科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究
身長と大腸がんリスク
日本の疫学研究に基づく関連性の評価
身長と大腸がんリスク
「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」研究班では、主要なリスク要因について、がん全般および肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんなどのリスクとの関連を調べた国内の疫学研究を収集し、個々の研究についての関連の強さの確認と科学的根拠としての信頼性の総合評価を行っています。この研究の一環として、身長と大腸がんについての評価をしました。
高身長者はがんリスクが高いことが知られており、大腸がんはそうしたがんのひとつです。世界がん研究基金と米国がん研究協会による最新の報告書では、成人の高身長が大腸がんの高リスクであることは確実である結論づけられています。戦後、日本人の身長の伸びとともに大腸がんが増えたこととも符合します。日本人において身長と大腸がんリスクとの関連を評価するため、本研究では、これまで日本で報告されている疫学研究の系統的レビューによるエビデンス評価を行いました。(Jpn J Clin Oncol, 電子版早期公開)
MEDLINEおよび医中誌のデータベースを用いて、一定の基準により日本人における身長と大腸がんリスクに関する疫学研究を検索し、4件の前向きコホート研究、1件の症例対照研究を特定しました。
図1 身長と大腸がんリスクの関連についての系統的レビューとメタ・アナリシスの結果
男性について調べた5件の研究のうち、1件のコホート研究では高身長と大腸がん(結腸がん)の罹患の強い関連を、また他の1件のコホート研究で大腸がん(結腸がん)の死亡との弱い関連を認めましたが、他の3件の研究では関連は見られませんでした。女性について調べた4件の研究すべてで関連は見られませんでした。
5件の研究を統合して身長と大腸がんに対する相対リスクを推計するメタ・アナリシスを行ったところ、身長が最も低い群(各研究のカットオフの範囲:男性:159~162 cm、女性:148~150cm)に対する最も高い群(各研究のカットオフの範囲:男性:165~170cm、女性:153~157cm)の大腸がんのリスク比は1.21(95%CI:1.07-1.35)でした。部位別にみると、結腸がん(4研究)では1.26(95%CI:1.10-1.45)、直腸がん(2研究)では1.05(95%CI:0.71-1.54)と、結腸がんとの関連が有意に上昇していました。
結論
今回のレビュー結果および生物学的機序を総合的に検討した上で、日本人において高身長が大腸がん(結腸がん)の高いリスクに関連していることについての科学的根拠は「ほぼ確実」であるという結論になりました。