科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究
家族歴と肺がん罹患および死亡リスクとの関連
アジアコホートコンソーシアムにおける11のコホート研究のプール解析
Int J Cancer. . 2024 Oct 3. doi: 10.1002/ijc.35191. Online ahead of print
肺がんと肺がんリスクについて、これまでの研究により、欧米諸国やアジアにおいて肺がんの家族歴がある場合、肺がんのリスクが高まることが示されています。最近のメタアナリシスでは、肺がんの家族歴と肺がんのリスクとの関連性が人種や性別によって異なる可能性があることが示唆されていますが、これらの縦断研究の多くは欧米で行われており、アジアに関する証拠は限られています。また、肺がんの家族歴と肺がんの組織型別との関連や肺がんの家族歴と肺がん死亡との関連については、報告が少なくよくわかっていません。そこで、本研究では、日本、韓国、中国のアジア人を対象とする11の前向きコホート研究(合計約47.8万人)を統合して、アジア人における肺がんの家族歴と肺がんの罹患および死亡リスクとの関連を調べました (Int J Cancer. 2024年10月公開)。
研究開始時、肺がんの家族歴(両親、あるいは兄弟・姉妹に、肺がんにかかった人がいるかどうか)に関する情報を収集しました。約15年間の追跡期間中に、7785人が肺がんに罹患し、6163人の死亡が確認されました。
肺がんの家族歴がない人と比較して、家族歴がある人は肺がん罹患リスクが高いことが示されました。(図1)。この結果は、性別、喫煙の有無、国によって層別に解析しても一貫していました(図1)。また、肺がんの家族歴は、肺腺癌、扁平上皮癌およびその他の非小細胞癌の罹患リスク増加と関連していました(図1)。死亡リスクも同様の関連がみとめられました(図なし)。
本研究は、アジア人を対象として、肺がんの家族歴と肺がんの罹患、および死亡リスクの両方を検討した大規模な研究です。ただし、本研究では、大規模な研究にもかかわらず、あまり一般的でない肺がんの組織型別について検討できていないことや、受動喫煙や大気汚染など未測定のその他の因子の影響を除ききれていない可能性があることから、さらなる研究の蓄積が必要です。