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科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

日本人における肉類摂取と大腸がんリスク

日本のコホート研究のプール解析

日本人における肉類摂取と大腸がんリスク

 

赤肉・加工肉の摂取は大腸がん、特に結腸がんリスクを増加させるとして近年注目されています。2015年には国際がん研究機関(IARC)によって、加工肉が「人に対して発がん性がある(Group1)」、赤肉が「おそらく人に対して発がん性がある(Group2A)」と判定されました。しかし、これまでに行われたレビューおよびメタ解析において、その結果は一貫していません。また、大腸がんは部位によってメカニズムが異なることが知られていますが、これまでに肉類摂取との関連について、充分な検討がなされていませんでした。そこで今回、私たちは日本人における肉類摂取の大腸がんおよび大腸がんの部位別リスクの影響について、日本の6つのコホート研究(JCC; Japan cohort consortium)の結果を統合し、まとめて分析する「プール解析」という手法を用いて、その研究成果を発表しました。(Cancer Sci. 2019;110(11):3603-3614

日本の6つのコホート研究(JPHC-IとJPHC-IIの多目的コホート研究、JACC研究、宮城県コホート研究、大崎国保コホート研究、JPHC5年後調査、高山研究)における356,038人が解析の対象となりました。それぞれのコホート研究で使用している食習慣アンケート調査結果から、牛肉、豚肉、鶏肉、赤肉(牛肉と豚肉)、加工肉(ハムとソーセージ)の摂取を要因として用いました。肉類の摂取頻度に基づく解析には、上記の5研究(合計232,403人)、肉類の摂取量に基づく解析には2研究(合計123,635人)を用いています。前者の頻度による解析では、1,815,617人年追跡期間中に5,694人が大腸がんに罹患し、後者の摂取量による解析では、903,087人年追跡期間中に3550人が大腸がんに罹患しました。

 

牛肉を多く食べる男性、牛肉、豚肉、加工肉を多く食べる女性で結腸がんリスクが上昇

牛肉摂取量が一番低かったグループと比較して一番高かったグループでは、男性で下行結腸がんリスクが高く、女性で結腸がんリスクが高くなっていました(図1)。豚肉摂取についても、摂取頻度が最も少ないグループと比較して最も多いグループ(週3回以上)において、女性では下行結腸がんリスクが高くなっていました。また、加工肉の摂取頻度が最も多いグループ(ほぼ毎日)においても、女性で結腸がんリスクが高くなっていました(図2)。鶏肉については有意な関連は認められませんでした。 

058_1 図1 男性および女性における牛肉摂取量と大腸がんリスク

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図2 女性における豚肉および加工肉の摂取頻度と大腸がんリスク

 

これらの結果から、日本人において、牛肉(男女ともに)、豚肉(女性のみ)、加工肉(女性のみ)の摂取によって結腸がん(主に下行結腸がん)リスクが上昇する可能性があることが示唆されました。

 

この研究について

日本人を対象とした本研究の結果より、赤肉の摂取により結腸がんリスクが上昇することが明らかとなりました。今回の研究では結果に性差が見られたことから、男女別のがんリスクのメカニズムを解明するためにはさらなる研究が必要です。

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