科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究
生まれた時期による乳がんの女性関連要因および生活習慣要因の影響の大きさの違い
アジアコホートコンソーシアムにおける12のコホート研究のプール解析
生まれた時期は乳がんの罹患率や関連する生殖・生活習慣要因に影響を及ぼすことが示唆されています。この研究では、アジア人を対象とする12コホート研究を統合して、生まれた時期によって乳がん罹患リスクに影響を与えるような要因が存在するかどうかを検討しました(Breast Cancer Res. 2024;26:15)。
アジアコホートコンソーシアムに参加している12コホート研究からのプール解析により、生まれた時期による生殖(初潮年齢、閉経年齢、出産年齢、初産年齢)および生活習慣(喫煙および飲酒)要因と乳がんリスクとの関連の違いを検討しました。
対象者約31万人、約16年間の追跡期間中に乳がんに罹患した人は4,581人でした。出産経験により高年世代の乳がんリスクが低下しましたが、若年世代では低下していませんでした。生活習慣要因と乳がんリスクとの関連が示されたのは1950年代生まれのみでした。若年世代では、経産婦であることによる乳がん罹患リスクの低下が小さくなっていました。一方、喫煙およびアルコール摂取については、若年世代の方が他の世代より関連が強くなっていました。
今回、出生時期によって、出産数、喫煙、アルコール摂取と乳がんリスクとの関連の強さが異なっていました。女性関連要因は高年世代でより強い影響があり、喫煙と飲酒は若い世代でのみ強い影響がみられました。出産数や女性の喫煙、生活習慣の欧米化といった出生時期の違いが乳がんリスクの違いにつながっている可能性が考えられます。