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身体活動量と歯周病との関連について

身体活動量と歯周病との関連について

   私たちは、いろいろな生活習慣・生活環境とがんなどの生活習慣が関係する疾病との関連を明らかにするとともに、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。次世代多目的コホート研究対象地域のうち、2013年から2016年に秋⽥県横⼿地域にお住まいで、本研究へ同意いただき、さらに歯科健診にご参加いただいた40-74歳の男女約2,500⼈のアンケート調査、歯科健診の結果に基づいて、身体活動量と歯周病の関係について専門誌に論⽂発表しましたので紹介します。(J Periodontal Res. 2023年4⽉公開)。

 

 口の中の慢性炎症性疾患である歯周病は歯の喪失の主な原因の一つであり、さらには糖尿病などの全身疾患と関連することが示唆されています。歯周病の有病率は世界的にも上昇傾向にあり、2019年時点で、世界で11億人が重度歯周病に罹患していると推定されています。国内に目を向けてみると、2016年の歯科疾患実態調査における歯周病の有病率は49.4%でした。年次推移を見ると、横ばいか増加傾向にあり、歯周病に対する危険因子を明らかにすることは、歯周病対策のために重要です。
 これまでの研究から、歯周病に対する危険因子として喫煙、肥満などが挙げられていますが、身体活動量も歯周病と関連していることが示唆されています。しかしながら、これまでに身体活動量と歯周病の関連をみた研究は少なく、一致した結果が得られていません。そこで、今回の研究では日本人を対象に、身体活動量と歯周病との関連を調べることを目的としました。

 

研究方法の概要

 今回の研究では、アンケート調査における身体活動量に関する質問項目への回答があり、かつ歯科健診での歯周病の診断結果のデータが揃っている2160人を対象としました。身体活動量は、アンケート調査で把握した身体活動の項目をもとに、それぞれの項目の強度(メッツ)をあてはめ、各身体活動の実施頻度(例:週に1~2回など)と1回あたりの時間(例:30分未満など)から、1日当たりの総身体活動量を計算し、男女別に5つのグループに分けました。歯周病については、歯周ポケットの深さ等の検査結果をもとに、歯科医師の診断によって、無症状・軽症、中等度、重症の順位をつけました。そして、身体活動量が最も少ないグループを基準に、その他のグループにおける重症度の傾向を比較しました。

 

身体活動量が多い女性では歯周病の頻度・重症度が低かった

 歯周病の有病率は女性56.3%(中等度)、13.2%(重度)、男性51.7%(中等度)、20.8%(重度)でした。 女性では身体活動量が多くなるにつれて、歯周病の重症度の傾向が下がるという結果でした(図1)。一方、男性では、身体活動量と歯周病との間に関連は認められませんでした。(図2)。

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図1. 身体活動量と歯周病の重症度との関連(女性)

※年齢、歯科定期受診、ブラッシング回数、歯間清掃補助器具の使用、教育年数、収入、喫煙、肥満、糖尿病で統計学的に調整

 

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(クリックして画像拡大)

図2. 身体活動量と歯周病の重症度との関連(男性)

※年齢、歯科定期受診、ブラッシング回数、歯間清掃補助器具の使用、教育年数、収入、喫煙、肥満、糖尿病で統計学的に調整

まとめ

 本研究の結果から、全体的に身体活動量が高い女性で歯周病の重症となる傾向が低いことがわかりました。日常的に身体を多く動かす者では、炎症性サイトカインの血中濃度が低いことが報告されており、運動は身体の臓器・組織において炎症を抑制する効果があると示唆されています。身体活動量と歯周病の関連の背景には運動の持つ炎症状態の調節機能が関わっている可能性が考えられました。また、運動には末梢血液循環を促す効果があるとされ、このことが歯肉の健康に好影響を与えている可能性が考えられました。
 一方で、男性においては、身体活動量と歯周病との間に関連がみられませんでした。女性と比較して男性では、喫煙者が多く、また、歯科定期受診をする者の割合や、1日2回以上ブラッシングをする者、歯間清掃補助器具の使用する者の割合が少なく、このような生活習慣にくらべて、身体活動が歯肉に与える影響は小さい可能性が考えられました。
 今回の研究は横断研究であるため、因果関係について言及することはできません。身体活動量と歯周病との因果関係を明らかにするためには、今後、歯周病の発症を前向きに調査した研究が必要です。

 

 

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