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科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

肥満指数(BMI)と食道がん死亡リスクとの関連

アジアコホートコンソーシアムにおける18つのコホート研究のプール解析

肥満指数(BMI)と食道がん死亡リスクとの関連

食道がんの罹患や死亡リスクは女性よりも男性で高く、欧米と比べて、特に東アジアや東南アフリカで高いことが知られています。先行研究では、アジア人では肥満指数(BMI)が高いと食道がんの罹患リスクが低いことが報告されていますが、死亡のリスクについては明らかではありませんでした。そこで、アジア人を対象とする18の前向きコホート研究を統合して、参加者約84万人のアジア人におけるBMIと食道がんの死亡との関連を調べました(Int J Epidemiol. 2022;51(4):1190-1203)。

BMI(kg/m2)は、18.5未満、18.5–22.9、23–24.9、25–27.4、27.5–29.9、30–34.9、35以上のグループに分け、23-24.9kg/m2を基準として、その他のグループのその後の食道がん死亡リスクについて調べました。

参加者約84万人のうち、約13年の追跡期間に、1,383人が食道がんで死亡しました。BMIが標準(23-24.9kg/m2)のグループと比べて、非常にやせている(BMIが18.5kg/m2未満)のグループでは食道がんの死亡リスクが2.2倍、非常に太っている(BMIが35 kg/m2以上)のグループでは4.4倍高いという結果でした(図1)。また、喫煙や飲酒習慣を考慮した結果、喫煙や飲酒をしない標準(BMIが23-24.9kg/m2)グループと比べて、喫煙や飲酒習慣のある非常にやせている(BMIが18.5kg/m2未満)グループでは約7.0倍、食道がんの死亡リスクが高いという結果でした(図2)。

 

図1.肥満指数(BMI)と食道がんの死亡リスク

図2.喫煙・飲酒習慣を考慮した肥満指数(BMI)と食道がんの死亡リスク

アジア人では非常にやせている(BMIが18.5 kg/m2未満)、または太っている(BMIが35 kg/m2未満)グループにおいて、食道がんの死亡リスクが高いことが明らかになりました。先行研究では、世界保健機関の基準によるBMI(kg/m2)のカテゴリ(やせ:<18.5未満、標準:18.5-25未満、過体重:25-30未満、肥満:30以上)では、肥満(BMIが30 kg/m2以上)では食道がんのリスクが低下することが報告されていますが、アジア人については、人数が少なくよくわかっていませんでした。本研究ではBMIが35kg/m2以上の参加者が多く、アジア人における非常に太っているグループにおける食道がんの死亡リスクとの関連を調べることができた点が強みです。

喫煙や飲酒状況を考慮した場合、非常にやせている(BMIが18.5未満)グループではさらにリスクが増加しましたが、非常に太っている(BMIが35 kg/m2未満)グループでは関連がみられませんでした。先行研究においても同様の報告があり、喫煙により体重が減ることや栄養不良などが考えられました。

本研究では一時点のBMIで検討しており、追跡期間中の体重変化を考慮できていないことや、食道がんと関連が報告されている身体活動量を調整できていないことなどが限界点としてあげられます。

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