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科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

肥満指数(BMI)と胃がんリスクとの関連

アジアコホートコンソーシアムにおける13つのコホート研究のプール解析

肥満指数(BMI)と胃がんリスクとの関連

胃がんは世界で5番目に多いがんであり、1年間の罹患者数は100万人を超えています。特に、日本や韓国では罹患率が高く、大きなリスク要因としてヘリコバクターピロリ菌の感染や喫煙があり、高塩分食品もリスクの1つとしてあげられます。

肥満は、食道がん、肝臓がん、膵がん等のリスクを上げることが報告されていますが、胃がんリスクとは結果が一貫しておらずよくわかっていません。そこで、アジア人を対象とする13の前向きコホート研究を統合して、参加者約54万人のアジア人における肥満指数と胃がんの罹患との関連を調べました(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2022;31(9):1727-1734)。

BMI(kg/m2)は、18.5未満、18.5–22.9、23–24.9、25–27.4、27.5以上のグループに分け、23-24.9kg/m2を基準として、その他のグループのその後の胃がんの罹患リスクについて調べました。

追跡期間中(中央値14.9年)に、8,997名が胃がんに罹患しました。BMIと胃がんの罹患リスクとの間にU字型の関連がみられました。胃がんのリスクはBMIが基準(23-24.9 kg/m2)のグループと比べて、18.5 kg/m2未満のグループでは15%、27.5 kg/m2以上のグループでは12%高いという結果でした(図1)。これらの関連は、部位別では噴門部以外の胃がんでリスクが高く、噴門部の胃がんでは関連がみられませんでした(図2)。

図1.肥満指数と胃がんの罹患リスク

図2.肥満指数と胃がん(部位別)の罹患リスク

今回の研究から、アジア人では、BMIが低くても高くても胃がんのリスクが増加することが明らかになりました。先行研究でも同様の関連がみられていましたが、東アジアでは肥満の人の割合が少なく、関連についてはよくわかっていませんでした。特に、欧米諸国からの研究では、肥満の場合に噴門部の胃がんリスクが増加することが報告されていますが、今回のアジア人を対象とした研究では、非常に太っている(BMIが27.5 kg/m2以上)場合、噴門部の胃がんとは関連がみられず、噴門部以外の胃がんのリスク増加がみられました。これは、アジア人を対象とした先行研究とも同様の結果でした。 

非常にやせている(BMIが18.5 kg/m2未満)グループで胃がんが増加した理由として、栄養不良、免疫機能が低いこと、また喫煙等により低体重となることなどが考えられます。一方で、非常に太っている(BMIが27.5 kg/m2以上)グループでは、炎症反応等による影響が考えられますが、噴門部以外の胃がんのリスクについてはわかっていないため、さらなる研究が必要です。

今回の研究では、ヘリコバクターピロリ菌の状況を考慮できていないことや、胃がんの部位別について報告のあった研究の数が限られていたことなどが限界としてあげられます。大規模なアジア人を対象とした研究ですが、アジア人では肥満の人数が少ないことからも、体格と胃がんの部位別の関連についてはさらなる研究が必要です。

 

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