科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究
禁煙による全死亡率、心血管疾患及び肺がん死亡の低下
アジアにおける16コホート研究のプール解析
禁煙による全死亡率、心血管疾患及び肺がん死亡の低下
アジア人の中高年喫煙者は欧米と比べて喫煙開始が遅いことや1日当たりの喫煙量が少ないこと、禁煙率が低いなどの特徴があります。アジア人における禁煙後の死亡率低下の時間的経過についてはよく分かっていません。そこで本研究ではアジア人を対象として、禁煙後の経過年数別に、全死亡、心血管疾患、肺がんの死亡率がどの程度減少するかを検討しました。
中国、日本、韓国、シンガポール、インド、バングラデシュにて実施された16の前向きコホート研究の709,151人の統合データを統合して分析しました。
平均12年間の追跡期間中に108,287人の死亡が確認されました。心血管疾患死亡は35,658人、肺がん死亡は7,546人でした。
男性では、禁煙年数の増加に伴い、全死亡、心血管疾患、肺がんによる死亡リスクが減少する量反応関係が認められました。喫煙したことがない者と比較して、禁煙した者の全死亡及び心血管疾患死亡リスクは、禁煙後10〜14年経過しても上昇したままでした。肺がん死亡は禁煙後15~19年の間約2倍と高いままで、禁煙前にヘビースモーカー(20パックイヤー(パックイヤー;一日のたばこの箱数×年数)超)であった男性では2.62倍でした。
女性については今まで喫煙をしたことがない者と比べ、禁煙期間が5年以上の場合でも全死亡、心血管疾患死亡、肺がん死亡リスクは高いままでした。このような禁煙と死亡との関連のパターンは各国とも類似していました。
本研究では、禁煙後の全死亡、心血管疾患、肺がんによる死亡リスク減少の量反応関係を明らかにしました。一方で、喫煙の健康影響は、これまで臨床ガイドラインなどで定義されている禁煙から非喫煙者と同程度までリスクが低下する期間である禁煙後20年を超えて続くことが示唆されました。