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科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

肥満指数(BMI)と胆道がんリスク

アジアコホートコンソーシアムにおけるコホート研究のプール解析

消化液の1種である胆汁は肝臓で作られ、胆のうで一時的に貯められた後、食事のタイミングに合わせて十二指腸に排出されます。この胆汁の通り道である胆管と胆のうを合わせて胆道と呼び、ここにできるがんを胆道がんといいます(Int J Cancer . 2023 Nov 15)。

これまでに行われた研究で、肥満は胆道がんのリスクを上げると言われていますが、アジア人ではどの程度リスクを上げるのか、十分に検討されていませんでした。また、胆道に結石ができる胆石症の人は胆道がんリスクが高いことも知られていますが、肥満は胆石症の主な原因の1つです。そのため、肥満が直接胆道がんのリスクを上げるのか、肥満により胆石ができて胆道がんのリスクが上がるのか分かっていませんでした。そこで、アジア人を対象とした21の前向きコホート研究の参加者、計905,530人のデータを統合して、肥満と胆道がんによる死亡のリスクを調べました。

肥満はBMI(kg/m2)で評価し、18.5未満、18.5以上23未満、23以上25未満、BMI 25以上の4グループに分類し、標準体重(BMI 18.5以上23未満)を基準にしてグループ毎の胆道がん死亡リスクを調べました。また、因果媒介分析を行い、肥満による胆道がんリスクを図1のように直接効果と胆石を介した間接効果に分けて評価しました。

 

図1

 

約90万人の研究参加者のうち、2353人の胆道がん死亡が見られました。BMIと胆道がん死亡の関連を図2に示します。男性ではBMI25以上、女性ではBMI23以上で胆道がんリスクが有意に上昇しました。

 

因果媒介分析による胆石を介したBMIと胆道がん死亡リスクの関連を図3に示します。女性では間接効果・直接効果とも有意な関連が見られましたが、男性では直接効果・間接効果ともに明確ではありませんでした。

 

 

本研究の結果から、肥満が胆道がんの原因であることが確認されました。女性では肥満は直接胆道がんのリスクを上げるだけで無く、胆石症を介して間接的にも胆道がんリスクを上げていることが推測されます。一方、女性に比べて男性では胆道がんに対する肥満の効果は明確ではありませんでした。肥満ががんを引き起こす仕組みとして、肥満によるインスリンやIGFなどの過剰分泌によるがん化の促進や、肥満に伴う脂質異常によるコレステロール結石の増加などが考えられています。

本研究の特色は胆石の効果を考慮して肥満と胆道がんの関連を検討したところです。一方で、胆石症の多くは痛みなどの自覚症状が無い(無症候性)とされているため、本研究では無症候性の胆石症の効果が見逃されている可能性もあります。そのため、胆石症の関与については更なる研究が必要かもしれません。

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