科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究
コーヒー及びお茶の摂取と肺がんリスクとの関連
アジアのコホート研究のプール解析
コーヒー及びお茶の摂取と肺がんリスクとの関連
コーヒーとお茶は一般によく飲まれている主要なカフェイン含有飲料です。これまでの研究では、コーヒーやお茶の摂取と肺がんリスクとの関連は一貫していませんでした。喫煙は肺がんの最も重要なリスク要因ですが、コーヒーやお茶を多く飲む人では喫煙者が多く、喫煙の影響を取り除けていないために、過去の研究ではコーヒーやお茶を多く飲む人で肺がんリスクが増加しているように見えているのかもしれません。
そこで本研究では、参加者110万人以上の17の疫学研究(前向きコホート研究)を用いて、コーヒーやお茶の摂取と肺がんリスクとの関連を検討しました。
コーヒーもお茶も飲まないグループと比較した肺がんリスクは、コーヒーのみを飲むグループでは、現在喫煙者で1.30倍、過去喫煙者で1.49 倍、喫煙したことのない者で1.35倍、 お茶のみを飲むグループでは、現在喫煙者で1.16倍、過去喫煙者で1.10倍、喫煙したことのない者で1.37倍と、コーヒー、お茶いずれの摂取の場合も、喫煙状況に関係なく肺がんリスクが高くなりました。この関連に、性や人種、肺がんの組織型による違いはありませんでした。
この研究で、コーヒーやお茶の多摂取により肺がんリスクが高くなることが示されました。しかし、受動喫煙を含めた喫煙の影響や研究開始後のコーヒー及びお茶摂取量変化の影響は取り除けていないため、コーヒーやお茶多摂取が原因となって肺がんリスクが高くなったというような因果関係があるかどうかを結論づけることは困難と言えます。
Jingjing Zhu et al. Associations of coffee and tea consumption with lung cancer risk (2020)