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科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

糖尿病と胃がん罹患および死亡との関連

アジアコホート連合における56万人のプール解析

世界的に胃がんが減少している一方で、アジア諸国、特に東アジアでは、依然として多くの人々が胃がんと診断されています。また、糖尿病は世界的に、特にアジアで増加しています。これまでの研究では、糖尿病は血中インスリンレベルが高いことや、血糖値が高いこと、慢性炎症などにより、肝臓、膵臓、子宮、結腸、乳房、膀胱などさまざまな部位のがんのリスクを増加させることが示されています。しかし、糖尿病と胃がんの関連は現在まで明らかになっていません。そこで本研究では、中国、日本、韓国、インドの12件の前向きコホート研究を統合し、約56万人のアジア人を対象に、糖尿病および糖尿病罹病期間と胃がん罹患リスクとの関連について検討しました(J Diabetes 2024 Jun;16(6):e13561)。

研究開始時、自己申告による糖尿病の既往やその罹病期間の情報を収集しました。平均約15年間の追跡の結果、8,556人が胃がんと診断されました。解析の結果、糖尿病により胃がんの罹患リスクが15%増加することが明らかになりました。この結果は男女とも同様であり、胃の亜部位や組織型による違いはありませんでした。さらに、胃がんのリスクは、糖尿病と診断された後最初の10年間は4.7倍高く、それ以降は減少していました(図1)。

この研究の限界として、胃がんの危険因子として知られているヘリコバクター・ピロリ菌感染状況や、塩分摂取に関する情報がないことがあげられます。また、糖尿病治療の種類や血糖降下薬の使用に関する情報がなく、糖尿病治療が胃がんに及ぼす影響を考慮できていません。糖尿病の有無および糖尿病罹病期間と胃がんリスクとの関連を明らかにするためには、より詳細な情報に基づいた研究が必要です。

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