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科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

婚姻状況と死亡リスクとの関連

アジアコホートコンソーシアムにおける16つのコホート研究のプール解析

婚姻状況と死亡リスクとの関連

複数の疫学研究をまとめた研究では、未婚者では死亡リスクが高いことが報告されています。しかし、アジア人からの報告は少なく、よくわかっていませんでした。そこで、アジア人を対象とする16の前向きコホート研究を統合して、参加者約62万人の婚姻状況と死亡との関連について調べました(JAMA Netw Open. 2022;5(5):e2214181)。

婚姻状況は、既婚(別居を除く)と、その他(未婚または別居を含む)のグループに分けました。その他のグループには、独身、別居、離婚、死別を含めました。そして、既婚グループを基準として、その後の死亡リスクを調べました。また、その他のグループの状況ごとの死亡リスクも調べました。

参加者62万人(平均年齢53.7歳)のうち、約15.5年の追跡期間中に123,264人が死亡しました。既婚のグループと比べて、その他のグループでは、全ての死亡リスクが15%高く、死因別では脳血管疾患で10%、冠動脈心疾患で20%、循環器病で17%、がんでは6%、呼吸器系疾患では14%、その他の理由では19%、死亡リスクが高いという結果でした(図1)。

未婚、または別居の状況別では、既婚のグループと比較して、独身では 60%、別居では35%、離婚では38%、死別では9%、全ての死亡リスクが増加しました(図2)。特に、男性や65歳未満でより死亡リスクが高い傾向でした。

図1.既婚グループを基準とした場合の未婚、または別居のグループの死亡リスク

図2.既婚グループと比べた独身、別居、離婚、死別のグループごとの全死亡リスク

今回の研究から、アジアの人々において、既婚と比べて未婚、または別居のグループでは、死亡リスクが高いことが明らかになりました。また、未婚、または別居のカテゴリ別(独身、別居、離婚、死別)でも同様の結果でした。既婚と比べて、未婚、または別居のグループでは、社会的支援や心理的な健康状況が良くないことなどが考えられました。特に、未婚、または別居のグループの中では、独身のグループでリスクが高く、理由としては、独身以外のグループ(別居、離別、死別)では婚姻していた(る)時期があることが影響しているかもしれません。

今回の結果では、年齢が上がるにつれ死亡リスクとの関連が弱まりました。先行研究においても65歳未満の未婚、または別居のグループで死亡リスクが高いことが明らかになっており、高齢者では婚姻状況による死亡リスクへの影響が小さくなる可能性があります。

男性では未婚、または別居のグループの死亡リスクが高かった一方で、女性では関連がみられませんでした。アジアでは、女性の家事や育児の負担が大きく、婚姻による効果が打ち消された可能性が考えられました。また、未婚、または別居のグループの女性では働いている割合が多いことから、経済的に余裕があることも考えられます。さらに、未婚、または別居の男性では、女性よりも社会的支援や経済的支援を受けている人が少ないことなども考えられます。そのため、それぞれの婚姻状況に合った社会的支援を検討する必要があるかもしれません。

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