科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究
日本人における喫煙・禁煙と膀胱がん罹患リスク
日本のコホート研究のプール解析
日本人における喫煙・禁煙と膀胱がん罹患リスク
欧米人を対象とした海外の疫学研究結果より、喫煙は膀胱がんの確立された危険因子であり、禁煙することで膀胱がん罹患リスクを減少させることができると報告されてきました。しかしながら、喫煙・禁煙と膀胱がんの関連について、日本人を対象として行われた疫学研究は限られていました。
そこで、今回、日本の大規模コホート研究 (JPHC-IとJPHC-IIからなる多目的コホート研究、JACC研究、宮城県コホート研究、三府県宮城コホート研究、三府県愛知コホート研究、三府県大阪コホート研究、高山研究、大崎国民健康保険コホート研究、寿命調査) の追跡データを統合してプール解析を行いました。喫煙・禁煙と膀胱がんの関連を検討し、その研究成果を専門誌において発表しました (J Epidemiol. 2022)。
喫煙量が多くなればなるほど、膀胱がん罹患リスクは上昇する。
平均で約13年の追跡期間中に、1261人(男性936人、女性325人)の膀胱がん罹患が確認されました。現在喫煙者では、非喫煙者と比べた膀胱がん罹患リスクは、男性で1.96倍、女性で2.35倍でした。男性では、累積喫煙指数 (1日喫煙箱数×喫煙年数)が多くなればなるほど、膀胱がんの罹患リスクが高くなる量反応関係が認められました (図1、図2)。
図1 喫煙状況と膀胱がん罹患リスクの関連
図2 男性における累積喫煙指数と膀胱がん罹患リスクの関連
禁煙年数が長いほど、膀胱がん罹患リスクは非喫煙者に近づく
男性では、禁煙年数が長いほど、膀胱がん罹患リスクが低くなる量反応関係が認められました。特に、禁煙年数が10年以上のグループでは、その後の膀胱がん罹患リスクに生涯非喫煙者と比べた有意差は認められませんでした (図3)。
図3 男性における禁煙年数と膀胱がん罹患リスクの関連
本研究結果から、日本人でも、喫煙により膀胱がん罹患リスクが高くなることが示され、喫煙と膀胱がんの関連性の根拠が強固なものとなりました。また、日本人男性においては、禁煙年数が長いほど膀胱がんのリスクが低くなることが示され、膀胱がん予防のための禁煙介入を支持する科学的根拠が得られたといえます。