科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究
女性生殖要因と卵巣がんリスクとの関連
アジアコホート連合における11のコホート研究のプール解析
Br J Cancer. 2025;132(4):361-370
この研究では、アジアコホート連合に参加する11のコホート研究を用いて、アジア人女性における生殖関連要因と卵巣がんの罹患との関連について検討しました。
卵巣がんの患者674人を含むデータを解析した結果、出産回数が多いほど卵巣がん罹患のリスクが低くなることが明らかとなりました。この傾向は、卵巣がんの中で最も罹患数の多い漿液性(しょうえきせい)がん、および比較的まれな非漿液性がん(明細胞がん、粘液性がん、類内膜がんなど)のいずれにおいても認められました。特に、子どもを5人以上出産した女性では、子どもがいない女性と比較して、卵巣がん罹患のリスクが54~57%低下していました(図1a・1b)。
さらに、閉経年齢と卵巣がんとの関連についても検討したところ、非漿液性がんでは、閉経年齢が高いほどリスクが上昇する傾向が見られました。具体的には、閉経年齢が55歳以上の女性では、45歳未満で閉経した女性と比較して、非漿液性卵巣がんの罹患リスクが約4.7倍高くなることが示されました(図2)。漿液性がんでは閉経年齢との間に統計的に有意な関連は認められませんでした。
本研究の結果は、アジア人女性における卵巣がんのリスク要因として生殖要因の影響を明らかにしたものであり、今後のがん予防戦略の策定やリスク要因の理解を深めるための重要な知見となることが期待されます。
図1a. 子供の数と漿液性上皮性卵巣がんリスクの関連
図1b. 子供の数と非漿液性卵巣がんリスクの関連
図2. 閉経年齢と非漿液性卵巣がんリスクとの関連