんの関連

 計162,826人の男性を平均12.6年追跡し、954例の食道がんの発生が確認されました。この集団における喫煙率は60.6%、飲酒率は78.5%でした。喫煙も飲酒もしない人を基準として、喫煙者では2.77倍、飲酒者では2.76倍高い食道がんリスクがありました。更に、喫煙も飲酒も両方する人は8.32倍と喫煙と飲酒の組合せにより、食道がんリスクが高くなることがわかりました(図1)。同様に、喫煙量と飲酒量を3段階で評価した場合も、喫煙せず飲酒量23g以下の人に比べ、40パックイヤー超で飲酒量46g以上の人の食道がんリスクは16.8倍と、組合せによってリスクが高くなる効果が確認されました。こうして求めたリスクと喫煙者・飲酒者の割合から、喫煙または飲酒を原因として発生した食道がんの割合を推測する人口寄与危険割合を計算しました。日本人男性の食道がんの81.4%は喫煙または飲酒が原因で発生しており、喫煙は55.4%、飲酒は61.2%の食道がんの原因になっていました。つまり、たばことお酒の両方を止めることで食道がんの約8割を予防できますが、たばこだけ、あるいはお酒だけ止めることでも約6割の食道がんを予防できることがわかりました。

  これらの結果から、喫煙と飲酒はそれぞれ単独で食道がんのリスク要因ですが、合わさることでリスクが増強することがわかりました。そのため、食道がんの予防のためにはたばことお酒の両方を止めることが最も良い方法ですが、せめてどちらか片方を止めるだけでもある程度の予防効果があると考えられます。

 図1 喫煙・飲酒の組み合わせと食道がんリスク

 

 本研究で明らかになった喫煙と飲酒の相加的交互作用とその大きさから、食道がんを予防するための喫煙対策と飲酒対策において、たばことお酒を1つずつあるいは片方だけでも止めることも選択肢となりうることで、個人に適した予防の実践が期待されます。

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